国語 / 斉語
桓公令官長期而書伐,以告且選,選其官之賢者而復用之,曰:「有人居我官,有功休德,惟慎端愨以待時,使民以勸,綏謗言,足以補官之不善政。」桓公召而與之語,訾相其質,足以比成事,誠可立而授之。設之以國家之患而不疚,退問之其鄉,以觀其所能而無大厲,升以為上卿之贊。謂之三選。國子、高子退而修鄉,鄉退而修連,連退而修里,里退而修軌,軌退而修伍,伍退而修家。是故匹夫有善,可得而舉也;匹夫有不善,可得而誅也。政既成,鄉不越長,朝不越爵,罷士無伍,罷女無家。夫是,故民皆勉為善。與其為善於鄉也,不如為善於里;與其為善於里也,不如為善於家。是故士莫敢言一朝之便,皆有終歲之計;莫敢以終歲之議,皆有終身之功。 桓公曰:「伍鄙若何?」管子對曰:「相地而衰征,則民不移;政不旅舊,則民不偷;山澤各致其時,則民不苟;陸、阜、陵、墐、井、田、疇均,則民不憾;無奪民時,則百姓富;犧牲不略,則牛羊遂。」 桓公曰:「定民之居若何?」管子對曰:「制鄙。三十家為邑,邑有司;十邑為卒,卒有卒帥;十卒為鄉,鄉有鄉帥;三鄉為縣,縣有縣帥;十縣為屬,屬有大夫。五屬,故立五大夫,各使治一屬焉;立五正,各使聽一屬焉。是故正之政聽屬,牧政聽縣,下政聽鄉。」桓公曰:「各保治爾所,無或淫怠而不聽治者!」
新字:桓公令官長期而書伐,以告且選,選其官之賢者而復用之,曰:「有人居我官,有功休徳,惟慎端愨以待時,使民以勧,綏謗言,足以補官之不善政。」桓公召而与之語,訾相其質,足以比成事,誠可立而授之。設之以国家之患而不疚,退問之其郷,以観其所能而無大厲,升以為上卿之賛。謂之三選。国子、高子退而修郷,郷退而修連,連退而修里,里退而修軌,軌退而修伍,伍退而修家。是故匹夫有善,可得而舉也;匹夫有不善,可得而誅也。政既成,郷不越長,朝不越爵,罷士無伍,罷女無家。夫是,故民皆勉為善。与其為善於郷也,不如為善於里;与其為善於里也,不如為善於家。是故士莫敢言一朝之便,皆有終歳之計;莫敢以終歳之議,皆有終身之功。 桓公曰:「伍鄙若何?」管子対曰:「相地而衰征,則民不移;政不旅旧,則民不偸;山沢各致其時,則民不苟;陸、阜、陵、墐、井、田、疇均,則民不憾;無奪民時,則百姓富;犠牲不略,則牛羊遂。」 桓公曰:「定民之居若何?」管子対曰:「制鄙。三十家為邑,邑有司;十邑為卒,卒有卒帥;十卒為郷,郷有郷帥;三郷為県,県有県帥;十県為属,属有大夫。五属,故立五大夫,各使治一属焉;立五正,各使聴一属焉。是故正之政聴属,牧政聴県,下政聴郷。」桓公曰:「各保治爾所,無或淫怠而不聴治者!」
書き下し
桓公官長をして期して伐(いさお)を書かしめ、以て告げて且つ選び、其の官の賢者を選びて復た之を用いしむ。曰く、「人有り、我が官に居りて、功有り徳を休(よみ)し、惟れ慎み端愨(たんかく)にして以て時を待ち、民をして以て勧めしめ、謗言を綏(やす)んじ、以て官の善からざる政を補うに足る」と。桓公召して之と語り、其の質を訾相(しそう)し、以て事を比成するに足り、誠に立てて之を授くべし。之に設くるに国家の患いを以てして疚(やま)しからず、退きて之を其の郷に問い、以て其の能くする所を観て大いなる厲(あやまち)無くば、升(のぼ)せて以て上卿の賛と為す。之を三選と謂う。国子・高子退きて郷を修め、郷退きて連を修め、連退きて里を修め、里退きて軌を修め、軌退きて伍を修め、伍退きて家を修む。是の故に匹夫に善有らば、得て挙ぐべきなり。匹夫に不善有らば、得て誅すべきなり。政既に成り、郷は長を越えず、朝は爵を越えず、罷士(ひし)は伍無く、罷女は家無し。夫れ是れ、故に民皆勉めて善を為す。其の善を郷に為さんよりは、善を里に為すに如かず。其の善を里に為さんよりは、善を家に為すに如かず。是の故に士敢えて一朝の便を言う莫く、皆終歳の計有り。敢えて終歳の議を以てする莫く、皆終身の功有り。 桓公曰く、「鄙(ひ)を伍にすること若何」と。