管子 / 輕重乙
一朝素賞,四萬二千金廓然虚桓公惕然太息曰:「吾曷以識此?」管子對曰:「君勿患。且使外為名於其内,鄉為功於其親,家為徳於其妻子。若此,則士必爭名報徳,無北之意矣。吾舉兵而攻,破其軍,并其地,則非特四萬二千金之利也。」五子曰:「善。」桓公曰:「諾。」乃誡大將曰:「百人之長,必為之朝禮。千人之長,必拜而送之,降兩級。其有親戚者,必遺之酒四石,肉四鼎。其無親戚者,必遺其妻子酒三石,肉三鼎。」行教半嵗,父教其子,兄教其弟,妻諫其夫,曰:「見其若此其厚,而不死列陳,可以反於鄉乎?」桓公終舉兵攻萊,戰於莒必市里。鼓旗未相望,衆少未相知,而萊人大遁。故遂破其軍,兼其地,而虜其將。故未列地而封,未出金而賞,破萊軍,并其地,禽其君。此素賞之計也。」
新字:一朝素賞,四万二千金廓然虚桓公惕然太息曰:「吾曷以識此?」管子対曰:「君勿患。且使外為名於其内,鄉為功於其親,家為徳於其妻子。若此,則士必争名報徳,無北之意矣。吾舉兵而攻,破其軍,并其地,則非特四万二千金之利也。」五子曰:「善。」桓公曰:「諾。」乃誡大将曰:「百人之長,必為之朝礼。千人之長,必拝而送之,降両級。其有親戚者,必遺之酒四石,肉四鼎。其無親戚者,必遺其妻子酒三石,肉三鼎。」行教半歳,父教其子,兄教其弟,妻諫其夫,曰:「見其若此其厚,而不死列陳,可以反於鄉乎?」桓公終舉兵攻萊,戦於莒必市里。鼓旗未相望,衆少未相知,而萊人大遁。故遂破其軍,兼其地,而虜其将。故未列地而封,未出金而賞,破萊軍,并其地,禽其君。此素賞之計也。」
書き下し
一朝にして素より賞し、四萬二千金は廓然として虚し。桓公惕然として太息して曰く、「吾れ曷を以て此を識らん」と。管子對えて曰く、「君患うる勿かれ。且つ外をして名を其の内に為し、鄉に功を其の親に為し、家に徳を其の妻子に為さしめよ。此くの若くんば、則ち士は必ず名を爭い徳に報い、北ぐるの意無からん。吾れ兵を舉げて攻め、其の軍を破り、其の地を并せば、則ち特だ四萬二千金の利のみに非ざるなり」と。五子曰く、「善し」と。桓公曰く、「諾」と。乃ち大將に誡めて曰く、「百人の長には、必ず之が為に朝禮せよ。千人の長には、必ず拜して之を送り、兩級を降れ。其の親戚有る者には、必ず之に酒四石、肉四鼎を遺れ。其の親戚無き者には、必ず其の妻子に酒三石、肉三鼎を遺れ」と。教えを行うこと半歳、父は其の子に教え、兄は其の弟に教え、妻は其の夫を諫めて曰く、「其の此くの若く其れ厚きを見て、列陳に死せずんば、以て鄉に反るべけんや」と。桓公終に兵を舉げて萊を攻め、莒の必市の里に戰う。鼓旗未だ相い望まず、衆少未だ相い知らずして、萊人大いに遁る。故に遂に其の軍を破り、其の地を兼ね、其の將を虜にす。故に未だ地を列ねて封ぜず、未だ金を出だして賞せずして、萊軍を破り、其の地を并せ、其の君を禽にす。此れ素賞の計なり。
現代語訳
一朝のうちに前もって賞し、四万二千金はからりと空になった。桓公はぎくりとして大きく息をつき、言った。私はこれをどう受け止めればよいのか。管子が答えた。君は心配なさいますな。外で得た名を家の内で語らせ、郷では親に功として届かせ、家では妻子に徳として届かせなさい。こうすれば士は必ず名を争い恩に報いて、退く気を起こしません。我らが兵を挙げて攻め、その軍を破り、その地を併せれば、四万二千金だけの利ではすみません。五人の臣は、よい、と言った。桓公は、よし、と言った。そこで大将に言い含めた。百人の長には必ず朝廷の礼をもって迎えよ。千人の長には必ず拝して送り出し、二段下がって礼をせよ。親族のある者には必ず酒四石と肉四鼎を届けよ。親族のない者には必ずその妻子に酒三石と肉三鼎を届けよ、と。この教えを行って半年、父は子に教え、兄は弟に教え、妻は夫を諫めて言った。これほど厚くしてもらっておきながら、陣で死ななければ、村へ帰れましょうか、と。