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後世への最大遺物 / 第二回・生涯を世の中への贈物とする

この世の中は悲嘆の世の中でなくして、歓喜の世の中であるという考えをわれわれの生涯に実行して、その生涯を世の中への贈物としてこの世を去るということであります。その遺物は誰にも遺すことのできる遺物ではないかと思う。もし今までのエライ人の事業をわれわれが考えてみますときに、あるいはエライ文学者の事業を考えてみますときに、その人の書いた本、その人の遺した事業はエライものでございますが、しかしその人の生涯に較べたときには実に小さい遺物だろうと思います。パウロの書翰は実に有益な書翰でありますけれども、しかしこれをパウロの生涯に較べたときには価値のはなはだ少いものではないかと思う。パウロ彼自身はこのパウロの書いたロマ書や、ガラテヤ人に贈った書翰よりもエライ者であると思います。

書き下し

この世の中は悲嘆の世の中でなくして、歓喜の世の中であるという考えを、われわれの生涯に実行して、その生涯を世の中への贈物としてこの世を去るということであります。その遺物は誰にも遺すことのできる遺物ではないかと思う。もし今までのえらい人の事業をわれわれが考えてみますときに、あるいはえらい文学者の事業を考えてみますときに、その人の書いた本、その人の遺した事業はえらいものでございますが、しかしその人の生涯に較べたときには、実に小さい遺物だろうと思います。パウロの書翰は実に有益な書翰でありますけれども、しかしこれをパウロの生涯に較べたときには、価値のはなはだ少いものではないかと思う。パウロ彼自身は、このパウロの書いたロマ書や、ガラテヤ人に贈った書翰よりもえらい者であると思います。

現代語訳

この世は悲嘆の世ではなく歓喜の世である、という考えを自分の生涯で実行し、その生涯を世の中への贈り物としてこの世を去るということです。その遺物は、誰にでも遺せる遺物ではないかと思います。これまでの偉い人の事業を考えてみるとき、あるいは偉い文学者の事業を考えてみるとき、その人が書いた本、遺した事業は立派なものですが、その人の生涯と比べたときには実に小さな遺物でしょう。パウロの手紙は実に有益な手紙ですが、これをパウロの生涯と比べると、価値のはなはだ少ないものではないかと思います。パウロ自身は、彼が書いたローマ書やガラテヤ書よりも偉い者であると思います。

解説

生涯そのものが贈り物になるという定式です。そして検証として、偉人の業績と生涯を比べていきます。パウロの手紙は西洋思想の土台になったほどの文書ですが、それでも彼の生涯のほうが大きいと内村は言う。作品は生涯の一部でしかなく、全部ではないからです。言い換えれば、作品を遺せなかった人も生涯は遺せる。業績を持たない聞き手を勇気づけるために、最大の業績を持つ人が例に選ばれています。

この章句が説くこと

生涯贈物業績比較価値

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