管子 / 治國
凡農者,月不足而嵗有餘者也。而上徵暴急無時,則民倍貸以給上之徵矣。耕耨者有時,而澤不必足,則民倍貸以取庸矣。秋糴以五,春糶以束,是又倍貸也。故以上之徵而倍取於民者四。關市之租,府庫之徵,粟什一,厮輿之事,此四時亦當一倍貸矣。夫以一民養四主,故逃徙者刑,而上不能止者,粟少而民無積也。常山之東,河、汝之間,蚤生而晚殺,五榖之所蕃孰也。四種而五穫,中年畝二石,一夫為粟二百石。今也倉廩虛而民無積,農夫以粥子者,上無術以均之也。
新字:凡農者,月不足而歳有余者也。而上徴暴急無時,則民倍貸以給上之徴矣。耕耨者有時,而沢不必足,則民倍貸以取庸矣。秋糴以五,春糶以束,是又倍貸也。故以上之徴而倍取於民者四。関市之租,府庫之徴,粟什一,厮輿之事,此四時亦当一倍貸矣。夫以一民養四主,故逃徙者刑,而上不能止者,粟少而民無積也。常山之東,河、汝之間,蚤生而晩殺,五榖之所蕃孰也。四種而五穫,中年畝二石,一夫為粟二百石。今也倉廩虚而民無積,農夫以粥子者,上無術以均之也。
書き下し
凡そ農なる者は、月に足らずして歲に餘り有る者なり。而るに上の徵暴急にして時無ければ、則ち民は倍貸して以て上の徵に給す。耕耨する者に時有りて、澤必ずしも足らざれば、則ち民は倍貸して以て庸を取る。秋に糴るに五を以てし、春に糶るに束を以てす、是れ又た倍貸なり。故に上の徵を以て民より倍取する者四つ。關市の租、府庫の徵、粟の什一、厮輿の事、此の四時も亦た當に一倍貸すべし。夫れ一民を以て四主を養う、故に逃徙する者を刑するも、上止むる能わざるは、粟少なくして民に積む無ければなり。常山の東、河・汝の間は、蚤く生じて晚く殺す、五榖の蕃り孰する所なり。四たび種えて五たび穫れ、中年は畝ごとに二石、一夫にして粟二百石を為す。今や倉廩虛しくして民に積む無く、農夫子を粥ぐ者有るは、上に之を均しくするの術無ければなり。
現代語訳
農というものは、月ごとには足りず、年で見れば余りが出るものである。ところが上の取り立てが急で時を選ばなければ、民は倍の利で借りて上の取り立てに応じる。耕しと草取りには時があり、うるおいが必ずしも足りなければ、民は倍の利で借りて人を雇う。秋に五で買い入れ、春に束で売り出す。これもまた倍の利である。だから上の取り立てによって民から倍取りする筋が四つある。関所と市の税、倉の取り立て、穀物の十分の一、雑役。この四つの時にもまた倍の利がかかる。一人の民で四人の主を養うことになる。だから逃げ出す者を罰しても上が止められないのは、穀物が少なく民に蓄えがないからである。常山の東、黄河と汝水のあいだは、早く芽生えて遅く枯れる、五穀のよく実る土地である。四度種えて五度収穫し、並の年でも一畝あたり二石、一人で二百石の穀物を作る。それなのにいま倉は空で民に蓄えがなく、農夫が子を売る者まで出るのは、上にそれを均す術がないからである。
解説
この章句が説くこと
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『管子』輕重甲管子曰く、「一農耕さざれば、民或いは之が為に饑う。一女織らざれば、民或いは之が為に寒ゆ。故に事其の本に再すれば、則ち其の子を賣る者無し。事其の本に三すれば、則ち衣食足る。事其の本に四すれば、則ち正籍給る。事其の本に五すれば、則ち逺近通じ、死して藏むるを得。今事其の本に再する能わずして、上の求むること焉に止む無ければ、是れ姦涂をして獨り行くべからざらしめ、遺財をして包み止むべからざらしむ。之に隨うるに法を以てすれば、則ち是れ下民を艾るなり。三升を食らえば、則ち鄉に正食有りて盜む。二升を食らえば、則ち里に正食有りて盜む。一升を食らえば、則ち家に正食有りて盜む。今反らざるの事を操りて、四十倍の粟を食らい、而して民の失う無きを求むるは、得べからざるなり。且つ君朝に令して夕べに具うるを求むれば、有る者は其の財を出だし、有る無き者は其の衣屨を賣り、農夫は其の五榖を糶ること三分の賈にして去る。是れ君朝に令して一たび怒れば、布帛は流越して天下に之く。君求めて止む無く、民以て之を待つ無ければ、走亡して山阜に棲む。戈を持するの士も、顧みて親を見ず、家族失いて分かれず。民は中に走り士は外に遁る、此れ戰いを待たずして内に敗るるなり」と。
