後世への最大遺物 / 再版に附する序言・数千部を出すにいたれり
一篇のキリスト教的演説、別にこれを一書となすの必要なしと思いしも、前発行者の勧告により、印刷に附して世に公にせしに、すでに数千部を出すにいたれり、ここにおいて余はその多少世道人心を裨益することもあるを信じ、今また多くの訂正を加えて、再版に附することとはなしぬ、もしこの小冊子にしてなお新福音を宣伝するの機械となるを得ば余の幸福何ぞこれに如かん。明治三十二年十月三十日東京角筈村において内村鑑三
書き下し
一篇のキリスト教的演説、別にこれを一書となすの必要なしと思いしも、前発行者の勧告により、印刷に附して世に公にせしに、すでに数千部を出すにいたれり。ここにおいて余は、その多少世道人心を裨益することもあるを信じ、今また多くの訂正を加えて、再版に附することとはなしぬ。もしこの小冊子にして、なお新福音を宣伝するの機械となるを得ば、余の幸福、何ぞこれに如かん。明治三十二年十月三十日、東京角筈村において。内村鑑三
現代語訳
一篇のキリスト教の演説にすぎず、わざわざ一冊の本にする必要はないと思っていたのですが、前の発行者の勧めで印刷して世に出したところ、すでに数千部が出るにいたりました。そこで私は、この本が世の道と人の心にいくらか益することもあると信じ、今また多くの訂正を加えて、再版することにしました。もしこの小さな本が、なお新しい福音を伝える道具となりうるなら、私の幸福としてこれに勝るものがあるでしょうか。明治三十二年十月三十日、東京角筈村にて。内村鑑三
解説
再版の序で、著者の評価が動いた記録です。初版のはしがきでは本にする必要はないと思っていたと書き、ここでも同じ言葉を繰り返しますが、数千部という事実を前にして、世の道と人の心に益することもあると認めています。自分の仕事の値打ちを、自分の見積もりではなく読者の反応で測り直した形です。同時に多くの訂正を加えてとあり、売れたからそのまま増刷するのではなく、手を入れてから出しています。遺すに値するものへ育てていく態度が、二年の間に生まれています。

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『配所残筆』配所殘筆(13)如此高ぶりたる事申候と可有之候、然處因州公御事は、御老年と申、御學問之義只今の御大名には無之候、其上紀伊守殿但馬守殿御家に諸家之名高者大勢被召抱、高知之者共罷在候、如斯者共之咄被爲聞、殊更兵學之儀兼而被仰聞候間、拙者躰御噂批判可仕候樣無之候、松浦公御事は因州公より少々御年下に被成御座候、御自分の御文學者無御座候へ共、晝夜書物等被聞召、文武之諸藝儒佛之御勤御怠不被成候、其上當代之古老衆每度御招請被成、御當家上方衆之近代之物語大分被成御存候、近年御家中に諸歷々方高知にて被差置、尤能者共御使立被成候、依て中根宋閑石谷士入常に被申候者、御家中之作法人の御使立被成候樣、若年には珍敷武將にて可有之由、度々被申候を、石谷市郎右衞門殿並拙者抔も承候事に候、然共此御兩公樣御事は、御自分より初御家中御領內迄之御作法御仕置無殘所候樣乍恐奉存候、然に一兩度者時の御挨拶と奉存候、度々被仰聞候事に御座候へば、拙者存念は立候て安堵仕候、拙者事御存被成御方々樣者、御分限不被成御座候、御存無之御方者、無途方者に可被思召候間、拙者事は當分永之浪人と覺悟候故、諸事逼塞仕罷在候所存に御座候由、其節申上候、
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『大和俗訓』巻之五・言語一人をほめ毀ること、つつしんで過不及なかるべし。人の小悪を大悪に言ひなし、小過を大過に言ひなし、虚なることを実に言ひなすは、讒言なり。又左程なきことを、甚しく人をほめ過すも、正直の道にあらず。へつらひて其人に私するなり。誉めそしること、かるがるしくすべからず。たとへば権量を以て、物の軽重をはかるが如くなるべし。一毫もかろくし重くして、過不及あるべからず。誉むべからざる人をほめ、毀るべからざる人をそしり、或はほめ過し、そしり過すは、ともに不智なり。論語に子貢曰、君子は一言以て智とし、一言以て不智とす。言慎まずんばあるべからずといへり。よき人は、許可をつつしむとて、人をみだりにゆるしほめず。されども、小善をもすてず、一芸をも用ふるは、君子のする所なり。
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『幽夢影』巻下・君子の鄙しむ所と爲る毋れ寧ろ小人の罵る所と爲るも、君子の鄙しむ所と爲る毋れ。寧ろ盲主司の擯棄する所と爲るも、諸名宿の知らざる所と爲る毋れ。
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