管子 / 輕重乙
桓公曰:「强本節用,可以為存乎?」管子對曰:「可以為益愈,而未足以為存也。昔者紀氏之國,强本節用者,其五榖豐滿而不能理也,四流而歸於天下。若是,則紀氏其强本節用,適足以使其民榖盡而不能理,為天下虜,是以其國亡而身無所處。故可以益愈,而不足以為存。故善為國者,天下下我髙,天下輕我重,天下多我寡,然後可以朝天下。」
新字:桓公曰:「强本節用,可以為存乎?」管子対曰:「可以為益愈,而未足以為存也。昔者紀氏之国,强本節用者,其五榖豊満而不能理也,四流而帰於天下。若是,則紀氏其强本節用,適足以使其民榖尽而不能理,為天下虜,是以其国亡而身無所処。故可以益愈,而不足以為存。故善為国者,天下下我高,天下軽我重,天下多我寡,然後可以朝天下。」
書き下し
桓公曰く、「本を彊め用を節すれば、以て存を為すべきか」と。管子對えて曰く、「以て益愈と為すべきも、未だ以て存を為すに足らざるなり。昔者紀氏の國、本を彊め用を節する者なるも、其の五榖豐かに滿ちて理むる能わず、四のかた流れて天下に歸す。是くの若くんば、則ち紀氏の其の本を彊め用を節するは、適だ其の民をして榖盡きて理むる能わず、天下の虜と為らしむるに足る、是を以て其の國亡びて身も處る所無し。故に以て益愈たるべきも、以て存を為すに足らず。故に善く國を為むる者は、天下下れば我れ髙く、天下輕ければ我れ重く、天下多ければ我れ寡なし、然る後に以て天下を朝せしむべし」と。
現代語訳
桓公が言った。生業を励まし入用を切り詰めれば、国を保てるか。管子が答えた。ましにはなりますが、保つには足りません。昔、紀氏の国は生業を励まし入用を切り詰めていましたが、五穀が豊かに満ちても整えられず、四方へ流れ出して天下のものになった。とすれば紀氏が生業を励まし倹約したことは、ちょうどその民を、穀物が尽きても手が打てず天下の捕虜にするのに足りただけです。だからその国は滅び、身の置きどころもなくなった。だからましにはなっても、保つには足りない。うまく国を治める者は、天下が下がればこちらは上げ、天下が安ければこちらは高くし、天下が多ければこちらは少なくする。そうしてはじめて天下を朝廷に来させられるのです。
解説
この章句が説くこと
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『管子』地數桓公管子に問いて曰く、「吾れ本を富ませて五榖を豐かにせんと欲す、可なるか」と。管子對えて曰く、「不可なり。夫れ本富みて財物衆ければ、守る能わざれば則ち天下に税せらる。五榖興り豐かにして、錢を巨にして天下貴ければ、則ち天下に税せらる。然らば則ち吾が民は常に天下の虜と為らん。夫れ善く本を用うる者は、身を以て大海を濟るが若く、風の起こる所を觀て、天下髙ければ則ち髙くし、天下下れば則ち下る。天髙く我下れば、則ち財利は天下に税せらる」と。
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『管子』揆度管子曰く、「善く國を為むる者は、金石の相い舉ぐるが如し、重さ鈞しければ則ち金傾く、故に權を治むれば則ち勢重く、道を治むれば則ち勢羸し。今榖吾が國に重くして、天下に輕ければ、則ち諸侯の自ら泄るること、原水の下に就くが如し。故に物は重ければ則ち至り、輕ければ則ち去る。重を以て至りて輕く處る者有り。我れ動きて之を錯けば、天下は即ち我に已まん。物は臧すれば則ち重く、發すれば則ち輕く、散ずれば則ち多し。幣重ければ則ち民は利に死し、幣輕ければ則ち決して用いず、故に輕重は數に調いて止む。五榖なる者は、民の司命なり。刀幣なる者は、溝瀆なり。號令なる者は、徐疾なり。令は寶より重く、社稷は親戚より重し。胡をか謂うや」と。對えて曰く、「夫れ城郭抜かれ社稷血食せざれば、生ける臣無し。親沒するの後、死する子無し。此れ社稷の親戚より重き所以なり。故に城有りて人無き、之を守平虚と謂い、人有りて甲兵無く食無き、之を禍と居ると謂う」と。
