管子 / 輕重甲
桓公曰:「此若言何謂也?」管子對曰:「山林菹澤草萊者,薪蒸之所出,犧牲之所起也。故使民求之,使民藉之,因以給之。私愛之於民,若弟之與兄,子之與父也,然後可以通財交殷也。故請取君之游財,而邑里布積之。陽春,蠶桑且至,請以給其口食□曲之彊。若此,則絓絲之籍去分而斂矣。且四方之不至,六時制之。春日倳耜,次日獲麥,次日薄芋次日樹麻,次日絶菹,次日大雨且至,趣芸壅培。六時制之,臣給至於國都。善者鄉因其輕重,守其委廬,故事至而不妄,然後可以立為天下王。」
新字:桓公曰:「此若言何謂也?」管子対曰:「山林菹沢草萊者,薪蒸之所出,犠牲之所起也。故使民求之,使民藉之,因以給之。私愛之於民,若弟之与兄,子之与父也,然後可以通財交殷也。故請取君之游財,而邑里布積之。陽春,蠶桑且至,請以給其口食□曲之彊。若此,則絓糸之籍去分而斂矣。且四方之不至,六時制之。春日倳耜,次日獲麦,次日薄芋次日樹麻,次日絶菹,次日大雨且至,趣芸壅培。六時制之,臣給至於国都。善者鄉因其軽重,守其委廬,故事至而不妄,然後可以立為天下王。」
書き下し
桓公曰く、「此の若き言は何の謂いぞや」と。管子對えて曰く、「山林菹澤草萊なる者は、薪蒸の出づる所、犧牲の起こる所なり。故に民をして之を求めしめ、民をして之を藉らしめ、因りて以て之に給す。私かに之を民に愛すること、弟の兄に與けるが若く、子の父に與けるがごとし、然る後に以て財を通じ殷を交うべきなり。故に請う君の游財を取りて、邑里に之を布積せん。陽春、蠶桑且に至らんとす、請う以て其の口食曲の彊に給せん。此くの若くんば、則ち絓絲の籍は分を去りて斂まらん。且つ四方の至らざるは、六時之を制す。春日には耜を倳て、次日には麥を獲り、次日には芋を薄し、次日には麻を樹え、次日には菹を絶ち、次日には大雨且に至らんとして、芸壅培を趣す。六時之を制すれば、臣給して國都に至る。善き者は鄉ごとに其の輕重に因り、其の委廬を守る、故に事至りて妄ならず、然る後に以て立ちて天下の王と為るべし」と。
現代語訳
桓公が言った。その言葉はどういう意味か。管子が答えた。山林や沢や草地は、薪の出るところ、供え物の生まれるところです。だから民にそれを求めさせ、民にそれを取らせ、それによって養う。ひそかに民を慈しむことは、弟が兄に向かうよう、子が父に向かうようである。そうしてはじめて財を通わせ豊かさを交わすことができます。だから君の手元に遊んでいる財を取って、邑や里に配り積んでおきましょう。春になり養蚕の季節が来ようとしています。それをもって口を養う分や道具の入用にあてる。こうすれば生糸への取り立ては半分に減ります。四方の手が回らないところは、六つの時期によって整える。春の日には鋤を立て、次には麦を刈り、次には芋を植え、次には麻を植え、次には草を刈り、次には大雨が来ようとするので土寄せを急がせる。六つの時期でこれを整えれば、臣は行き届かせて都まで届く。うまくやる者は郷ごとに値の上下に応じ、その蓄えの小屋を守る。だから事が来ても慌てない。そうしてはじめて立って天下の王となれるのです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『管子』輕重甲管子曰く、「今國を為め地を有ちて民を牧う者は、務めは四時に在り、守りは倉廩に在り。國に財多ければ則ち逺き者來たり、地辟け舉がれば則ち民留まり處り、倉廩實つれば則ち禮節を知り、衣食足れば則ち榮辱を知る。今君躬ら犂もて田を墾き、耕して草土を發き、其の榖を得たり、民人の食、人ごとに若干の步畆の數有り、然り而して衢閭に餓餒する者有るは何ぞや。榖に藏する所有ればなり。今君錢を鑄て幣を立て、民通移し、人ごとに百十の數有り、然り而して民に子を賣る者有るは何ぞや。財に并す所有ればなり。故に人君と為りて積聚を散じ、髙下を調え、并せられたる財を分かつ能わざれば、君本を彊め耕を趣し、草を發き幣を立てて止む無しと雖も、民は猶お足らざるが若きなり」と。
-
