管子 / 立政九敗解
人君唯毋聽觀樂玩好則敗。凡觀樂者,宫室臺池,珠玉聲樂也。此皆費財盡力,傷國之道也。而以此事君者,皆姦人也。而人君聽之,焉得毋敗!然則府倉虚蓄積竭,且姦人在上,則壅遏賢者而不進也。然則國有患,則優倡侏儒起而議國事矣,是敺國而捐之也。故曰:「觀樂玩好之說勝,則姦人在上位。」人君唯毋聽請謁任譽,則羣臣皆相為請,然則請謁得於上,黨與成於鄉。如是則貨財行於國,法制毁於官,羣臣務佼而求用,然則無爵而䝿,無祿而富。故曰:「請謁任譽之説勝,則繩墨不正。」人君惟無聽諂諛飾過之言則敗。奚以知其然也?夫諂臣者,常使其主不悔其過,不更其失者也,故主惑而不自知也。如是則謀臣死,而諂臣尊矣。故曰:「諂讒飾過之說勝,則巧佞者用。」
新字:人君唯毋聴観楽玩好則敗。凡観楽者,宫室台池,珠玉声楽也。此皆費財尽力,傷国之道也。而以此事君者,皆姦人也。而人君聴之,焉得毋敗!然則府倉虚蓄積竭,且姦人在上,則壅遏賢者而不進也。然則国有患,則優倡侏儒起而議国事矣,是敺国而捐之也。故曰:「観楽玩好之説勝,則姦人在上位。」人君唯毋聴請謁任誉,則羣臣皆相為請,然則請謁得於上,党与成於鄉。如是則貨財行於国,法制毁於官,羣臣務佼而求用,然則無爵而䝿,無禄而富。故曰:「請謁任誉之説勝,則縄墨不正。」人君惟無聴諂諛飾過之言則敗。奚以知其然也?夫諂臣者,常使其主不悔其過,不更其失者也,故主惑而不自知也。如是則謀臣死,而諂臣尊矣。故曰:「諂讒飾過之説勝,則巧佞者用。」
書き下し
人君唯だ觀樂玩好を聽く毋くんば則ち敗る。凡そ觀樂なる者は、宫室臺池、珠玉聲樂なり。此れ皆な財を費やし力を盡くし、國を傷るの道なり。而して此を以て君に事うる者は、皆な姦人なり。而して人君之を聽けば、焉んぞ敗る毋きを得んや。然らば則ち府倉虚しく蓄積竭き、且つ姦人上に在れば、則ち賢者を壅遏して進めざるなり。然らば則ち國に患い有れば、則ち優倡侏儒起ちて國事を議す。是れ國を敺りて之を捐つるなり。故に曰く、「觀樂玩好の説勝てば、則ち姦人上位に在り」と。人君唯だ請謁任譽を聽く毋くんば、則ち羣臣皆な相為に請う。然らば則ち請謁上に得られ、黨與鄉に成る。是くの如くんば則ち貨財國に行われ、法制官に毁れ、羣臣は佼を務めて用いらるるを求む。然らば則ち爵無くして貴く、祿無くして富む。故に曰く、「請謁任譽の説勝てば、則ち繩墨正しからず」と。人君惟だ諂諛飾過の言を聽く無くんば則ち敗る。奚を以て其の然るを知るや。夫れ諂臣なる者は、常に其の主をして其の過ちを悔いず、其の失を更めざらしむる者なり、故に主は惑いて自ら知らざるなり。是くの如くんば則ち謀臣死して、諂臣尊し。故に曰く、「諂讒飾過の説勝てば、則ち巧佞者用いらる」と。
現代語訳
主が見て楽しむことや玩び好むことを聴いていれば敗れる。見て楽しむものとは、宮室や台や池、珠玉や音楽である。どれも財を費やし力を尽くし、国を損なう道である。これによって君に仕える者は、みなよこしまな人である。主がそれを聴けば、どうして敗れずにいられよう。すると倉は空になり蓄えは尽き、そのうえよこしまな人が上にいれば、賢者を塞いで進ませない。国に患いがあれば、芸人や侏儒が立ち上がって国のことを議論する。これは国を追い立てて捨てるようなものである。だから、見て楽しみ玩び好む説が勝てば、よこしまな人が上位にいる、という。主が取り次ぎと推挙を聴かないでいなければ、群臣はみな互いのために願い出る。すると取り次ぎが上に通り、党が郷でできあがる。財貨が国じゅうを回り、法と制は役所で壊れ、群臣は交わりに励んで用いられようとする。すると爵がないのに貴く、禄がないのに富む者が出る。だから、取り次ぎと推挙の説が勝てば、墨縄は正しくない、という。主がへつらいと過ちの言い繕いを聴いていれば敗れる。なぜそう分かるのか。へつらう臣は、いつも主に過ちを悔いさせず、失いを改めさせない者である。だから主は惑って自分では気づかない。すると、はかりごとを言う臣は死に、へつらう臣が尊くなる。だから、へつらいと言い繕いの説が勝てば、巧みで媚びる者が用いられる、という。
解説
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『管子』立政九敗解人君惟だ金玉貨財を好む無くんば、必ず其の好む所を得んと欲す。然らば則ち必ず以て之に易うる有り。之に易うる所以の者は何ぞや。大官尊位なり。然らずんば則ち尊爵重祿なり。是くの如くんば則ち不肖者上位に在り。然らば則ち賢者は下と為らず、智者は謀を為さず、信者は約を為さず、勇者は死を為さず。是くの如くんば則ち國を敺りて之を捐つるなり。故に曰く、「金玉貨財の説勝てば、則ち爵服下流す」と。人君惟だ羣徒比周を聽く毋くんば、則ち羣臣朋黨し、美を蔽い惡を掦ぐ。然らば則ち國の情偽上に見われず。是くの如くんば則ち朋黨する者は前に處り、寡黨なる者は後に處る。夫れ朋黨する者前に處らば、賢不肖分かれず、則ち爭奪の亂起こりて、君は危殆の中に在り。故に曰く、「羣徒比周の説勝てば、則ち賢不肖分かれず」と。