桓公はついに兵を挙げて萊を攻め、莒の必市の里で戦った。太鼓も旗もまだ見えず、人数の多い少ないも分からないうちに、萊人は大いに逃げ散った。だってついにその軍を破り、その地を併せ、その将を捕虜にした。土地を割いて封じることもなく、あらためて金を出して賞することもなく、萊の軍を破り、その地を併せ、その君を捕らえた。これが前もって賞する計である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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孟子・盡心章句上孟子曰く、「君子に三樂有り。而して天下に王たるは、與り存せず。父母俱に存し、兄弟故無きは、一の樂しみなり。仰いで天に愧ぢず、俯して人に怍ぢざるは、二の樂しみなり。天下の英才を得て、之を教育するは、三の樂しみなり。君子に三樂有り。而して天下に王たるは、與り存せず。」
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孟子・離婁章句上孟子曰く、「天下大いに悅びて將に己に歸せんとす。天下悅びて己に歸するを視ること、猶ほ草芥のごときは、惟だ舜をのみ然りと為す。親に得られずんば、以て人と為す可からず。親に順われずんば、以て子と為す可からず。舜、親に事うるの道を盡くして、瞽瞍、豫びを底せり。瞽瞍、豫びを底して天下化せり。瞽瞍、豫びを底して、天下の父子為る者定まれり。此を之れ大孝と謂う。」
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論語・為政篇孟武伯孝を問う。子曰く、「父母は唯其の疾(やまい)を之憂う。」
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孟子・盡心章句上孟子曰く、「君子の物に於けるや、之を愛すれども仁せず。民に於けるや、之を仁すれども親しまず。親を親しみて民を仁し、民を仁して物を愛す。」
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孔子家語・大婚解孔子遂に言いて曰く、「昔三代の明王、必ず妻子を敬せり。蓋し道有り、妻なる者は、親の主なり。子なる者は、親の後なり。敢えて敬せざらんや。是の故に君子は敬せざる無し。敬なる者は、身を敬するを大と為す。身なる者は、親の支なり。敢えて敬せざらんや。其の身を敬せずんば、是れ其の親を傷るなり。其の親を傷れば、是れ本を傷るなり。其の本を傷れば、則ち支之に従いて亡ぶ。三者は、百姓の象なり。身は以て身に及び、子は以て子に及び、妃は以て妃に及ぶ。君此の三者を修むるを以てすれば、則ち大化天下に愾かる。昔太王の道や、此くの如くにして国家順えり。」
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『塩鉄論』孝養篇文學曰く、善く養う者は必ずしも芻豢ならず、善く供服する者は必ずしも錦繡ならず。己の有する所を以て盡く其の親に事うるは、孝の至りなり。故に匹夫の勤勞も、猶お以て禮に順うに足り、菽を歠り水を飲むも、以て其の敬を致すに足る。孔子曰く、『今の孝は、是れ能く養うと為す、敬せずんば、何を以て別たんや』と。故に上孝は志を養い、其の次は色を養い、其の次は體を養う。其の禮を貴びて、其の養を貪らず、禮順い心和せば、養備わらずと雖も、可なり。易に曰く、『東鄰の牛を殺すは、西鄰の禴祭に如かざるなり』と。故に富貴にして禮無きは、貧賤の孝悌に如かず。閨門の內に孝を盡くし、閨門の外に悌を盡くし、朋友の道に信を盡くす、三者は、孝の至りなり。家に居りて理まる者は、財を積むを謂うに非ず、親に事えて孝なる者は、鮮肴を謂うに非ず、亦た顏色を和らげ、意を承けて禮義を盡くすのみ。