墨子 / 親士
今有五錐,此其銛,銛者必先挫。有五刀,此其錯,錯者必先靡。是以甘井近竭,喬木近伐,靈近灼,神蛇近暴。是故比干之殪,其抗也;孟賁之殺,其勇也;西施之沈,其美也;吳起之裂,其事也。故彼人者,寡不死其所長,故曰「太盛難守」也。
新字:今有五錐,此其銛,銛者必先挫。有五刀,此其錯,錯者必先靡。是以甘井近竭,喬木近伐,霊近灼,神蛇近暴。是故比干之殪,其抗也;孟賁之殺,其勇也;西施之沈,其美也;吳起之裂,其事也。故彼人者,寡不死其所長,故曰「太盛難守」也。
書き下し
今、五錐有り、此れ其れ銛ければ、銛き者は必ず先ず挫く。五刀有り、此れ其れ錯ければ、錯き者は必ず先ず靡く。是を以て甘井は竭くるに近く、喬木は伐らるるに近く、靈は灼かるるに近く、神蛇は暴さるるに近し。是の故に比干の殪るるは、其の抗すればなり。孟賁の殺さるるは、其の勇なればなり。西施の沈むは、其の美なればなり。吳起の裂かるるは、其の事なればなり。故に彼の人なる者は、其の長ずる所に死せざる寡し。故に「太だ盛んなるは守り難し」と曰うなり。
現代語訳
いま五本の錐があって、その中で最も鋭いものがあれば、その鋭いものが真っ先に欠ける。五本の刀があって、最も研ぎ澄まされたものがあれば、それが真っ先に刃こぼれする。だから甘い水の出る井戸は先に涸れ、高く伸びた木は先に伐られ、霊亀は占いのために焼かれ、神とされる蛇は日にさらされる。比干が殺されたのは君に抗ったからであり、孟賁が殺されたのはその勇のためであり、西施が沈められたのはその美のためであり、呉起が引き裂かれたのはその事業のためである。だから人というものは、自分の最も長じたところで死なない者が少ない。それゆえ「盛んすぎるものは守りにくい」というのだ。
解説
強みがそのまま死因になる、という一段です。錐・刀・井戸・木という順に道具から自然へ広げ、最後に比干・孟賁・西施・呉起という四人の実例で閉じます。四人とも、殺された理由がそれぞれの最大の長所と一致している。前の章で「難きを為せ」と説いた同じ篇が、ここでは突出することの代償を並べます。強みを捨てよとは言っていません。守りにくいと知ったうえで持て、という言い方です。
この章句が説くこと
強み突出危険人材身を守る
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