管子 / 國蓄
凡五榖者,萬物之主也。穀貴則萬物必賤,榖賤則萬物必貴。兩者為敵,則不俱平。故人君御榖物之秩相勝,而操事於其不平之間。故萬民無籍,而國利歸於君也。夫以室廡籍,謂之毁成。以六畜籍,謂之止生。以田畆籍,謂之禁耕。以正人籍,謂之離情。以正户籍,謂之養贏。五者不可畢用,故王者徧行而不盡也。故天子籍於幣,諸侯籍於食。中嵗之榖糶石十錢。大男食四石,月有四十之籍;大女食三石,月有三十之籍。吾子食二石,月有二十之籍。嵗凶榖貴,糴石二十錢,則大男有八十之籍,大女有六十之籍,吾子有四十之籍。是人君非發號令收穡而户籍也。彼人君守其本委謹,而男女諸君吾子無不服籍者也。
新字:凡五榖者,万物之主也。穀貴則万物必賤,榖賤則万物必貴。両者為敵,則不倶平。故人君御榖物之秩相勝,而操事於其不平之間。故万民無籍,而国利帰於君也。夫以室廡籍,謂之毁成。以六畜籍,謂之止生。以田畆籍,謂之禁耕。以正人籍,謂之離情。以正戸籍,謂之養贏。五者不可畢用,故王者遍行而不尽也。故天子籍於幣,諸侯籍於食。中歳之榖糶石十銭。大男食四石,月有四十之籍;大女食三石,月有三十之籍。吾子食二石,月有二十之籍。歳凶榖貴,糴石二十銭,則大男有八十之籍,大女有六十之籍,吾子有四十之籍。是人君非発号令収穡而戸籍也。彼人君守其本委謹,而男女諸君吾子無不服籍者也。
書き下し
凡そ五榖なる者は、萬物の主なり。榖貴ければ則ち萬物必ず賤し、榖賤ければ則ち萬物必ず貴し。兩者敵を為せば、則ち俱には平らかならず。故に人君は榖物の秩の相い勝つを御して、事を其の平らかならざるの間に操る。故に萬民籍無くして、國利君に歸するなり。夫れ室廡を以て籍するは、之を成れるを毁つと謂う。六畜を以て籍するは、之を生を止むと謂う。田畆を以て籍するは、之を耕を禁ずと謂う。正人を以て籍するは、之を情を離ると謂う。正戸を以て籍するは、之を贏を養うと謂う。五つの者は畢くは用うべからず、故に王者は徧く行いて盡くさざるなり。故に天子は幣に籍し、諸侯は食に籍す。中歳の榖の糶は石に十錢。大男は四石を食らえば、月に四十の籍有り。大女は三石を食らえば、月に三十の籍有り。吾子は二石を食らえば、月に二十の籍有り。歳凶にして榖貴く、糴は石に二十錢なれば、則ち大男に八十の籍有り、大女に六十の籍有り、吾子に四十の籍有り。是れ人君は號令を發して穡を收めて戸ごとに籍するに非ざるなり。彼れ人君は其の本委を守ること謹みて、男女諸君吾子は籍に服せざる者無きなり。
現代語訳
五穀は万物の主である。穀物が高ければ万物は必ず安く、穀物が安ければ万物は必ず高い。この二つが敵どうしであれば、ともに平らになることはない。だから主は穀物と物の順位が入れ替わるのを操り、その揃わない隙間で手を打つ。だから民に税をかけずに、国の利は君のところへ帰る。家屋にかけるのを、出来上がったものを壊すという。六畜にかけるのを、生きるのを止めるという。田畑にかけるのを、耕作を禁じるという。人ごとにかけるのを、本音から離れさせるという。戸ごとにかけるのを、余りを太らせるという。この五つはすべては使えない。だから王者は広く行き渡らせて出し切らない。だから天子は貨幣にかけ、諸侯は食べ物にかける。並の年の穀物の売値は一石十銭。大人の男は四石食べるから、ひと月に四十の取り分がある。大人の女は三石食べるから三十、子どもは二石食べるから二十。年が凶で穀物が高く、買値が一石二十銭になれば、大人の男には八十、大人の女には六十、子どもには四十の取り分ができる。これは主が令を出して収穫を集め、戸ごとに税をかけているのではない。主が蓄えを守ることに気を配っていれば、男も女も子どもも、税を負わない者はいないのである。
解説
この章句が説くこと
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『管子』國蓄國に十年の蓄え有るも、民の食に足らざるは、皆な其の技能を以て君の祿を望めばなり。君に山海の金有るも、民の用に足らざるは、是れ皆な其の事業を以て君上に交接すればなり。故に人君は其の食を挾み、其の用を守り、餘り有るに據りて足らざるを制す、故に民は上に累せられざる無きなり。五榖食米は、民の司命なり。黄金刀幣は、民の通施なり。故に善き者は其の通施を執りて、以て其の司命を御す、故に民力は得て盡くすべきなり。夫れ民なる者は親信して利に死す、海内皆な然り。民は予うれば則ち喜び、奪えば則ち怒る、民情皆な然り。先王は其の然るを知る、故に予うるの形を見わして、奪うの理を見わさず。故に民の愛は上に洽きを得るなり。租籍なる者は、彊いて求むる所以なり。租税なる者は、慮りて請う所なり。王霸の君は、其の彊いて求むる所以を去り、其の慮りて請う所を廢す、故に天下樂しみて從うなり。
