後世への最大遺物 / 第一回・生まれたときより世を善くして往く
しかるに今われわれは世界というこの学校を去りまするときに、われわれは何もここに遺さずに往くのでございますか。その点からいうとやはり私には千載青史に列するを得んという望みが残っている。私は何かこの地球に Memento を置いて逝きたい、私がこの地球を愛した証拠を置いて逝きたい、私が同胞を愛した記念碑を置いて逝きたい。それゆえにお互いにここに生まれてきた以上は、われわれが喜ばしい国に往くかも知れませぬけれども、しかしわれわれがこの世の中にあるあいだは、少しなりともこの世の中を善くして往きたいです。この世の中にわれわれの Memento を遺して逝きたいです。有名なる天文学者のハーシェルが二十歳ばかりのときに彼の友人に語って「わが愛する友よ、われわれが死ぬときには、われわれが生まれたときより、世の中を少しなりともよくして往こうではないか」というた。
書き下し
しかるに今われわれは、世界というこの学校を去りまするときに、われわれは何もここに遺さずに往くのでございますか。その点からいうと、やはり私には、千載青史に列するを得んという望みが残っている。私は何かこの地球に Memento を置いて逝きたい、私がこの地球を愛した証拠を置いて逝きたい、私が同胞を愛した記念碑を置いて逝きたい。それゆえに、お互いにここに生まれてきた以上は、われわれが喜ばしい国に往くかも知れませぬけれども、しかしわれわれがこの世の中にあるあいだは、少しなりともこの世の中を善くして往きたいです。この世の中にわれわれの Memento を遺して逝きたいです。有名なる天文学者のハーシェルが二十歳ばかりのときに、彼の友人に語って「わが愛する友よ、われわれが死ぬときには、われわれが生まれたときより、世の中を少しなりともよくして往こうではないか」といった。
現代語訳
ところが今、私たちは世界というこの学校を去るときに、何も遺さずに行くのでしょうか。その点から言えば、私にはやはり、千年の歴史に名を連ねたいという望みが残っています。私はこの地球に何か記念の品を置いて逝きたい。この地球を愛した証拠を置いて逝きたい。同胞を愛した記念碑を置いて逝きたい。ですから、互いにここに生まれてきた以上は、喜ばしい国へ行くかもしれないけれど、この世にいる間は、少しでもこの世を善くして行きたい。この世に私たちの記念を遺して逝きたい。有名な天文学者ハーシェルが二十歳ごろ、友人に語って、わが愛する友よ、私たちが死ぬときには、生まれたときより世の中を少しでもよくして行こうではないか、と言いました。
解説

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関連する章句
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啓発録・跋嗚呼如何せん、吾身刀圭の家に生れ、賤技に局々として、吾初年の志を遂る事を不得を。然れども所業は此に在りても、所志は彼に在り候へは、後世吾心を知り吾志を憐み吾道を信ずる者あらん歟。嘉永戊申季夏橋本左内誌。
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孟子・盡心章句上孟子曰く、「孔子東山に登りて魯を小とし、泰山に登りて天下を小とす。故に海を観る者には水と為し難く、聖人の門に游ぶ者には言と為し難し。水を観るに術有り、必ず其の瀾を観る。日月明有り、光を容るるところ必ず照らす。流水の物為るや、科に盈たざれば行かず。君子の道に志すや、章を成さざれば達せず。」
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『大和俗訓』巻之一・為学上されども芸は末なり、道義の学は本なり。芸をひたすら好めば、必学の志をうばはれて失ふものなり。いはんや私欲のなぐさみ好みにまかするをや。いましむべし。志を立つれば、たとへば西国の人のあづまへ行かんとおもひ立ちて、日々に行くに、其間昼夜あづまへ行かんと思ふ心は、念々つねにやまず。是あづまへ行く志たつなり。かくの如くなれば、つひに志す所に行きとどかずといふ事なし。道に志すも亦かくの如くなるべし。
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『正法眼蔵随聞記』巻五亦云く、仙人ありき、或人問て云く、如何がして仙を得ん、仙人の云く、仙を得んと思はゞ仙道を好むへしと、然れば学人も仏祖の道を得んと思はゞ、須く仏祖の道を好むへし、
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『慎思録』巻之一道に志す者は、須らく誠敬以て其の志を守るべし。然らざれば則ち流蕩放荒して道を忘れ、終にも亦必ず亡びんのみ。今の学者、大率人の不善を責むるの意思常に多くして、己の不善を責むるの意思常に少なし。此れ聖賢を以て人を律し、衆人を以て己を待すと謂ふ。是を以て学を為す者の、終に己に益無き所以なり。
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論語・公冶長篇顔淵・季路侍る。子曰く、「盍ぞ各々爾の志を言わざる。」子路曰く、「願わくは車馬衣裘、朋友と共にし、之を敝るとも憾み無からん。」顔淵曰く、「願わくは善に伐ること無く、労を施すこと無からん。」子路曰く、「願わくは子の志を聞かん。」子曰く、「老者は之を安んじ、朋友は之を信じ、少者は之を懐けん。」