管子対えて曰く、「地を相(み)て征を衰(さ)すれば、則ち民移らず。政、旧を旅(わす)れざれば、則ち民偸(うす)からず。山沢各々其の時を致せば、則ち民苟(いやし)からず。陸・阜・陵・墐(きん)・井・田・疇(ちゅう)均しければ、則ち民憾(うら)まず。民の時を奪う無ければ、則ち百姓富む。犠牲略(かす)めざれば、則ち牛羊遂(と)ぐ」と。 桓公曰く、「民の居を定むること若何」と。管子対えて曰く、「鄙を制せん。三十家を邑と為し、邑に司有り。十邑を卒と為し、卒に卒帥有り。十卒を郷と為し、郷に郷帥有り。三郷を県と為し、県に県帥有り。十県を属と為し、属に大夫有り。五属、故に五大夫を立て、各々一属を治めしむ。五正を立て、各々一属を聴かしむ。是の故に正の政は属を聴き、牧の政は県を聴き、下の政は郷を聴く」と。桓公曰く、「各々爾の所を保ち治めよ。或いは淫怠して治を聴かざる者無かれ」と。
現代語訳
桓公は各官の長に、一年を期限としてそれぞれの部下の功績を書き記させ、報告させたうえで選び、官のうちの賢い者を選んで重ねて用いた。長はこう報告した。「ここに一人の者がおり、わが役所に勤めて功績があり、徳もすぐれ、慎み深く正直で、ひたすら務めながら時を待ち、民を励まし、悪口や不満を鎮め、役所の不行き届きな政治を補うに足ります。」桓公はその者を召して語り合い、その人柄をつぶさに見定め、事を成し遂げるに足り、まことに取り立てて任せることができると判断した。そのうえで国家の難題を課してみても手に余ることがなく、退かせてその郷で評判を問い、できることを見て大きな過ちがなければ、昇らせて上卿の補佐とした。これを「三選」(長の推挙・君の面接・郷での確認)という。国子・高子(二人の上卿)は退いて自分の郷を整え、郷の長は退いて連を整え、連の長は退いて里を整え、里の長は退いて軌を整え、軌の長は退いて伍を整え、伍の者は退いて家を整えた。こうして、一人の平民に善い行いがあれば見つけて取り立てることができ、一人の平民に悪い行いがあれば見つけて罰することができた。政治ができあがると、郷の民は長を差し置くことがなく、朝廷では爵位の序列を越える者がなく、行いの悪い男は伍の仲間に入れてもらえず、行いの悪い女は嫁ぎ先がなかった。こういうわけで民は皆つとめて善を行った。郷で善を行うよりは里で善を行うほうがよく、里で善を行うよりは家で善を行うほうがよい(身近なところほど見られている)。だから士は目先の一時の都合を口にすることがなく、皆一年先を見据えた計画を持ち、さらには一年の計画でよしとせず、皆一生をかけた功を目指した。 桓公が「郊外の地を五つに分けて治めるとはどういうことか」と問うと、管子は答えた。「土地の良し悪しを見て税に差をつければ、民はよそへ移りません。政治が古くからの臣を忘れなければ、民の心は薄情になりません。山や沢をそれぞれ定めた時期にだけ開けば、民はむやみに取り尽くしません。平地・小丘・丘陵・湿地・井田・畑・麻畑の配分を公平にすれば、民は恨みません。民の農事の時間を奪わなければ、民は富みます。犠牲の家畜を勝手に取り上げなければ、牛や羊はよく育ちます。」 桓公が「その民の住まいを定めるにはどうするか」と問うと、管子は答えた。「郊外の制度を定めましょう。三十家を邑として邑に役人を置き、十邑を卒として卒帥を置き、十卒を郷として郷帥を置き、三郷を県として県帥を置き、十県を属として大夫を置きます。属は五つあるので五人の大夫を立て、それぞれ一属を治めさせます。また五人の正(監督官)を立て、それぞれ一属の政治を監察させます。こうして正は属の政治を聴き、牧(大夫)は県の政治を聴き、下の役人は郷の政治を聴くのです。」桓公は言った。「それぞれ自分の持ち場をしっかり治めよ。怠けて治めない者があってはならない。」
