管子 / 國蓄
嵗適美,則市糶無予,而狗彘食人食。嵗適凶,則市糴釜十繦而道有餓民。然則豈壤力固不足,而食固不贍也哉?夫往嵗之糶賤,狗彘食人食,故來嵗之民不足也。物適賤,則半力而無予,民事不償其本。物適貴,則什倍而不可得,民失其用。然則豈財物固寡,而本委不足也哉?夫民利之時失而物利之不平也。故善者委施於民之所不足,操事於民之所有餘。夫民有餘則輕之,故人君斂之以輕;民不足則重之,故人君散之以重。斂積之以輕,散行之以重,故君必有什倍之利,而財之櫎可得而平也。
新字:歳適美,則市糶無予,而狗彘食人食。歳適凶,則市糴釜十繦而道有餓民。然則豈壤力固不足,而食固不贍也哉?夫往歳之糶賤,狗彘食人食,故来歳之民不足也。物適賤,則半力而無予,民事不償其本。物適貴,則什倍而不可得,民失其用。然則豈財物固寡,而本委不足也哉?夫民利之時失而物利之不平也。故善者委施於民之所不足,操事於民之所有余。夫民有余則軽之,故人君斂之以軽;民不足則重之,故人君散之以重。斂積之以軽,散行之以重,故君必有什倍之利,而財之櫎可得而平也。
書き下し
歳適たま美なれば、則ち市の糶に予うる無くして、狗彘人の食を食らう。歳適たま凶なれば、則ち市の糴は釜に十繦にして道に餓民有り。然らば則ち豈に壤力固より足らずして、食固より贍らざらんや。夫れ往歳の糶賤しく、狗彘人の食を食らう、故に來歳の民足らざるなり。物適たま賤しければ、則ち力を半ばにして予うる無く、民の事は其の本を償わず。物適たま貴ければ、則ち什倍して得べからず、民は其の用を失う。然らば則ち豈に財物固より寡なくして、本委固より足らざらんや。夫れ民の利の時失われて物の利の平らかならざればなり。故に善き者は民の足らざる所に委施し、民の餘り有る所に事を操る。夫れ民は餘り有れば則ち之を輕んず、故に人君は之を斂むるに輕を以てす。民は足らざれば則ち之を重んず、故に人君は之を散ずるに重を以てす。之を斂め積むに輕を以てし、之を散じ行うに重を以てす、故に君は必ず什倍の利有りて、財の櫎は得て平らかなるべきなり。
現代語訳
年がたまたま豊かであれば、市で売っても値がつかず、犬や豚が人の食べ物を食べる。年がたまたま凶であれば、市で買うのに一釜で十繦もかかり、道には飢えた民がいる。とすれば、土地の力がもともと足りず、食べ物がもともと行き渡らないのだろうか。そうではない。去年の売値が安く、犬や豚が人の食べ物を食べたから、今年の民が足りないのである。物がたまたま安ければ、力を半分出しても値がつかず、民の仕事はもとを取り返せない。物がたまたま高ければ、十倍出しても手に入らず、民は入用を失う。とすれば、財や物がもともと少なく、蓄えがもともと足りないのだろうか。そうではない。民の利の時が外れ、物の利が揃っていないからである。だからうまくやる者は、民の足りないところへ蓄えを回し、民の余っているところで手を打つ。民は余っていればそれを軽く見るから、主は安いときに集める。民は足りなければそれを重く見るから、主は高いときに出す。安いときに集めて積み、高いときに出して回す。だから君には必ず十倍の利があり、物の相場は平らにできるのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『管子』國蓄一人廩食すれば、十人餘りを得。十人廩食すれば、百人餘りを得。百人廩食すれば、千人餘りを得。夫れ物は多ければ則ち賤しく、寡なければ則ち貴し。散ずれば則ち輕く、聚まれば則ち重し。人君其の然るを知る、故に國の羨と不足とを視て其の財物を御す。榖賤しければ則ち幣を以て食に予え、布帛賤しければ則ち幣を以て衣に予う。物の輕重を視て之を御するに準を以てす、故に貴賤調うべくして、君其の利を得。
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『管子』國蓄凡そ輕重の大利は、重を以て輕を射、賤を以て平を泄す。萬物の滿虚は財の準平に隨いて變ぜず。衡絶ゆれば則ち重見わる。人君其の然るを知る、故に之を守るに準平を以てす。萬室の都をして必ず萬鍾の藏有らしめ、繦千萬を藏す。千室の都をして必ず千鍾の藏有らしめ、繦百萬を藏す。春は以て耕に奉じ、夏は以て芸に奉じ、耒耜械器・種饟糧食は畢く君に贍うを取る。故に大賈蓄家は吾が民を豪奪するを得ざるなり。然らば則ち何ぞや。君其の本を養うこと謹めばなり。春に賦して以て繒帛を斂め、夏に貸して以て秋の實を收む、是の故に民に廢事無くして、國に失利無きなり。