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『管子』山至數桓公又た管子に問いて曰く、「身を終うるまで天下を有ちて失う勿からんとするに、之を為すに道有りや」と。管子對えて曰く、「請う天下に施す勿かれ、獨り之を吾が國に施せ」と。桓公曰く、「此の若き言は何の謂いぞや」と。管子對えて曰く、「國の廣狹、壤の肥墝に數有り、歳を終うるまでの食の餘りに數有り、彼の國を守る者は、榖を守るのみ」と。曰く、「某の縣の壤の廣きこと若干、某の縣の壤の狹きこと若干、則ち必ず委幣を積み、是に於て縣州里は公錢を受く。泰秋、國榖は三分の一を去る、君令を下し、郡縣屬大夫里邑に謂いて皆な粟を籍りて入るること若干とす。榖の重は一なるも、以て上に藏する者、國榖三分すれば、則ち二分は上に在り。泰春、國榖の倍重するは、數なり。泰夏、榖を賦するに市の櫎を以てし、民は皆な上の榖を受けて以て田土を治む。泰秋、田榖の存予する者若干、今上榖を歛むるに幣を以てすれば、民は幣無しと曰いて榖を以てす、則ち民の三は上に歸する有り。重の相い因り、時の化舉するは、國筴と為さざる無し。
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『管子』輕重乙桓公曰く、「壤數は此に盡くるか」と。管子對えて曰く、「未だし。昔狄諸侯は、畆鍾の國なり、故に粟十鍾にして錙金なり。程諸侯は、山諸侯の國なり、故に粟五釜にして錙金なり。故に狄諸侯は十鍾にして㦸を倳つるを得ず、程諸侯は五釜にして㦸を倳つるを得たり。十倍にして足らず、或いは五分にして餘り有る者は、輕重髙下の數に通ずればなり。國に十歳の蓄え有るも、民の食足らざる者は、皆な其の事業を以て君の祿を望めばなり。君に山海の財有るも、民の用足らざる者は、皆な其の事業を以て上に交接すればなり。故に租籍は、君の宜しく得べき所なり。正籍は、君の彊いて求むる所なり。亡君は其の宜しく得べき所を廢して、其の彊いて求むる所を斂む、故に下は上を怨みて令行われず。民は、之を奪えば則ち怒り、之に予うれば則ち喜ぶ。民情固より然り。先王は其の然るを知る、故に予うるの所を見わして、奪うの理を見わさず。故に五榖粟米なる者は、民の司命なり。黄金刀布なる者は、民の通貨なり。先王善く其の通貨を制して、以て其の司命を御す、故に民力盡くすべきなり」と。
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『管子』揆度桓公管子に問いて曰く、「輕重の數は惡くにか終わる」と。管子對えて曰く、「四時の更ごも舉がるが若く、終わる所無し。國に患憂有れば、五榖を輕重して以て用を調え、餘りを積み羨を臧して以て賞に備う。天下賔服し、海内を有てば、以て誠信仁義の士を富ます。故に民は辭讓を髙くして、竒怪を為す者無し。彼の輕重なる者は、諸侯服せざれば以て出でて戰い、諸侯賔服すれば以て仁義を行う」と。
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『管子』輕重甲桓公管子に問いて曰く、「今髙下を調え、并せられたる財を分かち、積聚を散ぜんと欲す。然らずんば、則ち世且に并兼して止む無く、餘りを蓄え羨を藏して息まず、貧賤鰥寡獨老は與りて得ざらん。之を散ずるに道有り、之を分かつに數有りや」と。管子對えて曰く、「唯だ輕重の家のみ能く之を散ずるのみ。請う令を以て輕重の家せしめよ」と。桓公曰く、「諾」と。車五乗を東し、癸乙を周の下原に迎う。桓公四たび問い、因りて癸乙・管子・寗戚と相い與に四たび坐す。桓公曰く、「請う輕重の數を問う」と。癸乙曰く、「重く其の民に籍る者は其の下を失い、數しば諸侯を欺く者は權と與する無し」と。管子肩を差えて問いて曰く、「吾れ吾が民に籍らずんば、何を以て車革を奉ぜん。吾が民に籍らずんば、何を以て鄰國を待たん」と。癸乙曰く、「唯だ好心のみ可なるのみ。夫れ好心なれば則ち萬物通じ、萬物通ずれば則ち萬物運り、萬物運れば則ち萬物賤しく、萬物賤しければ則ち萬物因るべし。萬物の因るべきを知りて因らざる者は、天下に奪わる。天下に奪わるる者は、國の大賊なり」と。