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後世への最大遺物 / 第一回・頭割の慈善はしない方がよい

私は金のためにはアメリカ人はたいへん弱い、アメリカ人は金のためにはだいぶ侵害されたる民であるということも知っております、けれどもアメリカ人のなかに金持ちがありまして、彼らが清き目的をもって金を溜めそれを清きことのために用うるということは、アメリカの今日の盛大をいたした大原因であるということだけは私もわかって帰ってきました。それでもしわれわれのなかにも、実業に従事するときにこういう目的をもって金を溜める人が出てきませぬときには、本当の実業家はわれわれのなかに起りませぬ。そういう目的をもって実業家が起りませぬならば、彼らはいくら起っても国の益になりませぬ。ただただわずかに憲法発布式のときに貧乏人に一万円……一人に五十銭か六十銭くらいの頭割をなしたというような、ソンナ慈善はしない方がかえってよいです。

書き下し

私は金のためにはアメリカ人はたいへん弱い、アメリカ人は金のためにはだいぶ侵害されたる民であるということも知っております。けれどもアメリカ人のなかに金持ちがありまして、彼らが清き目的をもって金を溜め、それを清きことのために用うるということは、アメリカの今日の盛大をいたした大原因であるということだけは、私もわかって帰ってきました。それでもしわれわれのなかにも、実業に従事するときにこういう目的をもって金を溜める人が出てきませぬときには、本当の実業家はわれわれのなかに起りませぬ。そういう目的をもって実業家が起りませぬならば、彼らはいくら起っても国の益になりませぬ。ただただわずかに憲法発布式のときに貧乏人に一万円……一人に五十銭か六十銭くらいの頭割をなしたというような、そんな慈善はしない方がかえってよいです。

現代語訳

私は、アメリカ人が金には大変弱い、金のためにずいぶん傷つけられた国民だということも知っています。けれどもアメリカ人の中に金持ちがいて、彼らが清い目的で金を溜め、それを清いことに用いる。それが今日のアメリカの隆盛をもたらした大きな原因だということだけは、私も分かって帰ってきました。ですから、もし私たちの中にも、実業に携わるときにこういう目的で金を溜める人が出てこないなら、本当の実業家は私たちの中に現れません。そういう目的を持たない実業家がいくら現れても、国の益にはなりません。ただ憲法発布式のときに貧しい人へ一万円、一人あたり五十銭か六十銭ほどを頭割りで配った、というような慈善なら、しない方がかえってよいのです。

解説

アメリカ礼賛ではないことを先に断ってから、学んだ一点だけを取り出します。清い目的で溜め、清いことに使う。この両輪がそろって初めて実業家だ、と内村は定義します。そして最後に、明治憲法発布の際の施与を挙げて、頭割りの慈善なら無い方がましだと切り捨てる。一人五十銭を撒いても誰の人生も変わらないからで、集めた金を薄く均等に配ることは、金を使う力の欠如だという判定です。金額の大きさではなく、集中して何かを変えたかが基準になっています。

この章句が説くこと

実業目的慈善配分効果

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