管子 / 輕重甲
故君請縞素而就士室,朝功臣世家,遷封食邑,積餘藏羨跱蓄之家,曰:『城脆致衝,無委致圍。天下有慮,齊獨不與其謀。子大夫有五榖菽粟者,勿敢左右,請以平賈取之子。』與之定其劵契之齒。金鏂之數,不得為侈弇焉。困窮之民,聞而糴之,釜鏂無止,逺通不推,國粟之賈坐長而四十倍。君出四十倍之粟,以振孤寡,牧貧病,視獨老窮而無子者,靡得相鬻而養之,勿使赴於溝澮之中。若此,則士爭前戰為顔行,不偷而為用,輿死扶傷,死者過半。此何故也?士非好戰而輕死,輕重之分使然也。」
新字:故君請縞素而就士室,朝功臣世家,遷封食邑,積余蔵羨跱蓄之家,曰:『城脆致衝,無委致囲。天下有慮,斉独不与其謀。子大夫有五穀菽粟者,勿敢左右,請以平賈取之子。』与之定其劵契之歯。金鏂之数,不得為侈弇焉。困窮之民,聞而糴之,釜鏂無止,遠通不推,国粟之賈坐長而四十倍。君出四十倍之粟,以振孤寡,牧貧病,視独老窮而無子者,靡得相鬻而養之,勿使赴於溝澮之中。若此,則士争前戦為顔行,不偸而為用,輿死扶傷,死者過半。此何故也?士非好戦而軽死,軽重之分使然也。」
書き下し
故に君請う縞素して士室に就き、功臣世家、封を遷し邑に食む者、餘りを積み羨を藏し跱蓄する家に朝して、曰わん、『城脆ければ衝を致し、委無ければ圍を致す。天下に慮り有るも、齊獨り其の謀に與らず。子大夫の五榖菽粟有る者は、敢えて左右する勿かれ、請う平賈を以て之を子より取らん』と。之と其の劵契の齒を定む。金鏂の數は、侈弇を為すを得ざらしむ。困窮の民、聞きて之を糴えば、釜鏂止まる無く、逺通推さず、國粟の賈は坐ながらに長じて四十倍す。君四十倍の粟を出だし、以て孤寡を振い、貧病を牧い、獨老窮して子無き者を視て、相い鬻ぐを得ずして之を養い、溝澮の中に赴かしむる勿かれ。此くの若くんば、則ち士は爭いて前み戰いて顔行と為り、偷まずして用を為し、死せるを輿し傷つけるを扶く、死する者半ばを過ぐ。此れ何の故ぞや。士は戰いを好みて死を輕んずるに非ず、輕重の分の然らしむるなり」と。
現代語訳
そこで君は白い喪服を着て士の詰所へ出向き、功臣の家、土地を移して邑に食む者、余りを積み蓄えを抱える家に出向いてこう言いなさい。城がもろければ攻め手を招き、蓄えがなければ包囲を招く。天下は謀をめぐらせているのに、斉だけがその謀に加わっていない。大夫のうち五穀や豆や粟を持つ者は、勝手に動かしてはならない。並の値でそれをあなたから買い取りたい、と。そのうえで証文の割り印を定める。量目の数は、多くも少なくもごまかせないようにする。困窮した民がそれを聞いて買いに走れば、釜も斗も止まらず、遠くまで手が回らなくなり、国の粟の値は座ったまま四十倍になる。君はその四十倍の粟を放って、みなしごや寡婦を救い、貧しい者や病んだ者を養い、身寄りのない老人で子のない者を見て、互いに売り合わずにすむように養い、溝や谷に落ちるようなことをさせない。こうすれば士は先を争って前へ出て、戦って先陣となり、手を抜かずに働き、死者を運び傷ついた者を支える。死ぬ者は半ばを超える。これはなぜか。士が戦いを好んで死を軽んじるからではない。値の配られ方がそうさせているのである。
解説
この章句が説くこと
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啓発録・振氣此気は生ある者にはみなある者にて、禽獣にさへこれありて、禽獣にても甚しく気の立たる時は、人を害し人を苦しむことありまして、人に於てをや。人の中にても士は一番此気強く有之故、世俗にこれを士気と唱へ、いかほど年若な者にても両刀を帯したる者に不礼を不致は、此士気に畏れ候事にて、其人の武芸や力量や位職のみに畏れ候にてはこれなし。
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『呻吟語』外篇・品藻・士氣と傲氣士氣は無かる可からず、傲氣は有る可からず。士氣なる者は、人己の分に明らかにして、正を守りて詭隨せず。傲氣なる者は、上下の等に昧くして、高きを好みて位に素せず。自ら處する者は每に人に傲るを以て士氣と為し、人を觀る者は每に士氣を以て人に傲ると為す。悲しいかな。故に惟だ士氣有る者のみ能く己を謙りて人に下る。
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司馬法・用眾親に書するを絶つ、是れを顧みるを絶つの慮と謂う。
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孫子・作戦篇故に智将は敵に食するを務む。敵に食する一鍾は、吾が二十鍾に当たり、萁稈一石は、吾が二十石に当たる。
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尉繚子・兵教下今戦国相攻め、大いに有徳を伐つ。伍よりして両、両よりして師、其の令を一にせず、率ね民心をして定まらざらしめ、徒らに驕侈を尚び、謀患辨訟し、吏其の事を究め、累ねて且に敗れんとす。日暮れ路遠く、還るに剉気有り、師老い将貪り、争掠して敗れ易し。凡そ将軽く、塁卑く、衆動けば、攻むべきなり。将重く、塁高く、衆懼るれば、囲むべきなり。凡そ囲むには必ず其の小利を開き、漸く夷弱ならしむれば、則ち節吝して食はざる者有り。衆夜撃つ者は、驚くなり。衆事を避くる者は、離るるなり。人の救を待ち、戦を期して蹙まるは、皆心失はれて気傷るるなり。気を傷れば軍を敗り、曲謀は国を敗る。
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『講孟余話』萬章下 第七章此の章、官職ある者の君命に趨くと、庶人敢へて諸侯に見えざると、義自ら別なるを論ず。但し方今官職ある者の君命に趨かざるを患へず、庶人敢へて諸侯に見えざるの風、断えてなきこと、廉恥なきの世間、深く憂ふべし。古人も忠臣を求むるは孝子の門に於てす、事に臨み節に死するの士を求むるは、平時直言の士に於てすべしと云へば、士気を培養するは、兎角平素に在ることなり。平素廉恥なきの極、一旦変起こることあらば、万官奔竄、鳥栖を択ぶに至ること、鏡に掛けて見るが如し。是れ憂ふべしとする所以なり。是を憂へば他なし、千乗の国の士に事ふるの故事を修むるに若かず。是れ久遠の謀なり。

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