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後世への最大遺物 / 第一回・地球に記念を遺したい

しかしながら私にここに一つの希望がある。この世の中をズット通り過ぎて安らかに天国に往き、私の予備学校を卒業して天国なる大学校にはいってしまったならば、それでたくさんかと己れの心に問うてみると、そのときに私の心に清い欲が一つ起ってくる。すなわち私に五十年の命をくれたこの美しい地球、この美しい国、この楽しい社会、このわれわれを育ててくれた山、河、これらに私が何も遺さずには死んでしまいたくない、との希望が起ってくる。ドウゾ私は死んでからただに天国に往くばかりでなく、私はここに一つの何かを遺して往きたい。それで何もかならずしも後世の人が私を褒めたってくれいというのではない、私の名誉を遺したいというのではない、ただ私がドレほどこの地球を愛し、ドレだけこの世界を愛し、ドレだけ私の同胞を思ったかという記念物をこの世に置いて往きたいのである、すなわち英語でいう Memento を残したいのである。

書き下し

しかしながら、私にここに一つの希望がある。この世の中をずっと通り過ぎて安らかに天国に往き、私の予備学校を卒業して天国なる大学校にはいってしまったならば、それでたくさんかと己れの心に問うてみると、そのときに私の心に清い欲が一つ起ってくる。すなわち、私に五十年の命をくれたこの美しい地球、この美しい国、この楽しい社会、このわれわれを育ててくれた山、河、これらに私が何も遺さずには死んでしまいたくない、との希望が起ってくる。どうぞ私は、死んでからただに天国に往くばかりでなく、私はここに一つの何かを遺して往きたい。それで、何もかならずしも後世の人が私を褒めたててくれというのではない、私の名誉を遺したいというのではない、ただ私がどれほどこの地球を愛し、どれだけこの世界を愛し、どれだけ私の同胞を思ったかという記念物を、この世に置いて往きたいのである。すなわち英語でいう Memento を残したいのである。

現代語訳

しかし私にはここに一つの希望があります。この世をずっと通り過ぎて安らかに天国へ行き、予備校を卒業して天国という大学に入ってしまえば、それで十分かと自分の心に問うてみると、そのとき清い欲が一つ起こってきます。すなわち、私に五十年の命をくれたこの美しい地球、美しい国、楽しい社会、私たちを育ててくれた山や河に、何も遺さずに死んでしまいたくない、という願いです。どうか私は、死んでからただ天国へ行くだけでなく、ここに何か一つを遺して行きたい。必ずしも後世の人に褒めてもらいたいのではない、自分の名誉を遺したいのでもない。ただ、私がどれほどこの地球を愛し、この世界を愛し、同胞を思ったかという記念の品を、この世に置いて行きたいのです。英語でいうメメントを遺したいのです。

解説

この講演の核心が置かれる段です。名誉ではなく記念の品を遺したい、と内村は言い換えます。メメントは記念の品、思い出のよすがで、その人がどれほど愛したかの証拠です。名誉は他人の評価ですが、記念の品は自分が愛した事実の痕跡なので、誰にも褒められなくても成り立つ。ここで欲の向け先が、自分の名から、自分が愛したものへときれいに移ります。天国に行くだけで十分かと自分に問い直したところから始まっているのも大事で、来世の救いに満足しない不満が、この世での仕事を生んでいます。

この章句が説くこと

記念地球同胞遺物

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