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後世への最大遺物 / 第一回・土木事業を遺す

それですから金を溜めて金を遺すことができないならば、あるいは神が私に事業をなす天才を与えてくださったかも知れませぬ。もしそうならば私は金を遺すことができませぬとも、事業を遺せば充分満足します。それで事業をなすということは、美しいことであるはもちろんです。ドウいう事業が一番誰にもわかるかというと土木的の事業です。私は土木学者ではありませぬけれども、土木事業を見ることが非常に好きでございます。一つの土木事業を遺すことは、実にわれわれにとっても快楽であるし、また永遠の喜びと富とを後世に遺すことではないかと思います。今日も船に乗って、湖水の向こうまで往きました。その南の方に当って水門がある。その水門というは、山の裾をくぐっている一つの隧道であります。

書き下し

それですから金を溜めて金を遺すことができないならば、あるいは神が私に事業をなす天才を与えてくださったかも知れませぬ。もしそうならば、私は金を遺すことができませぬとも、事業を遺せば充分満足します。それで事業をなすということは、美しいことであるはもちろんです。どういう事業が一番誰にもわかるかというと、土木的の事業です。私は土木学者ではありませぬけれども、土木事業を見ることが非常に好きでございます。一つの土木事業を遺すことは、実にわれわれにとっても快楽であるし、また永遠の喜びと富とを後世に遺すことではないかと思います。今日も船に乗って、湖水の向こうまで往きました。その南の方に当って水門がある。その水門というは、山の裾をくぐっている一つの隧道であります。

現代語訳

ですから金を溜めて金を遺せないなら、あるいは神が私に事業をなす天分を与えてくださったかもしれません。もしそうなら、金を遺せなくても事業を遺せば十分満足です。事業をなすことが美しいのはもちろんです。どういう事業が誰にも一番よく分かるかというと、土木の事業です。私は土木学者ではありませんが、土木事業を見るのが非常に好きです。一つの土木事業を遺すことは、私たちにとって喜びであり、また永遠の喜びと富を後世に遺すことではないかと思います。今日も船に乗って、湖の向こうまで行きました。その南の方に水門があります。その水門というのは、山の裾をくぐっている一本の隧道です。

解説

事業の中でも土木を最初に挙げる理由が、誰にも分かるからだ、と述べられます。目に見えて、使われ続けて、誰が作ったか知らなくても役に立つ。遺物の性質として、これ以上分かりやすいものはありません。そして講演の当日、内村は実際に芦ノ湖を船で渡り、その水を流す隧道を見てきた、と話を現地に着地させます。抽象論から、今ここにある穴へ。聞き手が明日にでも見に行ける実物を例に選ぶのは、この講演の一貫した工夫です。

この章句が説くこと

事業土木実物後世有用

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