後世への最大遺物 / 第一回・膝を打ち合せて所感のままを
そこで私は「後世への最大遺物」という題を掲げておきました。もしこのことについて私の今まで考えましたことと今感じますることとをみな述べまするならば、いつもの一時間より長くなるかも知れませぬ。もし長くなってつまらなくなったなら勝手にお帰りなすってください、私もまたくたびれましたならばあるいは途中で休みを願うかも知れませぬ。もしあまり長くなりましたならば、明朝の一時間も私の戴いた時間でございますからそのときに述べるかも知れませぬ。ドウゾこういう清い静かなところにありまするときには、東京やまたはその他の騒がしいところでみな気の立っているところでするような騒がしい演説を私はしたくないです。私はここで諸君と膝を打ち合せて私の所感そのままを演説し、また諸君の質問にも応じたいと思います。
書き下し
そこで私は「後世への最大遺物」という題を掲げておきました。もしこのことについて、私の今まで考えましたことと、今感じますることとをみな述べまするならば、いつもの一時間より長くなるかも知れませぬ。もし長くなってつまらなくなったなら、勝手にお帰りなすってください。私もまた、くたびれましたならば、あるいは途中で休みを願うかも知れませぬ。もしあまり長くなりましたならば、明朝の一時間も私の戴いた時間でございますから、そのときに述べるかも知れませぬ。どうぞ、こういう清い静かなところにありまするときには、東京や、またはその他の騒がしいところで、みな気の立っているところでするような騒がしい演説を、私はしたくないです。私はここで諸君と膝を打ち合せて、私の所感そのままを演説し、また諸君の質問にも応じたいと思います。
現代語訳
そこで私は後世への最大遺物という題を掲げておきました。この件について、私がこれまで考えてきたことと、今感じていることをすべて述べるなら、いつもの一時間より長くなるかもしれません。長くなってつまらなくなったら、遠慮なくお帰りください。私も疲れたら、途中で休みをいただくかもしれません。あまり長くなったら、明朝の一時間も私がいただいた時間ですから、そのときに述べるかもしれません。どうか、こういう清く静かな場所にいるときには、東京やその他の騒がしい場所で、皆が気を立てているところでするような騒がしい演説を、私はしたくないのです。私はここで皆さんと膝を突き合わせ、自分の思うところをそのまま述べ、皆さんの質問にも応じたいと思います。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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論語・八佾篇子、太廟に入り、事毎に問う。或曰く、『誰か鄒人の子を礼を知ると謂うや、太廟に入りて事毎に問う。』子これを聞きて曰く、『是れ礼なり。』
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『淮南子』主術訓主道の員なる者は、運轉して端無く、化育すること神のごとく、虛無因循にして、常に後れて先んぜざるなり。臣道の員なる者は、運轉して方無く、是を論じて當に處り、事を為すに先んじて倡え、職を守ること分明にして、以て成功を立つるなり。是の故に君臣 道を異にすれば則ち治まり、道を同じくすれば則ち亂る。各々其の宜しきを得、其の當に處れば、則ち上下 以て相い使う有るなり。夫れ人主の治を聽くや、心を虛しくして志を弱くし、清明にして暗からず。是の故に群臣 輻湊して並び進み、愚智賢不肖と無く、其の能を盡くさざる莫き者は、則ち君は臣を制する所以を得、臣は君に事うる所以を得たり。國を治むるの道 明らかなり。文王は智にして問うを好む、故に聖なり。武王は勇にして問うを好む、故に勝てり。夫れ眾人の智に乘ずれば、則ち任ぜざる無し。眾人の力を用うれば、則ち勝たざる無し。千鈞の重きは、烏獲も舉ぐる能わざるなり。眾人 相い一にすれば、則ち百人にして餘力有り。是の故に一人の力に任ずる者は、則ち烏獲も恃むに足らず。眾人の制に乘ずる者は、則ち天下も有つに足らず。
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『後世への最大遺物』第一回・何を置いて逝くかそれでこの次は遺物のことです。何を置いて逝こう、という問題です。何を置いてわれわれがこの愛する地球を去ろうかというのです。そのことについて私も考えた、考えたばかりでなく、たびたびやってみた。何か遺したい希望があって、これを遺そうと思いました。それで後世への遺物もたくさんあるだろうと思います。それを一々お話しすることはできないことでございます。けれども、このなかに第一番にわれわれの思考に浮ぶものからお話しをいたしたいと思います。
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『後世への最大遺物』第一回・腰を掛けて話をする時は夏でございますし、処は山の絶頂でございます。それでここで私が手を振り足を飛ばしまして、私の血に熱度を加えて、諸君の熱血をここに注ぎ出すことは、あるいは私にできないことではないかも知れません。しかしこれは私の好まぬところ、また諸君もあまり要求しないところだろうと私は考えます。それでキリスト教の演説会で演説者が腰を掛けて話をするのは、たぶんこの講師が嚆矢であるかも知れない。しかしながら、もしこうすることが私の目的に適うことでございますれば、私は先例を破って、ここであなたがたとゆっくり腰を掛けてお話をしてもかまわないと思います。これもまた破壊党の所業だと思し召されてもよろしゅうございます。
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『後世への最大遺物』第二回・真面目なる生涯を送った人われわれに後世に遺すものは何もなくとも、われわれに後世の人にこれぞというて覚えられるべきものはなにもなくとも、あの人はこの世の中に活きているあいだは真面目なる生涯を送った人である、といわれるだけのことを後世の人に遺したいと思います。