管子 / 揆度
桓公問於管子曰:「請問大準。」管子對曰:「大準者,天下皆制我而無我焉,此謂大準。」桓公曰:「何謂也?」管子對曰:「今天下起兵加我,臣之能謀厲國定名者,割壤而封;臣之能以車兵進退成功立名者,割壤而封。然則是天下盡封君之臣也,非君封之也。天下已封君之臣十里矣,天下每動,重封君之民二十里。君之民非富也,鄰國富之。鄰國每動,重富君之民。貧者重貧,富者重富,大凖之數也。」
新字:桓公問於管子曰:「請問大準。」管子対曰:「大準者,天下皆制我而無我焉,此謂大準。」桓公曰:「何謂也?」管子対曰:「今天下起兵加我,臣之能謀厲国定名者,割壤而封;臣之能以車兵進退成功立名者,割壤而封。然則是天下尽封君之臣也,非君封之也。天下已封君之臣十里矣,天下毎動,重封君之民二十里。君之民非富也,鄰国富之。鄰国毎動,重富君之民。貧者重貧,富者重富,大凖之数也。」
書き下し
桓公管子に問いて曰く、「請う大準を問う」と。管子對えて曰く、「大準なる者は、天下皆な我を制して我無し、此れを大準と謂う」と。桓公曰く、「何の謂いぞや」と。管子對えて曰く、「今天下兵を起こして我に加う、臣の能く謀を厲まし國を定めて名づくる者は、壤を割きて封ず。臣の能く車兵を以て進退し功を成し名を立つる者は、壤を割きて封ず。然らば則ち是れ天下盡く君の臣を封ずるなり、君之を封ずるに非ざるなり。天下已に君の臣を封ずること十里なれば、天下動く每に、重ねて君の民を封ずること二十里なり。君の民の富めるに非ざるなり、鄰國之を富ますなり。鄰國動く每に、重ねて君の民を富ます。貧しき者は重ねて貧しく、富める者は重ねて富む、大凖の數なり」と。
現代語訳
桓公が管子に問うた。大きな水準について聞きたい。管子が答えた。大きな水準とは、天下がみな私を制していて、私というものがない状態です。これを大きな水準といいます。桓公が言った。どういうことか。管子が答えた。いま天下が兵を起こして我が国に攻めてくる。臣のなかで謀をめぐらせ国を安んじて名を成した者には、土地を割いて封じる。車と兵をもって進み退き功を成し名を立てた者にも、土地を割いて封じる。とすればこれは、天下が君の臣を封じているのであって、君が封じているのではありません。天下がすでに君の臣を十里封じたなら、天下が動くたびに、重ねて君の民を二十里封じることになる。君の民が富んでいるのではなく、隣国が富ませているのです。隣国が動くたびに、重ねて君の民を富ませる。貧しい者は重ねて貧しく、富む者は重ねて富む。これが大きな水準の数え方です。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『管子』山權數桓公管子に問いて曰く、「請う國制を問う」と。管子對えて曰く、「國に制無く、地に量有り」と。桓公曰く、「何をか國に制無く、地に量有りと謂う」と。管子對えて曰く、「髙田は十石、間田は五石、庸田は三石、其の餘は皆な諸を荒田に屬す。地の量は百畆にして一夫の力なり。粟の賈は一、粟の賈は十、粟の賈は三十、粟の賈は百。其の流筴に在る者は、百畆にして中千畆の筴に從うなり。然らば則ち百乗は千乗に從い、千乗は萬乗に從うなり。故に地に量無ければ、國に筴無し」と。桓公曰く、「善し」と。「今大國と為らんと欲し、大國は天下と為らんと欲するに、權筴に通ぜざれば、其れ能くする者無からんかな」と。桓公曰く、「今權を行うこと奈何」と。管子對えて曰く、「君廣狹の數に通ずれば、狹を以て廣を畏れず。輕重の數に通ずれば、少を以て多を畏れず。此れ國筴の大なる者なり」と。
-
