後世への最大遺物 / 第一回・穢ない銭は一文もない
またそういう希望を持った人は、神がその人に命じたところの考えであると思うて十分にそのことを自から奨励されんことを望む。あるアメリカの金持ちが「私は汝にこの金を譲り渡すが、このなかに穢ない銭は一文もない」というて子供に遺産を渡したそうですが、私どもはそういう金が欲しいのです。
書き下し
またそういう希望を持った人は、神がその人に命じたところの考えであると思うて、十分にそのことを自から奨励されんことを望む。あるアメリカの金持ちが「私は汝にこの金を譲り渡すが、このなかに穢ない銭は一文もない」というて子供に遺産を渡したそうですが、私どもはそういう金が欲しいのです。
現代語訳
またそういう願いを持った人は、それは神がその人に命じた考えだと思って、自分で十分にその道を励んでほしい。あるアメリカの金持ちが、私はお前にこの金を譲り渡すが、この中に汚い銭は一文もない、と言って子供に遺産を渡したそうです。私たちはそういう金が欲しいのです。
解説
金の遺物について述べてきた議論が、一つの短い台詞に集約されます。この中に汚い銭は一文もない。額ではなく出どころが遺産の値打ちを決めるという判定で、金を遺す話の締めくくりとして置かれています。受け取る子から見れば、金額よりもこの一言のほうが重い遺産でしょう。内村が金を肯定してきたのは、額の大きさを称えるためではなく、この一言が言える生き方を称えるためだったことが、ここではっきりします。
この章句が説くこと
遺産潔白出所金信頼
関連する章句
-
論語・為政篇子曰わく、人にして信無くんば、其れこれを知ることなきなり。大車に輗無く、小車に軏無くんば、其れこれを以て行かんや。
-
論語・顔淵篇子貢、政を問う。子曰く、「食を足し、兵を足し、民之を信ず。」子貢曰く、「必ず已むを得ずして去らば、斯の三者に於いて何をか先にせん。」曰く、「兵を去らん。」子貢曰く、「必ず已むを得ずして去らば、斯の二者に於いて何をか先にせん。」曰く、「食を去らん。古より皆死有り、民信無くんば立たず。」
-
論語・泰伯篇子曰わく、民はこれに由らしむべし、これを知らしむべからず。
-
論語・憲問篇「克・伐・怨・欲、行われずんば、以て仁と為す可きか。」子曰く、「以て難しと為す可し。仁は則ち吾知らざるなり。」
-
論語・憲問篇子曰く、『詐を逆(むか)えず、不信を億(はか)らず。抑も亦た先覚なる者、是れ賢か。』
-
『韓非子』說林上二十二樂羊は功有るを以て疑われ、秦西巴は罪有るを以て益々信ぜらる。