管子 / 輕重甲
管子曰:「一農不耕,民或為之饑。一女不織,民或為之寒。故事再其本,則無賣其子者。事三其本,則衣食足。事四其本,則正籍給。事五其本,則逺近通,死得藏。今事不能再其本,而上之求焉無止,是使姦涂不可獨行,遺財不可包止。隨之以法,則是下艾民。食三升,則鄉有正食而盜。食二升,則里有正食而盜。食一升,則家有正食而盜。今操不反之事,而食四十倍之粟,而求民之無失,不可得矣。且君朝令而求夕具,有者出其財,無有者賣其衣屨,農夫糶其五榖三分賈而去。是君朝令一怒,布帛流越而之天下。君求焉而無止,民無以待之,走亡而棲山阜。持戈之士,顧不見親,家族失而不分。民走於中而士遁於外,此不待戰而内敗。」
新字:管子曰:「一農不耕,民或為之饑。一女不織,民或為之寒。故事再其本,則無売其子者。事三其本,則衣食足。事四其本,則正籍給。事五其本,則遠近通,死得蔵。今事不能再其本,而上之求焉無止,是使姦涂不可独行,遺財不可包止。随之以法,則是下艾民。食三升,則鄉有正食而盗。食二升,則里有正食而盗。食一升,則家有正食而盗。今操不反之事,而食四十倍之粟,而求民之無失,不可得矣。且君朝令而求夕具,有者出其財,無有者売其衣屨,農夫糶其五榖三分賈而去。是君朝令一怒,布帛流越而之天下。君求焉而無止,民無以待之,走亡而棲山阜。持戈之士,顧不見親,家族失而不分。民走於中而士遁於外,此不待戦而内敗。」
書き下し
管子曰く、「一農耕さざれば、民或いは之が為に饑う。一女織らざれば、民或いは之が為に寒ゆ。故に事其の本に再すれば、則ち其の子を賣る者無し。事其の本に三すれば、則ち衣食足る。事其の本に四すれば、則ち正籍給る。事其の本に五すれば、則ち逺近通じ、死して藏むるを得。今事其の本に再する能わずして、上の求むること焉に止む無ければ、是れ姦涂をして獨り行くべからざらしめ、遺財をして包み止むべからざらしむ。之に隨うるに法を以てすれば、則ち是れ下民を艾るなり。三升を食らえば、則ち鄉に正食有りて盜む。二升を食らえば、則ち里に正食有りて盜む。一升を食らえば、則ち家に正食有りて盜む。今反らざるの事を操りて、四十倍の粟を食らい、而して民の失う無きを求むるは、得べからざるなり。且つ君朝に令して夕べに具うるを求むれば、有る者は其の財を出だし、有る無き者は其の衣屨を賣り、農夫は其の五榖を糶ること三分の賈にして去る。是れ君朝に令して一たび怒れば、布帛は流越して天下に之く。君求めて止む無く、民以て之を待つ無ければ、走亡して山阜に棲む。戈を持するの士も、顧みて親を見ず、家族失いて分かれず。民は中に走り士は外に遁る、此れ戰いを待たずして内に敗るるなり」と。
現代語訳
管子が言った。一人の農夫が耕さなければ、そのぶん飢える者が出る。一人の女が織らなければ、そのぶん凍える者が出る。だから仕事の実りが元手の二倍になれば、子を売る者はいなくなる。三倍になれば衣食が足りる。四倍になれば正規の割り当てが賄える。五倍になれば遠近が通じ、死者を葬ることができる。いま実りが元手の二倍にも届かないのに、上の求めが止まらなければ、よこしまな道を一人で歩くわけにもいかず、残った財を抱えておくこともできない。そこへ法を振り下ろせば、下の民を刈り取ることになる。三升食べられるうちは、郷のなかに正規の食があっても盗みが起きる。二升になれば里のなかで盗みが起きる。一升になれば家のなかで盗みが起きる。いま元に戻らない事を握って四十倍の粟を食べながら、民に失うものがないようにと求めるのは、できない相談です。そのうえ君が朝に令して夕方までに揃えよと求めれば、持つ者は財を出し、持たない者は衣や履物を売り、農夫は五穀を三分の一の値で売り払って去る。君が朝に令して一度怒れば、布や絹は流れ出て天下へ行く。君の求めが止まらず、民にそれを待ち受ける力がなければ、逃げ出して山に棲む。戈を持つ兵も、振り返れば親の姿がなく、家族は散り散りで分けようもない。民は内で走り、士は外へ逃げる。これは戦うのを待たずに内側から敗れることです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『管子』揆度上農は五を挾み、中農は四を挾み、下農は三を挾む。上女は五を衣し、中女は四を衣し、下女は三を衣す。農に常業有り、女に常事有り。一農耕さざれば、民に之が為に饑うる者有り。一女織らざれば、民に之が為に寒ゆる者有り。饑寒凍餓は、必ず糞土に起こる、故に先王は其の始めに謹む。事其の本に再すれば、民の無き者は其の子を賣る。其の本に三すれば、食を為すが若し。其の本に四すれば、則ち鄉里給る。其の本に五すれば、則ち逺近通ず、然る後に死得たり。事其の本に再する能わずして、上の求むること焉に止む無くんば、然らば則ち姦涂は獨り遵るべからず、貨財は拘に安んぜず、之に隨うるに法を以てすれば、則ち中内民を摲るなり。輕重調わざれば、無きの民は理を責むべからず、子を鬻ぐも使うを得べからず、君は其の民を失い、父は其の子を失う、亡國の數なり。