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『管子』立政寢兵の說勝てば、則ち險阻守られず。兼愛の說勝てば、則ち士卒戰わず。全生の說勝てば、則ち廉恥立たず。私議自貴の說勝てば、則ち上令行われず。羣徒比周の說勝てば、則ち賢不肖分かれず。金玉貨財の說勝てば、則ち爵服下流す。觀樂玩好の說勝てば、則ち姦民上位に在り。請謁任舉の說勝てば、則ち繩墨正しからず。諂諛飾過の說勝てば、則ち巧佞なる者用いらる。
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『管子』立政九敗解人君惟だ全生を好む無くんば、則ち羣臣皆な其の生を全うして、生又た生を養う。養とは何ぞや。曰く、滋味なり、聲色なり、然る後に生を養うと為す。然らば則ち欲に從いて妄りに行い、男女別無く、禽獸に反る。然らば則ち禮義廉恥立たず、人君以て自ら守る無きなり。故に曰く、「全生の説勝てば、則ち廉恥立たず」と。人君惟だ私議自貴を聽く無くんば、則ち民は退き靜まり隱れ伏し、山に窟穴して就き、世を非として上に間し、爵祿を輕んじて有司を賤しむ。然らば則ち令行われず、禁止まらず。故に曰く、「私議自貴の説勝てば、則ち上令行われず」と。
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『管子』立政九敗解人君唯だ寢兵を聽く毋くんば、則ち羣臣賔客敢えて兵を言う莫し。然らば則ち内は國の治亂を知らず、外は諸侯の强弱を知らず。是くの如くんば則ち城郭毁壞するも、之を築き補う莫し。甲兵彫るも、之を修繕する莫し。是くの如くんば則ち守圉の備え毁る。遼遠の地は謀られ、邊竟の士は修わり、百姓に敵を圉ぐの心無し。故に曰く、「寢兵の説勝てば、則ち險阻守られず」と。人君惟だ兼愛の説を聽く毋くんば、則ち天下の民を視ること其の民の如く、國を視ること吾が國の如し。是くの如くんば則ち并兼攘奪の心無く、覆軍敗將の事無し。然らば則ち射御勇力の士は祿を厚くせられず、覆軍敗將の臣は爵を貴くせられず。是くの如くんば則ち射御勇力の士は出でて外に在り。我能く人を攻むる毋きは、可なり。人をして我を攻むる毋からしむる能わず。彼地を求めて之に予うるは、吾が欲する所に非ざるなり。予えずして與に戰わば、必ず勝たざるなり。彼は敎士を以てし、我は敺衆を以てす。彼は良將を以てし、我は無能を以てす。其の敗は必ず軍を覆し將を殺さん。故に曰く、「兼愛の説勝てば、則ち士卒戰わず」と。
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『管子』宙合「佞に訪う毋かれ」とは、佞人を用うる毋かれと言うなり、佞人を用うれば則ち私多く行わる。「諂を蓄う毋かれ」とは、諂を聽く毋かれと言うなり、諂を聽けば則ち上を欺く。「凶を育う毋かれ」とは、暴を使う毋かれと言うなり、暴を使えば則ち民を傷る。「讒を監る毋かれ」とは、讒を聽く毋かれと言うなり、讒を聽けば則ち士を失う。夫れ私を行い、上を欺き、民を傷り、士を失う、此の四つの者用いらるるは、君の義を害し正を失う所以なり。夫れ君上為る者既に其の義正を失いて、倚りて以て名譽と為し、臣為る者忠ならずして邪、以て爵禄に趨り、俗を亂し世を敗り、以て偷安懷樂すれば、其の威を廣くすと雖も損ず可きなり。故に曰く「正しからざれば其の荒を廣む」と。是を以て古の人は其の路を阻み、其の遂を塞ぎ、守りて物修まる。故に之を簡筴に著し、傳えて以て後世の人に告げて曰く、「其の怨みを為すこと深し、是を以て威盡くるなり」と。
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『管子』明法解姦臣の其の主を敗るや、積漸積微にして、主をして迷惑して自ら知らざらしむるなり。上は則ち相為に主を候望し、下は則ち譽を民に買う。其の黨を譽めて主をして之を尊ばしめ、譽めざる者を毁りて主をして之を廢せしむ。其の利害する所の者、主聽きて之を行う。此くの如くんば、則ち羣臣皆な主を忘れて私佼に趨る。故に明法に曰く、「比周して相為に慝を為す、是の故に主を忘れ佼に死して以て其の譽を進む」と。主に術數無ければ則ち羣臣之を欺き易く、國に明法無ければ則ち百姓輕がるしく非を為す。是の故に姦邪の人國事を用うれば、則ち羣臣は利害を仰ぐなり。此くの如くんば、則ち姦人の為に視聽する者多し、大義有りと雖も、主從りて之を知る無し。故に明法に曰く、「佼衆く譽多く、外内朋黨すれば、大姦有りと雖も、其の主を蔽うこと多し」と。