後世への最大遺物 / 第一回・溜めることを知って使うことを知らぬ
ある人の言に「グールドが一千ドルとまとまった金を慈善のために出したことはない」と申しました。彼は死ぬときにその金をどうしたかというと、ただ自分の子供にそれを分け与えて死んだだけであります。すなわちグールドは金を溜めることを知って、金を使うことを知らぬ人であった。それゆえに金を遺物としようと思う人には、金を溜める力とまたその金を使う力とがなくてはならぬ。この二つの考えのない人、この二つの考えについて十分に決心しない人が、金を溜めるということは、はなはだ危険のことだと思います。
書き下し
ある人の言に「グールドが一千ドルとまとまった金を慈善のために出したことはない」と申しました。彼は死ぬときにその金をどうしたかというと、ただ自分の子供にそれを分け与えて死んだだけであります。すなわちグールドは金を溜めることを知って、金を使うことを知らぬ人であった。それゆえに金を遺物としようと思う人には、金を溜める力と、またその金を使う力とがなくてはならぬ。この二つの考えのない人、この二つの考えについて十分に決心しない人が、金を溜めるということは、はなはだ危険のことだと思います。
現代語訳
ある人の言葉に、グールドが千ドルとまとまった金を慈善のために出したことはない、というものがあります。彼が死ぬときその金をどうしたかというと、ただ自分の子供に分け与えて死んだだけです。つまりグールドは金を溜めることを知って、金を使うことを知らない人でした。ですから金を遺物にしようと思う人には、金を溜める力と、その金を使う力の両方がなければなりません。この二つの考えがない人、この二つについて十分に決心していない人が金を溜めるのは、たいへん危険なことだと思います。
解説
金についての節の結論です。溜める力と使う力の両方がそろって初めて金は遺物になる、と定式化されます。グールドは前者だけを持ち、二千万ドルを子に分けて死んだ。子に遺すことを内村は遺物と認めていません。この講演の冒頭で、子供に遺すだけでなく社会に遺すと定義したからです。そして最後に、決心のない人が金を溜めるのは危険だと警告する。使い道を決めずに集めた力は、集めた本人を害するという見方で、金の節は警戒の言葉で閉じられます。
この章句が説くこと
蓄財使途決心危険遺物
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