管子 / 輕重甲
桓公問於管子曰:「今欲調髙下,分并財,散積聚。不然,則世且并兼而無止,蓄餘藏羨而不息,貧賤鰥寡獨老不與得焉。散之有道,分之有數乎?」管子對曰:「唯輕重之家為能散之耳。請以令輕重之家。」桓公曰:「諾。」東車五乗,迎癸乙於周下原。桓公問四,因與癸乙、管子、寗戚相與四坐。桓公曰:「請問輕重之數。」癸乙曰:「重籍其民者失其下,數欺諸侯者無權與。」管子差肩而問曰:「吾不籍吾民,何以奉車革?不籍吾民,何以待鄰國?」癸乙曰:「唯好心為可耳。夫好心則萬物通,萬物通則萬物運,萬物運則萬物賤,萬物賤則萬物可因。知萬物之可因而不因者,奪於天下。奪於天下者,國之大賊也。」
新字:桓公問於管子曰:「今欲調高下,分并財,散積聚。不然,則世且并兼而無止,蓄余蔵羨而不息,貧賤鰥寡独老不与得焉。散之有道,分之有数乎?」管子対曰:「唯軽重之家為能散之耳。請以令軽重之家。」桓公曰:「諾。」東車五乗,迎癸乙於周下原。桓公問四,因与癸乙、管子、寗戚相与四坐。桓公曰:「請問軽重之数。」癸乙曰:「重籍其民者失其下,数欺諸侯者無権与。」管子差肩而問曰:「吾不籍吾民,何以奉車革?不籍吾民,何以待鄰国?」癸乙曰:「唯好心為可耳。夫好心則万物通,万物通則万物運,万物運則万物賤,万物賤則万物可因。知万物之可因而不因者,奪於天下。奪於天下者,国之大賊也。」
書き下し
桓公管子に問いて曰く、「今髙下を調え、并せられたる財を分かち、積聚を散ぜんと欲す。然らずんば、則ち世且に并兼して止む無く、餘りを蓄え羨を藏して息まず、貧賤鰥寡獨老は與りて得ざらん。之を散ずるに道有り、之を分かつに數有りや」と。管子對えて曰く、「唯だ輕重の家のみ能く之を散ずるのみ。請う令を以て輕重の家せしめよ」と。桓公曰く、「諾」と。車五乗を東し、癸乙を周の下原に迎う。桓公四たび問い、因りて癸乙・管子・寗戚と相い與に四たび坐す。桓公曰く、「請う輕重の數を問う」と。癸乙曰く、「重く其の民に籍る者は其の下を失い、數しば諸侯を欺く者は權と與する無し」と。管子肩を差えて問いて曰く、「吾れ吾が民に籍らずんば、何を以て車革を奉ぜん。吾が民に籍らずんば、何を以て鄰國を待たん」と。癸乙曰く、「唯だ好心のみ可なるのみ。夫れ好心なれば則ち萬物通じ、萬物通ずれば則ち萬物運り、萬物運れば則ち萬物賤しく、萬物賤しければ則ち萬物因るべし。萬物の因るべきを知りて因らざる者は、天下に奪わる。天下に奪わるる者は、國の大賊なり」と。
現代語訳
桓公が管子に問うた。いま高い安いを整え、抱え込まれた財を分け、積み上がったものを散らしたい。そうしなければ世は併呑をやめず、余りを蓄え貯め込んでやまず、貧しい者、身寄りのない者、老いた者は分け前にあずかれない。散らすのに道はあるか。分けるのに数え方はあるか。管子が答えた。ただ値の上げ下げを扱う家だけがそれを散らせます。令を出してそうさせなさい。桓公は、よし、と言った。車五乗を東へ出し、癸乙を周の下原に迎えた。桓公は四たび問い、癸乙と管子と寗戚とともに四人で座った。桓公が言った。値の上げ下げの数え方について聞きたい。癸乙が言った。重く民から取り立てる者は下を失い、たびたび諸侯を欺く者は組む相手を失います。管子が肩を並べて問うた。私が民から取り立てなければ、何によって車と武具を整えるのか。民から取り立てなければ、何によって隣国に備えるのか。癸乙が言った。ただ好い心だけです。好い心があれば万物は通じ、万物が通じれば万物はめぐり、万物がめぐれば万物は安くなり、万物が安くなれば万物は使える。万物が使えると知りながら使わない者は、天下に奪われる。天下に奪われる者は、国の大きな賊です。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