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『管子』治國凡そ農なる者は、月に足らずして歲に餘り有る者なり。而るに上の徵暴急にして時無ければ、則ち民は倍貸して以て上の徵に給す。耕耨する者に時有りて、澤必ずしも足らざれば、則ち民は倍貸して以て庸を取る。秋に糴るに五を以てし、春に糶るに束を以てす、是れ又た倍貸なり。故に上の徵を以て民より倍取する者四つ。關市の租、府庫の徵、粟の什一、厮輿の事、此の四時も亦た當に一倍貸すべし。夫れ一民を以て四主を養う、故に逃徙する者を刑するも、上止むる能わざるは、粟少なくして民に積む無ければなり。常山の東、河・汝の間は、蚤く生じて晚く殺す、五榖の蕃り孰する所なり。四たび種えて五たび穫れ、中年は畝ごとに二石、一夫にして粟二百石を為す。今や倉廩虛しくして民に積む無く、農夫子を粥ぐ者有るは、上に之を均しくするの術無ければなり。
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『管子』輕重甲管子曰く、「今國を為め地を有ちて民を牧う者は、務めは四時に在り、守りは倉廩に在り。國に財多ければ則ち逺き者來たり、地辟け舉がれば則ち民留まり處り、倉廩實つれば則ち禮節を知り、衣食足れば則ち榮辱を知る。今君躬ら犂もて田を墾き、耕して草土を發き、其の榖を得たり、民人の食、人ごとに若干の步畆の數有り、然り而して衢閭に餓餒する者有るは何ぞや。榖に藏する所有ればなり。今君錢を鑄て幣を立て、民通移し、人ごとに百十の數有り、然り而して民に子を賣る者有るは何ぞや。財に并す所有ればなり。故に人君と為りて積聚を散じ、髙下を調え、并せられたる財を分かつ能わざれば、君本を彊め耕を趣し、草を發き幣を立てて止む無しと雖も、民は猶お足らざるが若きなり」と。
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『管子』輕重乙桓公曰く、「壤數は此に盡くるか」と。管子對えて曰く、「未だし。昔狄諸侯は、畆鍾の國なり、故に粟十鍾にして錙金なり。程諸侯は、山諸侯の國なり、故に粟五釜にして錙金なり。故に狄諸侯は十鍾にして㦸を倳つるを得ず、程諸侯は五釜にして㦸を倳つるを得たり。十倍にして足らず、或いは五分にして餘り有る者は、輕重髙下の數に通ずればなり。國に十歳の蓄え有るも、民の食足らざる者は、皆な其の事業を以て君の祿を望めばなり。君に山海の財有るも、民の用足らざる者は、皆な其の事業を以て上に交接すればなり。故に租籍は、君の宜しく得べき所なり。正籍は、君の彊いて求むる所なり。亡君は其の宜しく得べき所を廢して、其の彊いて求むる所を斂む、故に下は上を怨みて令行われず。民は、之を奪えば則ち怒り、之に予うれば則ち喜ぶ。民情固より然り。先王は其の然るを知る、故に予うるの所を見わして、奪うの理を見わさず。故に五榖粟米なる者は、民の司命なり。黄金刀布なる者は、民の通貨なり。先王善く其の通貨を制して、以て其の司命を御す、故に民力盡くすべきなり」と。
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『管子』輕重甲故に君請う縞素して士室に就き、功臣世家、封を遷し邑に食む者、餘りを積み羨を藏し跱蓄する家に朝して、曰わん、『城脆ければ衝を致し、委無ければ圍を致す。天下に慮り有るも、齊獨り其の謀に與らず。子大夫の五榖菽粟有る者は、敢えて左右する勿かれ、請う平賈を以て之を子より取らん』と。之と其の劵契の齒を定む。金鏂の數は、侈弇を為すを得ざらしむ。困窮の民、聞きて之を糴えば、釜鏂止まる無く、逺通推さず、國粟の賈は坐ながらに長じて四十倍す。君四十倍の粟を出だし、以て孤寡を振い、貧病を牧い、獨老窮して子無き者を視て、相い鬻ぐを得ずして之を養い、溝澮の中に赴かしむる勿かれ。此くの若くんば、則ち士は爭いて前み戰いて顔行と為り、偷まずして用を為し、死せるを輿し傷つけるを扶く、死する者半ばを過ぐ。此れ何の故ぞや。士は戰いを好みて死を輕んずるに非ず、輕重の分の然らしむるなり」と。
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『管子』重令菽粟足らず、末生禁ぜられざれば、民必ず飢餓の色有り、而して工は雕文刻鏤を以て相稺る、之を逆と謂う。布帛足らず、衣服に度毋ければ、民必ず凍寒の傷有り、而して女は美衣錦繡綦組を以て相稺る、之を逆と謂う。萬乘藏兵の國、卒野戰して敵に應ずる能わざれば、社稷必ず危亡の患有り、而して士は分役無きを以て相稺る、之を逆と謂う。人に爵するに能を論ぜず、人に禄するに功を論ぜざれば、則ち士は制を行い節に死する為す無く、而して羣臣は必ず外に通じて請謁し、權を取り道を行い、便辟に事え、貴富を以て榮華と為して以て相稺る、之を逆と謂う。