『管子』揆度桓公曰く、「何の謂いぞや」と。管子對えて曰く、「今天下兵を起こして我に加うれば、民は其の耒耜を棄て、戈を持して外に出づ、然らば則ち國は耕すことを得ず。此れ天の凶に非ざるなり、此れ人の凶なり。君朝に令して夕べに具うるを求むれば、民は其の財物と其の五榖とを肆べて讎と為し、厭きて去る、賈人受けて之を廩す、然らば則ち國財の一分は賈人に在り。師罷みて、民其の事に反り、萬物其の重に反れば、賈人其の財物を出だし、國の少分は賈人に廩せらる。此くの若くんば、則ち幣の重きこと三分、財物の輕重も三分。賈人三分の間に市れば、國の財物は盡く賈人に在りて、君は筴無し。民更ごも相い制して、君は事有る無し。此れ輕重の大準なり」と。
-
『管子』山權數桓公曰く、「善し。天下を葢い、海内を視て、譽を長くして止まる無からんとするに、之を為すに道有りや」と。管子對えて曰く、「有り。曰く、軌もて其の數を守り、準もて其の流を平らかにし、未だ形あらざるに動きて、事の已に成れるを守る。物は一なるも而も十なり、是れ九は用と為る。徐疾の數は、輕重の筴なり。一は以て十と為すべく、十は以て百と為すべし。十の半を引きて四を藏し、五を以て事を操るは、君の決塞に在り」と。桓公曰く、「何をか決塞と謂う」と。管子曰く、「君仁を髙くせざれば、則ち國相い被らず。君慈孝を髙くせざれば、則ち民其の親を簡にして過ちを輕んず。此れ亂の至りなり。則ち君請う國筴十分の一を以て、表を樹て髙きを置き、鄉の孝子に之に聘するに幣を以てし、孝子兄弟は衆寡として師旅の事に與らざらしめん。表を樹て髙きを置きて、仁と慈孝とを髙くすれば、財散じて輕し。輕きに乗じて之を守るに筴を以てすれば、則ち十の五は上に在る有り。五を運らすこと事を行うが如く、日月の終わりて復するが如し。此れ長く天下を有つの道、之を準道と謂う」と。
-
『管子』地數桓公管子に問いて曰く、「吾れ本を富ませて五榖を豐かにせんと欲す、可なるか」と。管子對えて曰く、「不可なり。夫れ本富みて財物衆ければ、守る能わざれば則ち天下に税せらる。五榖興り豐かにして、錢を巨にして天下貴ければ、則ち天下に税せらる。然らば則ち吾が民は常に天下の虜と為らん。夫れ善く本を用うる者は、身を以て大海を濟るが若く、風の起こる所を觀て、天下髙ければ則ち髙くし、天下下れば則ち下る。天髙く我下れば、則ち財利は天下に税せらる」と。
-
『管子』輕重丁管子曰く、「昔者、癸度人の國に居るや、必ず四面天下を望み、天下髙ければ亦た髙くす。天下髙く、我れ獨り下れば、必ず其の國を天下に失う」と。桓公曰く、「此の若き言は曷の謂いぞや」と。管子對えて曰く、「昔萊人は善く染め、練茈の萊に於けるは純ごとに錙、緺綬の萊に於けるも亦た純ごとに錙なり。其れ周にては十金に中たる。萊人之を知り、纂茈空しと聞く。周且に馬を斂めんとして萊人に見わし、之を操るに、萊に推馬有り。是れ自ら萊は綦茈を失いて馬に反準するなり。故に因るべき者は之に因り、乗ずべき者は之に乗ず、此れ天下に因りて以て天下を制するなり。此れを之れ國準と謂う」と。
-
『管子』山至數桓公管子に問いて曰く、「請う國㑹を問う」と。管子對えて曰く、「君大夫を失えば伍無しと為し、民を失えば下を失うと為す。故に大夫を守るに縣の筴を以てし、一縣を守るに一鄉の筴を以てし、一鄉を守るに一家の筴を以てし、家を守るに一人の筴を以てす」と。桓公曰く、「其の㑹數は奈何」と。管子對えて曰く、「幣準の數は、一縣には必ず一縣の中田の筴有り、一鄉には必ず一鄉の中田の筴有り、一家には必ず一家の人に直るの用有り。故に時を以て守らざれば、郡は與する無しと為し、時を以て守らざれば、鄉は伍無しと為す」と。桓公曰く、「此を行うこと奈何」と。管子對えて曰く、「王者は民に藏し、霸者は大夫に藏し、殘國亡家は篋に藏す」と。