論語・学而篇有子曰く、「信義に近ければ、言復む可きなり。恭礼に近ければ、恥辱に遠ざかるなり。因りて其の親を失わざれば、亦宗とす可きなり。」
-
説苑・君道成王、唐叔虞と燕居し、梧桐の葉を剪りて以て珪と為し、唐叔虞に授けて曰く、「余此を以て汝に封ぜん」と。唐叔虞喜びて、以て周公に告ぐ。周公以て請いて曰く、「天子虞に封ずるか」と。成王曰く、「余一に虞と戯るるなり」と。周公対えて曰く、「臣之を聞く、天子に戯言無し、言えば則ち史之を書し、工之を誦し、士之を称すと」と。是に於いて遂に唐叔虞を晋に封ず。周公旦善く説くと謂うべし。一たび称して成王言を重んずるを益し、弟を愛するの義を明らかにし、王室を輔くるの固き有り。
-
論語・顔淵篇子貢、政を問う。子曰く、「食を足し、兵を足し、民之を信ず。」子貢曰く、「必ず已むを得ずして去らば、斯の三者に於いて何をか先にせん。」曰く、「兵を去らん。」子貢曰く、「必ず已むを得ずして去らば、斯の二者に於いて何をか先にせん。」曰く、「食を去らん。古より皆死有り、民信無くんば立たず。」
-
呂氏春秋・貴信①凡そ人主は必ず信。信にして又信ならば、誰人か親しまざらん。故に周書に曰く、「允なるかな允なるかな。」以て信に非ざれば、則ち百事滿たざるを言うなり。故に信の功為るや大なり。信立てば則ち虚言以て賞す可し。虚言以て賞す可くんば、則ち六合の內皆己が府為り。信の及ぶ所、盡く之を制す。之を制して用いざれば、人の有なり。之を制して之を用うれば、己の有なり。己、之を有すれば、則ち天地の物畢く用を為す。人主にして此の論を見る有る者は、其の王たること久しからず。人臣にして此の論を知る有る者は、以て王者の佐為る可し。
-
呂氏春秋・貴信②天行信ならざれば、歲を成すこと能わず。地行信ならざれば、草木大ならず。春の德は風、風、信ならざれば、其の華盛ならず。華盛ならざれば、則ち果實生ぜず。夏の德は暑なり。暑、信ならざれば、其の土肥えず。土肥えざれば、則ち長遂精ならず。秋の德は雨なり。雨、信ならざれば、其の穀堅からず。穀堅かざれば、則ち五種成らず。冬の德は寒なり。寒、信ならざれば、其の地剛ならず。地剛ならざれば、則ち凍閉開かず。天地の大、四時の化すら、猶ほ信ならざるを以て物を成すこと能わず。又況んや人事をや。君臣、信ならずんば、則ち百姓誹謗し、社稷寧かならず。官を處くこと信ならずんば、則ち少、長を畏れず、貴賤相輕んず。賞罰信ならずんば、則ち民易しく法を犯して、使令す可からず。交友、信ならずんば、則ち離散鬱怨して、相親しむこと能わず。百工、信ならずんば、則ち器械苦偽して、丹漆染色貞ならず。夫れ與に始めを為す可く、與に終りを為す可く、與に尊通なる可く、與に卑窮なる可き者は、其れ唯だ信か。信にして又信、身に重襲すれば、乃ち轉に通ず。此を以て人を治むれば、則ち膏雨甘露降り、寒暑四時當たらん。
-
論語・学而篇曾子曰く、「吾日に三たび吾が身を省みる。人の為に謀りて忠ならざるか、朋友と交わりて信ならざるか、習わざるを伝えしか。」