『管子』山至數桓公又た管子に問いて曰く、「身を終うるまで天下を有ちて失う勿からんとするに、之を為すに道有りや」と。管子對えて曰く、「請う天下に施す勿かれ、獨り之を吾が國に施せ」と。桓公曰く、「此の若き言は何の謂いぞや」と。管子對えて曰く、「國の廣狹、壤の肥墝に數有り、歳を終うるまでの食の餘りに數有り、彼の國を守る者は、榖を守るのみ」と。曰く、「某の縣の壤の廣きこと若干、某の縣の壤の狹きこと若干、則ち必ず委幣を積み、是に於て縣州里は公錢を受く。泰秋、國榖は三分の一を去る、君令を下し、郡縣屬大夫里邑に謂いて皆な粟を籍りて入るること若干とす。榖の重は一なるも、以て上に藏する者、國榖三分すれば、則ち二分は上に在り。泰春、國榖の倍重するは、數なり。泰夏、榖を賦するに市の櫎を以てし、民は皆な上の榖を受けて以て田土を治む。泰秋、田榖の存予する者若干、今上榖を歛むるに幣を以てすれば、民は幣無しと曰いて榖を以てす、則ち民の三は上に歸する有り。重の相い因り、時の化舉するは、國筴と為さざる無し。
-
『管子』輕重乙桓公曰く、「事を行うこと奈何」と。管子對えて曰く、「請う令を以て師を發し屯を置き農に籍らんとし、十鍾の家は行かず、百鍾の家は行かず、千鍾の家は行かずとせよ。行く者は百の一、千の十に能わずして、囷窌の數は皆な上に見わる。君囷窌の數を案じ、之に令して曰く、『國貧しくして用足らず、請う平價を以て之を子より取らん』と、皆な囷窌に案じて挹損する能わず。君幣の輕重を直して以て其の數を決し、劵契の責無からしむれば、則ち積み藏する囷窌の粟は皆な君に歸せん。故に九州に敵無く、竟上に患い無し」と。令して曰く、「師を罷めて農に歸れ、之を用うる所無し」と。管子曰く、「天下に兵有らば、則ち積藏の粟は以て其の糧に備うるに足る。天下に兵無くんば、則ち以て貧甿に賜う。此くの若くんば、則ち菹菜鹹鹵斥澤山間の㙗の壤も草を發せざる無し。此れを之れ號令に籍ると謂う」と。
-
『管子』地數桓公管子に問いて曰く、「今も亦た以て此を行うべきか」と。管子對えて曰く、「可なり。夫れ楚に汝・漢の金有り、齊に渠展の鹽有り、燕に遼東の煑有り。此の三つの者も、亦た以て武王の數に當つべし。十口の家は、十人鹽を咶む。百口の家は、百人鹽を咶む。凡そ鹽を食らうの數、一月に丈夫は五升と少半、婦人は三升と少半、嬰兒は二升と少半。鹽の重は、升に分耗を加えて釜に五十、升に一耗を加えて釜に百、升に十耗を加えて釜に千。君菹薪を伐り、泲水を煑て鹽と為し、正して之を積むこと三萬鍾。陽春に至らば、請う時に籍らん」と。桓公曰く、「何をか時に籍ると謂う」と。管子曰く、「陽春農事方に作る、民をして垣牆を築くを得る毋からしめ、冡墓を繕うを得る毋からしむ。丈夫は宫室を治むるを得る毋く、臺榭を立つるを得る毋し。北海の衆は庸を聚めて鹽を煑るを得る毋し。然らば、鹽の賈は必ず四十倍せん。君四十の賈を以て、河・濟の流を修め、南のかた梁・趙・宋・衛・濮陽に輸す。惡食にして鹽無ければ則ち腫る。守圉の本は、其の鹽を用うること獨り重し。君菹薪を伐り、泲水を煑て以て天下に籍らば、然らば則ち天下は減ぜざらん」と。
-
『管子』山國軌桓公管子に問いて曰く、「籍らずして國を贍すに、之を為すに道有りや」と。管子對えて曰く、「軌もて其の時を守り、天財を官する有らば、何ぞ民に求めん」と。桓公曰く、「何をか天財を官すと謂う」と。管子對えて曰く、「泰春は、民の功䌛なり。泰夏は、民の令の止まる所、令の發する所なり。泰秋は、民の令の止まる所、令の發する所なり。泰冬は、民の令の止まる所、令の發する所なり。此れ皆な民の時を以て守る所なり。此れ物の髙下の時なり。此れ民の相い并兼する所以の時なり。君は諸を四務に守る」と。
-
『管子』國準桓公曰く、「今時に當たるの王者は、何を立てて可ならん」と。管子對えて曰く、「請う五家を兼ね用いて盡くす勿かれ」と。桓公曰く、「何の謂いぞ」と。管子對えて曰く、「祈祥を立てて以て山澤を固くし、械器を立てて以て萬物を使い、天下皆な利して謹んで重筴を操り、山を童にし澤を竭くし、利を益し流れを搏ち、山金を出だして幣を立て、菹丘を存し、駢牢を立てて、以て民の饒と為す。彼の菹菜の壤は、五榖の生ずる所に非ざるなり、麋鹿牛馬の地なり、春秋に生を賦し老を殺し、施を立てて以て五榖を守る。此れ無用の壤を以て民の羸を臧するなり、五家の數は皆な用いて盡くす勿かれ」と。