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『管子』國蓄凡そ將に國を為めんとするに、輕重に通ぜざれば、籠を為して以て民を守るべからず。民の利を調え通ずる能わざれば、以て制を語りて大治を為すべからず。是の故に萬乗の國には、萬金の賈有り。千乗の國には、千金の賈有り。然る者は何ぞや。國多く利を失えば、則ち臣は其の忠を盡くさず、士は其の死を盡くさざればなり。歳に凶穰有り、故に榖に貴賤有り。令に緩急有り、故に物に輕重有り。然り而して人君治むる能わず、故に蓄賈をして市に游ばしめ、民の給せざるに乗じて、其の本を百倍せしむ。地を分かつこと一の若きも、彊き者は能く守る。財を分かつこと一の若きも、智なる者は能く收む。智なる者は人に什倍するの功有り、愚なる者は本に賡わざるの事有り。然り而して人君調うる能わず、故に民に相い百倍するの生有るなり。夫れ民は富めば則ち祿を以て使うべからず、貧しければ則ち罰を以て威すべからず。法令の行われず、萬民の治まらざるは、貧富の齊しからざればなり。
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『管子』山至數桓公曰く、「何をか民に藏すと謂う」と。「請う棧臺の錢を散じて諸を城陽に散じ、鹿臺の布を散じて諸を濟隂に散ぜよ。君百姓に令を下して曰く、『民富めば、君は與に貧しきこと無し。民貧しければ、君は與に富むこと無し。故に賦に錢布無く、府に藏財無く、貲は民に藏す』と。歳豐かにして、五榖登り、五榖大いに輕く、榖の賈は上歳の分を去る。幣を以て之に據れば、榖を君と為し、幣を下と為す。國幣盡く下に在れば、幣輕く榖重し。上は上歳の二分を分かちて下に在らしめ、下歳の二分は上に在り、則ち二歳の者は四分上に在り。則ち國榖の一分は下に在り、榖は三倍重し。邦布の籍は、歳を終うるに十錢。人家食を受くるに、十畆にして十を加う、是れ一家にして十户なり。國榖の筴より出でて幣に藏する者なり。國幣の分を以て、復た百姓に布く。四もて減じて國榖の三は上に在り、一は下に在り。復筴なり。
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『管子』國蓄且つ君錣を引きて用を量り、田を耕し草を發けば、上其の數を得たり。民人の食らう所、人ごとに若干の歩畆の數有り。本を計り委を量れば則ち足る。然り而して民に饑餓して食らわざる者有るは、何ぞや。榖に藏する所有ればなり。人君錢を鑄て幣を立つるは、民庶の通施なり、人ごとに若干百千の數有り。然り而して人事及ばず、用足らざる者は、何ぞや。利に并せ藏する所有ればなり。然らば則ち人君能く積聚を散じ、羨と不足とを鈞しくし、并せられたる財利を分かちて、民事を調うるに非ざれば、則ち君は本を彊め耕を趣すと雖も、自ら幣を鑄て已む無きも、乃ち今民をして下に相い役せしむるのみ、惡くんぞ能く以て治を為さんや。
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『管子』國蓄國に十年の蓄え有るも、民の食に足らざるは、皆な其の技能を以て君の祿を望めばなり。君に山海の金有るも、民の用に足らざるは、是れ皆な其の事業を以て君上に交接すればなり。故に人君は其の食を挾み、其の用を守り、餘り有るに據りて足らざるを制す、故に民は上に累せられざる無きなり。五榖食米は、民の司命なり。黄金刀幣は、民の通施なり。故に善き者は其の通施を執りて、以て其の司命を御す、故に民力は得て盡くすべきなり。夫れ民なる者は親信して利に死す、海内皆な然り。民は予うれば則ち喜び、奪えば則ち怒る、民情皆な然り。先王は其の然るを知る、故に予うるの形を見わして、奪うの理を見わさず。故に民の愛は上に洽きを得るなり。租籍なる者は、彊いて求むる所以なり。租税なる者は、慮りて請う所なり。王霸の君は、其の彊いて求むる所以を去り、其の慮りて請う所を廢す、故に天下樂しみて從うなり。