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『管子』揆度上農は五を挾み、中農は四を挾み、下農は三を挾む。上女は五を衣し、中女は四を衣し、下女は三を衣す。農に常業有り、女に常事有り。一農耕さざれば、民に之が為に饑うる者有り。一女織らざれば、民に之が為に寒ゆる者有り。饑寒凍餓は、必ず糞土に起こる、故に先王は其の始めに謹む。事其の本に再すれば、民の無き者は其の子を賣る。其の本に三すれば、食を為すが若し。其の本に四すれば、則ち鄉里給る。其の本に五すれば、則ち逺近通ず、然る後に死得たり。事其の本に再する能わずして、上の求むること焉に止む無くんば、然らば則ち姦涂は獨り遵るべからず、貨財は拘に安んぜず、之に隨うるに法を以てすれば、則ち中内民を摲るなり。輕重調わざれば、無きの民は理を責むべからず、子を鬻ぐも使うを得べからず、君は其の民を失い、父は其の子を失う、亡國の數なり。
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『管子』國蓄凡そ五榖なる者は、萬物の主なり。榖貴ければ則ち萬物必ず賤し、榖賤ければ則ち萬物必ず貴し。兩者敵を為せば、則ち俱には平らかならず。故に人君は榖物の秩の相い勝つを御して、事を其の平らかならざるの間に操る。故に萬民籍無くして、國利君に歸するなり。夫れ室廡を以て籍するは、之を成れるを毁つと謂う。六畜を以て籍するは、之を生を止むと謂う。田畆を以て籍するは、之を耕を禁ずと謂う。正人を以て籍するは、之を情を離ると謂う。正戸を以て籍するは、之を贏を養うと謂う。五つの者は畢くは用うべからず、故に王者は徧く行いて盡くさざるなり。故に天子は幣に籍し、諸侯は食に籍す。中歳の榖の糶は石に十錢。大男は四石を食らえば、月に四十の籍有り。大女は三石を食らえば、月に三十の籍有り。吾子は二石を食らえば、月に二十の籍有り。歳凶にして榖貴く、糴は石に二十錢なれば、則ち大男に八十の籍有り、大女に六十の籍有り、吾子に四十の籍有り。是れ人君は號令を發して穡を收めて戸ごとに籍するに非ざるなり。彼れ人君は其の本委を守ること謹みて、男女諸君吾子は籍に服せざる者無きなり。
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『管子』輕重甲管子曰く、「今國を為め地を有ちて民を牧う者は、務めは四時に在り、守りは倉廩に在り。國に財多ければ則ち逺き者來たり、地辟け舉がれば則ち民留まり處り、倉廩實つれば則ち禮節を知り、衣食足れば則ち榮辱を知る。今君躬ら犂もて田を墾き、耕して草土を發き、其の榖を得たり、民人の食、人ごとに若干の步畆の數有り、然り而して衢閭に餓餒する者有るは何ぞや。榖に藏する所有ればなり。今君錢を鑄て幣を立て、民通移し、人ごとに百十の數有り、然り而して民に子を賣る者有るは何ぞや。財に并す所有ればなり。故に人君と為りて積聚を散じ、髙下を調え、并せられたる財を分かつ能わざれば、君本を彊め耕を趣し、草を發き幣を立てて止む無しと雖も、民は猶お足らざるが若きなり」と。
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『管子』禁藏夫れ法の民を制するや、猶お陶の埴に於ける、冶の金に於けるがごときなり。故に利害の在る所を審らかにすれば、民の去就は、火の燥濕に於ける、水の髙下に於けるが如し。夫れ民の生くる所は、衣と食となり。食の生ずる所は、水と土となり。民を富ます所以に要有り、民を食わすに率有り。率は三十畝にして卒歳に足る。歳は美惡を兼ね、畝ごとに一石を取れば、則ち人に三十石有り。果蓏素食は十石に當たり、糠粃六畜は十石に當たれば、則ち人に五十石有り。布帛麻絲、旁入の奇利は、未だ其の中に在らざるなり。故に國に餘藏有り、民に餘食有り。夫れ叙鈞なる者は、多寡する所以なり。權衡なる者は、輕重を視る所以なり。戸籍田結なる者は、貧富の訾らざるを知る所以なり。故に善き者は必ず先ず其の田を知り、乃ち其の人を知る。田備わりて然る後に民足る可きなり。
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『管子』治國凡そ國を為むるの急なる者は、必ず先ず末作文巧を禁ず。末作文巧禁ぜらるれば、則ち民に游食する所無し。民に游食する所無ければ、則ち必ず農す。民農を事とすれば則ち田墾かれ、田墾かるれば則ち粟多く、粟多ければ則ち國富み、國富める者は兵彊く、兵彊き者は戰い勝ち、戰い勝つ者は地廣し。是を以て先王は民を衆くし、兵を彊くし、地を廣くし、國を富ますは必ず粟より生ずるを知る、故に末作を禁じ、奇巧を止めて、農事を利す。今末作奇巧を為す者は、一日作りて五日食う。農夫は歲を終うるの作、以て自ら食するに足らざるなり。然らば則ち民は本事を舍てて末作を事とす。本事を舍てて末作を事とすれば、則ち田荒れて國貧しきなり。