後世への最大遺物 / 第一回・何を置いて逝くか
それでこの次は遺物のことです。何を置いて逝こう、という問題です。何を置いてわれわれがこの愛する地球を去ろうかというのです。そのことについて私も考えた、考えたばかりでなくたびたびやってみた。何か遺したい希望があってこれを遺そうと思いました。それで後世への遺物もたくさんあるだろうと思います。それを一々お話しすることはできないことでございます。けれども、このなかに第一番にわれわれの思考に浮ぶものからお話しをいたしたいと思います。
書き下し
それでこの次は遺物のことです。何を置いて逝こう、という問題です。何を置いてわれわれがこの愛する地球を去ろうかというのです。そのことについて私も考えた、考えたばかりでなく、たびたびやってみた。何か遺したい希望があって、これを遺そうと思いました。それで後世への遺物もたくさんあるだろうと思います。それを一々お話しすることはできないことでございます。けれども、このなかに第一番にわれわれの思考に浮ぶものからお話しをいたしたいと思います。
現代語訳
さて次は遺物のことです。何を置いて逝こうか、という問題です。何を置いて、この愛する地球を去ろうかということです。それについて私も考えました。考えただけでなく、何度もやってみました。何か遺したいという願いがあって、これを遺そうと思った。後世への遺物はたくさんあるでしょう。その一つ一つをお話しすることはできません。けれども、その中で真っ先に私たちの頭に浮かぶものからお話ししたいと思います。
解説
総論から各論へ移る継ぎ目です。注目したいのは、考えただけでなく何度もやってみた、と自分の実行を添えている点で、この講演が思弁ではなく試行の報告であることを断っています。またすべては話せないと断ったうえで、真っ先に浮かぶものから話すと順序を宣言する。このあと金・事業・思想・生涯という順で四つが出てきますが、これは価値の高い順ではなく、思いつきやすい順に並べられています。もっとも凡庸な答えから始めて、最後に誰にでもできる答えに着地させる構成です。
この章句が説くこと
遺物順序実行選択地球
関連する章句
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『後世への最大遺物』第二回・人に頼らず天と己にたよるその考えを持ったばかりでなく、その考えを実行した。その話は長うございますけれども、ついには何万石という村々を改良して、自分の身をことごとく人のために使った。旧幕の末路にあたって、経済上、農業改良上について非常の功労のあった人であります。それでわれわれもそういう人の生涯、二宮金次郎先生のような人の生涯を見ますときに、「もしあの人にもああいうことができたならば、私にもできないことはない」という考えを起します。普通の考えではありますけれども、非常に価値のある考えであります。それで人に頼らずとも、われわれが神にたより己にたよって宇宙の法則に従えば、この世界はわれわれの望むとおりになり、この世界にわが考えを行うことができるという感覚が起ってくる。
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『後世への最大遺物』第二回・己の信ずることを実行する者己の信ずることを実行するものが真面目なる信者です。ただただ壮言大語することは誰にもできます。いくら神学を研究しても、いくら哲学書を読みても、われわれの信じた主義を真面目に実行するところの精神がありませぬあいだは、神はわれわれにとって異邦人であります。それゆえに、われわれは神がわれわれに知らしたことをそのまま実行いたさなければなりません。こういたさねばならぬと思うたことは、われわれはことごとく実行しなければならない。もしわれわれが、正義はついに勝つものにして不義はついに負けるものであるということを世間に発表するものであるならば、そのとおりにわれわれは実行しなければならない。これを称して真面目なる信徒と申すのです。
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論語・子罕篇子曰く、之に語げて惰らざる者は、其れ回なるか。
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『正法眼蔵随聞記』巻三作すことの難きにはあらず、能くすることの難きなり、出離得道の行は人ごとに心にかけたるには似たれとも、能くする人まれなればなり、生死事大なり、無常迅速なり、心を緩くすることなかれ、世を捨ては実とに世を捨つべきなり、仮名はいかにてもありなんとおぼゆるなり、
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論語・公冶長篇子路聞くこと有りて、未だ之を行うこと能わざれば、唯だ聞くこと有らんことを恐る。
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尚書・太甲下慮らずんば胡ぞ獲、為さずんば胡ぞ成らん。