墨子 / 貴義
子墨子曰:商人之四方,市賈信徙,雖有關梁之難、盜賊之危,必為之。今士坐而言義,無關梁之難、盜賊之危,此為信徙不可勝計,然而不為。士之計利,不若商人之察也。
新字:子墨子曰:商人之四方,市賈信徙,雖有関梁之難、盗賊之危,必為之。今士坐而言義,無関梁之難、盗賊之危,此為信徙不可勝計,然而不為。士之計利,不若商人之察也。
書き下し
子墨子曰く、商人の四方にするや、市賈、信に徙る。關梁の難、盜賊の危有りと雖も、必ず之を為す。今、士は坐して義を言う。關梁の難、盜賊の危無し。此れ信に徙るを為すこと勝げて計う可からず。然り而して為さず。士の利を計るは、商人の察に若かざるなり。
現代語訳
墨子が言った。商人が四方に出かけるとき、市場の値は倍にもなる。関所の困難や盗賊の危険があっても、必ず出かける。いま士は座ったまま義を語る。関所の困難も盗賊の危険もない。これで得られる利は数え切れないほどである。それなのに行わない。士が利を計算するのは、商人がよく見きわめるのに及ばない。
解説
商人は危険を冒しても利のあるほうへ動くのに、士は危険がないのに動かない。損得の計算という一点で、商人のほうが正確だという比較です。墨子は義を利と重ねて扱うので、この比較が成り立ちます。やらない理由を危険に求めるとき、本当に危険があるのかを問い直させる一段です。
この章句が説くこと
損得行動危険商人計算
関連する章句
-
論語・為政篇子貢君子を問う。子曰く、先ず其の言を行い、而る後に之に従う。
-
『墨子』兼愛下昔者、越王句踐は勇を好む。其の士臣を教うること三年、其の知を以て未だ以て之を知るに足らずと為すなり。舟を焚き火を失し、鼔して之を進ましむ。其の士、前列に偃し、水火に伏して死する者、勝げて數う可からざるなり。此の時に當たりて、鼔せずして退かしむるも、越國の士は顫うと謂う可し。故に身を焚くは其の為し難きを為すなり。然る後に為して越王、之を説ぶ。世を踰えずして民、移す可きなり。即ち以て其の上に鄉かんことを求むればなり。
-
人物志・八觀危急を睹て則ち惻隠し、将に赴きて救わんとして則ち患いを畏るるは、是れ仁にして恤まざる者なり。
-
論語・衛霊公篇子曰く、民の仁に於けるや、水火よりも甚だし。水火は、吾蹈みて死する者を見たり。未だ仁を蹈みて死する者を見ざるなり。
-
孫子・地形篇夫れ勢均しきに、一を以て十を撃つを、走と曰う。卒強く吏弱きを、弛と曰う。吏強く卒弱きを、陥と曰う。大吏怒りて服せず、敵に遇いて懟みて自ら戦い、将其の能を知らざるを、崩と曰う。将弱くして厳ならず、教道明らかならず、吏卒常無く、兵を陳ぬること縦横なるを、乱と曰う。将敵を料る能わず、少を以て衆に合い、弱を以て強を撃ち、兵に選鋒無きを、北と曰う。凡そ此の六者は、敗の道なり。将の至任、察せざるべからず。
-
『墨子』親士今、五錐有り、此れ其れ銛ければ、銛き者は必ず先ず挫く。五刀有り、此れ其れ錯ければ、錯き者は必ず先ず靡く。是を以て甘井は竭くるに近く、喬木は伐らるるに近く、靈は灼かるるに近く、神蛇は暴さるるに近し。是の故に比干の殪るるは、其の抗すればなり。孟賁の殺さるるは、其の勇なればなり。西施の沈むは、其の美なればなり。吳起の裂かるるは、其の事なればなり。故に彼の人なる者は、其の長ずる所に死せざる寡し。故に「太だ盛んなるは守り難し」と曰うなり。