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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呂氏春秋・贊能②管子は束縛せられて魯に在り。桓公、鮑叔を相にせんと欲す。鮑叔曰く、「吾が君、霸王たらんと欲すれば、則ち管夷吾、彼に在り。臣は若かざるなり。」桓公曰く、「夷吾は寡人の賊なり。我を射し者なり。不可なり。」鮑叔曰く、「夷吾は其の君の為に人を射し者なり。君若し得て之を臣とせば、則ち彼も亦た將に君の為に人を射んとせん。」桓公聽かず、強いて鮑叔を相とせんとす。固く辭して相を讓る,桓公果して之を聽く。是に於てか人をして魯に告げしめて曰く、「管夷吾は寡人の讎なり。願わくば之を得て親ら手を加えん。」魯君許諾し、乃ち吏をして其の拳を鞹し、其の目を膠し、之を盛るに鴟夷を以てし、之を車中に置かしむ。齊の境に至るや、桓公、人をして朝車を以て之を迎え、祓うに爟火を以てし、釁するに犧猳を以てし、生かして之と國に如かしむ。有司に命じて廟を除わしめ、筵几して之に薦めて曰く、「孤の夷吾の言を聞きし自り、目は益々明らかに、耳は益々聰なり。孤敢て專らにせず。敢て以て先君に告ぐ。」因りて顧みて管子に命じて曰く、「夷吾、予を佐けよ。」管仲還り走り、再拜稽首して、令を受けて出づ。管子、齊國を治め、事を舉げて功有れば、桓公必ず先づ鮑叔を賞して曰く、「齊國をして管子を得しめし者は、鮑叔なり。」桓公は賞を行うことを知れりと謂う可し。凡そ賞を行うには其の本を欲す。本なれば則ち過ち由りて生ずること無ければなり。
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説苑・辨物斉の桓公北のかた孤竹を征す。未だ卑耳谿中に至らざること十里、闟然(こうぜん)として止まり、瞠然(どうぜん)として視ること頃(しばら)く有り、矢を奉じて未だ敢えて発せず。喟然として歎じて曰わく、「事其れ済(な)らざるか。人の長さ尺なる有り、冠冕大人の物具わる。左袪(きょ)して衣し馬前を走る者あり。」管仲曰わく、「事必ず済らん。此の人は道を知るの神なり。馬前を走る者は導くなり。左に衣を袪する者は、前に水有るなり。」左方より渡り、行くこと十里にして果たして水有り、遼水と曰う。之を表し、左方より渡れば踝(くるぶし)に至り、右方より渡れば膝に至る。已に渡りて、事果たして済る。桓公馬前に管仲を拝して曰わく、「仲父の聖此くの如きに至る、寡人罪を得ること久し。」管仲曰わく、「夷吾之を聞く、聖人は先に無形を知る、今已に形有りて乃ち之を知る、是れ夷吾教えを承くるに善きなり、聖に非ざるなり。」
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論語・八佾篇子曰く、『管仲の器、小なる哉!』或曰く、『管仲は倹なりや。』曰く、『管氏に三帰有り。』曰く、『然らば礼を知るや。』曰く、『邦君、塞門を樹つ、管氏も亦塞門を樹つ。邦君、二君の好を為すに反坫有り、管氏も亦反坫有り。管仲、その器小なる哉!』
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呂氏春秋・知接②管仲疾有り。桓公往きて之に問いて曰く、「仲父の疾病なり。將に何を以てか寡人に教えんとす。」管仲曰く、「齊の鄙人に諺有り、曰く、『居る者は載すること無く、行く者は埋むること無し。』今臣將に遠く行くこと有らんとす。胡ぞ以て問う可けん。」桓公曰く、「願わくは仲父の讓る無きことを。」管仲對えて曰く、「願わくは君の易牙・豎刀・常之巫・衛の公子啓方を遠ざけんことを。」公曰く、「易牙は其の子を烹て以て寡人を慊らしむ。猶尚ほ疑う可きか。」管仲對えて曰く、「人の情、其の子を愛せざるに非ざるなり。其の子に之れ忍ぶ。又將た何か君に於て有らん。」公又曰く、「豎刀は自ら宮して以て寡人に近づく。