師導古典を学びたいすべての人に

後世への最大遺物 / 第二回・心のままを書けばそれが文学

これはまったく外からの雑りのない、もっとも純粋なる英語であるだろう」と申しました。そうしてかくも有名なる本は何であるかというと無学者の書いた本であります。それでもしわれわれにジョン・バンヤンの精神がありますならば、すなわちわれわれが他人から聞いたつまらない説を伝えるのでなく、自分の拵った神学説を伝えるでなくして、私はこう感じた、私はこう苦しんだ、私はこう喜んだ、ということを書くならば、世間の人はドレだけ喜んでこれを読むか知れませぬ。今の人が読むのみならず後世の人も実に喜んで読みます。バンヤンは実に「真面目なる宗教家」であります。心の実験を真面目に表わしたものが英国第一等の文学であります。それだによってわれわれのなかに文学者になりたいと思う観念を持つ人がありまするならば、バンヤンのような心を持たなくてはなりません。彼のような心を持ったならば実に文学者になれぬ人はないと思います。

書き下し

これはまったく外からの雑りのない、もっとも純粋なる英語であるだろう」と申しました。そうして、かくも有名なる本は何であるかというと、無学者の書いた本であります。それで、もしわれわれにジョン・バンヤンの精神がありますならば、すなわちわれわれが他人から聞いたつまらない説を伝えるのでなく、自分の拵えた神学説を伝えるでなくして、私はこう感じた、私はこう苦しんだ、私はこう喜んだ、ということを書くならば、世間の人はどれだけ喜んでこれを読むか知れませぬ。今の人が読むのみならず、後世の人も実に喜んで読みます。バンヤンは実に「真面目なる宗教家」であります。心の実験を真面目に表わしたものが英国第一等の文学であります。それだによって、われわれのなかに文学者になりたいと思う観念を持つ人がありまするならば、バンヤンのような心を持たなくてはなりません。彼のような心を持ったならば、実に文学者になれぬ人はないと思います。

現代語訳

これはまったく外からの混じり物のない、もっとも純粋な英語だろう、と言いました。そしてこれほど有名な本が何かといえば、無学な人が書いた本です。ですから、もし私たちにジョン・バンヤンの精神があるなら、つまり他人から聞いたつまらない説を伝えるのでなく、自分がこしらえた神学説を伝えるのでもなく、私はこう感じた、私はこう苦しんだ、私はこう喜んだ、ということを書くなら、世間の人はどれほど喜んでこれを読むか分かりません。今の人が読むだけでなく、後世の人も本当に喜んで読みます。バンヤンはまことに真面目な宗教家です。心の実験を真面目に表したものが、英国第一等の文学です。ですから、私たちの中に文学者になりたいと思う人がいるなら、バンヤンのような心を持たねばなりません。その心を持てば、文学者になれない人はいないと思います。

解説

文学者になれない人はいない、という結論に到達します。条件は一つで、他人から聞いた説でも自分の作った理屈でもなく、感じたこと、苦しんだこと、喜んだことを書くこと。内村はこれを心の実験と呼びます。実験という語が効いていて、自分の生涯を材料に何かを試した記録という意味です。思想を遺す道は、学識のある人のものではなく、真面目に生きて真面目に書く人のものだ、という開き方でこの節が閉じられます。

この章句が説くこと

文学率直経験実験真面目

関連する章句

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ
いま登録すると、7日間すべての機能を無料でお試しいただけます。 無料ではじめる