師導古典を学びたいすべての人に

後世への最大遺物 / 第一回・金を溜める力は天才である

それで後世への最大遺物のなかで、まず第一に大切のものは何であるかというに、私は金だというて、その金の必要を述べた。しかしながら何人も金を溜める力を持っておらない。私はこれはやはり一つの Genius(天才)ではないかと思います。私は残念ながらこの天才を持っておらぬ。ある人が申しまするに金を溜める天才を持っている人の耳はたいそう膨れて下の方に垂れているそうですが、私は鏡に向って見ましたが、私の耳はたいそう縮んでおりますから、その天才は私にはないとみえます(大笑)。私の今まで教えました生徒のなかに、非常にこの天才を持っているものがある。ある奴は北海道に一文無しで追い払われたところが、今は私に十倍もする富を持っている。

書き下し

それで後世への最大遺物のなかで、まず第一に大切のものは何であるかというに、私は金だというて、その金の必要を述べた。しかしながら何人も金を溜める力を持っておらない。私はこれはやはり一つの Genius ではないかと思います。私は残念ながらこの天才を持っておらぬ。ある人が申しまするに、金を溜める天才を持っている人の耳は、たいそう膨れて下の方に垂れているそうですが、私は鏡に向って見ましたが、私の耳はたいそう縮んでおりますから、その天才は私にはないとみえます。私の今まで教えました生徒のなかに、非常にこの天才を持っているものがある。ある奴は北海道に一文無しで追い払われたところが、今は私に十倍もする富を持っている。

現代語訳

さて後世への最大遺物のうち、まず第一に大切なものは何かというと、私は金だと言って、その必要を述べました。しかし誰もが金を溜める力を持っているわけではありません。私はこれもやはり一つの天分ではないかと思います。私は残念ながらこの天分を持っていません。ある人が言うには、金を溜める天分のある人の耳は、大きく膨らんで下に垂れているそうですが、私は鏡を見てみたところ、私の耳はひどく縮んでいますから、その天分は私にはないとみえます。私がこれまで教えた生徒の中に、この天分を非常に持っている者がいます。ある者は北海道へ一文なしで追いやられたのに、今は私の十倍もの富を持っています。

解説

議論の転回点です。金は第一の遺物だと力説してきたところで、しかし誰もが溜められるわけではない、と条件を付ける。内村は蓄財を天分と見なし、自分にはその天分がないと認めます。耳の形の笑い話を挟むのは、聞き手の中で金持ちになれそうにない大多数の気持ちをほぐすためでしょう。ここから話は、金を遺せない人は何を遺すのかという問いへ移っていきます。第一の答えを否定せずに、その答えが届かない人のために次の答えを用意する運びです。

この章句が説くこと

天分適性自認限界

関連する章句

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ
いま登録すると、7日間すべての機能を無料でお試しいただけます。 無料ではじめる