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『管子』輕重乙桓公曰く、「壤數は此に盡くるか」と。管子對えて曰く、「未だし。昔狄諸侯は、畆鍾の國なり、故に粟十鍾にして錙金なり。程諸侯は、山諸侯の國なり、故に粟五釜にして錙金なり。故に狄諸侯は十鍾にして㦸を倳つるを得ず、程諸侯は五釜にして㦸を倳つるを得たり。十倍にして足らず、或いは五分にして餘り有る者は、輕重髙下の數に通ずればなり。國に十歳の蓄え有るも、民の食足らざる者は、皆な其の事業を以て君の祿を望めばなり。君に山海の財有るも、民の用足らざる者は、皆な其の事業を以て上に交接すればなり。故に租籍は、君の宜しく得べき所なり。正籍は、君の彊いて求むる所なり。亡君は其の宜しく得べき所を廢して、其の彊いて求むる所を斂む、故に下は上を怨みて令行われず。民は、之を奪えば則ち怒り、之に予うれば則ち喜ぶ。民情固より然り。先王は其の然るを知る、故に予うるの所を見わして、奪うの理を見わさず。故に五榖粟米なる者は、民の司命なり。黄金刀布なる者は、民の通貨なり。先王善く其の通貨を制して、以て其の司命を御す、故に民力盡くすべきなり」と。
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『管子』國蓄一人廩食すれば、十人餘りを得。十人廩食すれば、百人餘りを得。百人廩食すれば、千人餘りを得。夫れ物は多ければ則ち賤しく、寡なければ則ち貴し。散ずれば則ち輕く、聚まれば則ち重し。人君其の然るを知る、故に國の羨と不足とを視て其の財物を御す。榖賤しければ則ち幣を以て食に予え、布帛賤しければ則ち幣を以て衣に予う。物の輕重を視て之を御するに準を以てす、故に貴賤調うべくして、君其の利を得。
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『管子』國蓄歳適たま美なれば、則ち市の糶に予うる無くして、狗彘人の食を食らう。歳適たま凶なれば、則ち市の糴は釜に十繦にして道に餓民有り。然らば則ち豈に壤力固より足らずして、食固より贍らざらんや。夫れ往歳の糶賤しく、狗彘人の食を食らう、故に來歳の民足らざるなり。物適たま賤しければ、則ち力を半ばにして予うる無く、民の事は其の本を償わず。物適たま貴ければ、則ち什倍して得べからず、民は其の用を失う。然らば則ち豈に財物固より寡なくして、本委固より足らざらんや。夫れ民の利の時失われて物の利の平らかならざればなり。故に善き者は民の足らざる所に委施し、民の餘り有る所に事を操る。夫れ民は餘り有れば則ち之を輕んず、故に人君は之を斂むるに輕を以てす。民は足らざれば則ち之を重んず、故に人君は之を散ずるに重を以てす。之を斂め積むに輕を以てし、之を散じ行うに重を以てす、故に君は必ず什倍の利有りて、財の櫎は得て平らかなるべきなり。
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『管子』治國凡そ農なる者は、月に足らずして歲に餘り有る者なり。而るに上の徵暴急にして時無ければ、則ち民は倍貸して以て上の徵に給す。耕耨する者に時有りて、澤必ずしも足らざれば、則ち民は倍貸して以て庸を取る。秋に糴るに五を以てし、春に糶るに束を以てす、是れ又た倍貸なり。故に上の徵を以て民より倍取する者四つ。關市の租、府庫の徵、粟の什一、厮輿の事、此の四時も亦た當に一倍貸すべし。夫れ一民を以て四主を養う、故に逃徙する者を刑するも、上止むる能わざるは、粟少なくして民に積む無ければなり。常山の東、河・汝の間は、蚤く生じて晚く殺す、五榖の蕃り孰する所なり。四たび種えて五たび穫れ、中年は畝ごとに二石、一夫にして粟二百石を為す。今や倉廩虛しくして民に積む無く、農夫子を粥ぐ者有るは、上に之を均しくするの術無ければなり。
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『管子』國蓄凡そ輕重の大利は、重を以て輕を射、賤を以て平を泄す。萬物の滿虚は財の準平に隨いて變ぜず。衡絶ゆれば則ち重見わる。人君其の然るを知る、故に之を守るに準平を以てす。萬室の都をして必ず萬鍾の藏有らしめ、繦千萬を藏す。千室の都をして必ず千鍾の藏有らしめ、繦百萬を藏す。春は以て耕に奉じ、夏は以て芸に奉じ、耒耜械器・種饟糧食は畢く君に贍うを取る。故に大賈蓄家は吾が民を豪奪するを得ざるなり。然らば則ち何ぞや。君其の本を養うこと謹めばなり。春に賦して以て繒帛を斂め、夏に貸して以て秋の實を收む、是の故に民に廢事無くして、國に失利無きなり。