猶尚ほ疑う可きか。」管仲對えて曰く、「人の情、其の身を愛せざるに非ざるなり。其の身に之れ忍ぶ。又將た何か君に於て有らん。」公又曰く、「常之巫は死生を審らかにし、能く苛病を去る。猶尚ほ疑う可きか。」管仲對えて曰く、「死生は命なり。苛病は失なり。君、其の命に任じて、其の本を守らず、而して常之巫に恃む。彼將た此を以て為さざる無からん。」公又曰く、「衛の公子啓方は寡人に事うること十五年、其の父死するも敢て歸りて哭せず。猶尚ほ疑う可きか。」管仲對えて曰く、「人の情、其の父を愛せざるに非ざるなり。其の父に之れ忍ぶ。又將た何か君に於て有らん。」公曰く、「諾。」管仲死し、盡く之を逐う。食甘からず、宮治まらず、苛病起こり、朝肅ならず。居ること三年、公曰く、「仲父亦た過たずや。孰か仲父之を盡くせりと謂うや。」是に於て皆復召して反す。明年、公病有り。常之巫中從り出でて曰く、「公將に某日を以て薨ぜんとす。」易牙・豎刀・常之巫相與に亂を作し、宮門を塞ぎ、高牆を築き、人を通さず。矯るに公の令を以てす。一婦人有り、垣を踰えて入り、公の所に至る。公曰く、「我食を欲す。」婦人曰く、「吾得る所無し。」公又曰く、「我飲を欲す。」婦人曰く、「吾得る所無し。」公曰く、「何の故ぞ。」對えて曰く、「常之巫中從り出でて曰く、『公將に某日を以て薨ぜんとす。』易牙・豎刀・常之巫相與に亂を作し、宮門を塞ぎ、高牆を築き、人を通さず。故に得る所無し。衛の公子啓方、書社四十を以て衛に下る。」公慨焉として歎じ、涕出でて曰く、「嗟乎。聖人の見る所、豈に遠からずや。若し死者知る有らば、我將た何の面目ありて以て仲父に見えん。」衣袂を蒙りて壽宮に絶えたり。蟲流れて戶より出づ。上蓋うに楊門の扇を以てす。三月葬らず。此れ卒に管仲の言を聽かざればなり。桓公、難を輕んじて管子を惡むに非ざるなり。由りて接すること無ければなり。由りて接する無く、固より其の忠言を卻けて、其の尊貴する所を愛するなり。
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説苑・指武齊の桓公の時、霖雨十旬。桓公漅陵を伐たんと欲するも、其の城の雨に值うや、未だ合わず。管仲・隰朋卒徒を以て門に造る、桓公曰く、「徒眾何を以て為すか」と。管仲對えて曰く、「臣之を聞く、雨あれば則ち事有りと。夫れ漅陵雨に能わず、臣請う之を攻めん」と。公曰く、「善し」と。遂に師を興して之を伐つ。既に至れば、大卒外に間して士內に在り、桓公曰く、「其れ聖人有るか」と。乃ち旗を還して之を去る。
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孔子家語・致思子路孔子に問いて曰わく、「管仲の人と為り何如。」 子曰わく、「仁なり。」 子路曰わく、「昔管仲襄公に説くも、公受けず、是れ辯ならざるなり。公子糾を立てんと欲するも能わず、是れ智ならざるなり。家斉に残わるるも、憂色無し、是れ慈ならざるなり。桎梏せられて檻車に居るも、慚づる心無し、是れ醜無きなり。射る所の君に事う、是れ貞ならざるなり。召忽之に死し、管仲死せず、是れ忠ならざるなり。仁人の道、固より是くの若きか。」 孔子曰わく、「管仲襄公に説くも、襄公受けざるは、公の闇きなり。子糾を立てんと欲するも能わざるは、時に遇わざるなり。家斉に残わるるも憂色無きは、是れ権命を知ればなり。桎梏せられて慚づる心無きは、自ら裁くこと審らかなればなり。射る所の君に事うるは、変に通ずればなり。子糾に死せざるは、軽重を量ればなり。夫れ子糾未だ君と成らず、管仲未だ臣と成らず。管仲は義を才度し、管仲束縛に死せずして功名を立つるは、未だ非とす可からざるなり。召忽死すと雖も、過ちて仁を取る、未だ多しとするに足らざるなり。」
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