管子 / 形勢解
謹於一家則立於一家,謹於一鄉則立於一鄉,謹於一國則立於一國,謹於天下則立於天下。是故其所謹者小,則其所立亦小;其所謹者大,則其所立亦大。故曰:「小謹者不大立。」海不辭水,故能成其大。山不辭土石,故能成其髙。明主不厭人,故能成其衆。士不厭學,故能成其聖。飺者,多所惡也。諫者,所以安主也。食者,所以肥體也。主惡諫則不安,人飺食則不肥。故曰:「飺食者不肥體也。」
新字:謹於一家則立於一家,謹於一鄉則立於一鄉,謹於一国則立於一国,謹於天下則立於天下。是故其所謹者小,則其所立亦小;其所謹者大,則其所立亦大。故曰:「小謹者不大立。」海不辞水,故能成其大。山不辞土石,故能成其高。明主不厭人,故能成其衆。士不厭学,故能成其聖。飺者,多所悪也。諫者,所以安主也。食者,所以肥体也。主悪諫則不安,人飺食則不肥。故曰:「飺食者不肥体也。」
書き下し
一家に謹めば則ち一家に立ち、一鄉に謹めば則ち一鄉に立ち、一國に謹めば則ち一國に立ち、天下に謹めば則ち天下に立つ。是の故に其の謹む所の者小なれば、則ち其の立つ所も亦た小なり。其の謹む所の者大なれば、則ち其の立つ所も亦た大なり。故に曰く、「小謹なる者は大いに立たず」と。海は水を辭せず、故に能く其の大を成す。山は土石を辭せず、故に能く其の髙きを成す。明主は人を厭わず、故に能く其の衆を成す。士は學を厭わず、故に能く其の聖を成す。飺なる者は、惡む所多きなり。諫なる者は、主を安んずる所以なり。食なる者は、體を肥やす所以なり。主諫を惡めば則ち安からず、人食を飺めば則ち肥えず。故に曰く、「食を飺む者は體を肥やさざるなり」と。
現代語訳
一つの家で慎めば一つの家に立ち、一つの郷で慎めば一つの郷に立ち、一つの国で慎めば一つの国に立ち、天下で慎めば天下に立つ。だから慎む範囲が小さければ立つところも小さく、慎む範囲が大きければ立つところも大きい。だから、小さく慎む者は大きくは立たない、という。海は水を断らない。だから大きくなれる。山は土や石を断らない。だから高くなれる。明主は人を嫌わない。だから多くを集められる。士は学ぶことを嫌わない。だから聖に至れる。えり好みとは、憎むものが多いことである。諫めは主を安んじるものであり、食は体を太らせるものである。主が諫めを憎めば安らかでなく、人が食をえり好みすれば太らない。だから、食をえり好みする者は体を太らせない、という。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『管子』形勢解明主の事を舉ぐるや、聖人の慮を任じ、衆人の力を用いて、自ら與らず、故に事成りて福生ず。亂主は自ら智とするも、聖人の慮に因らず。矜り奮いて自ら功とするも、衆人の力に因らず。專ら己を用いて正諫を聽かず、故に事敗れて禍生ず。故に曰く、「伐矜好專は、事を舉ぐるの禍なり」と。馬なる者は、乘りて以て野を行く所なり、故に野を行かずと雖も、其の馬を養い食ましむるや、未だ嘗て解惰せざるなり。民なる者は、以て守戰する所なり、故に守戰せずと雖も、其の民を治め養うや、未だ嘗て解惰せざるなり。故に曰く、「其の野を行かざるも、其の馬を違えず」と。天は四時を生じ、地は萬財を生じ、以て萬物を養いて取る無し。明主は天地に配する者なり、民に教うるに時を以てし、之を勸むるに耕織を以てし、以て民の養いを厚くして、其の功を伐らず、其の利を私せず。故に曰く、「能く予えて取る無き者は、天地の配なり」と。
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『管子』形勢解小人なる者は、道を枉げて容を取り、主意に適いて偷かに説び、利を備えて偷かに得。此くの如き者は、其の之を得ること速やかなりと雖も、禍患の至ること亦た急なり、故に聖人は去りて用いざるなり。故に曰く、「其の計や速やかにして、憂い近きに在る者は、往かしめて召す勿かれ」と。一を舉げて天下の長利と為す者、之を舉長と謂う。長を舉ぐれば則ち其の利を被る者衆くして、德義の見わるる所逺し。故に曰く、「長を舉ぐる者は、逺く見る可きなり」と。天の裁大なり、故に能く兼ねて萬物を覆う。地の裁大なり、故に能く兼ねて萬物を載す。人主の裁大なり、故に物を容るること多くして衆人比するを得。故に曰く、「裁大なる者は、衆の比する所なり」と。貴富尊顯は、民歸して之を樂しむ、人主欲せざるは莫きなり。故に民の己を懷い樂しむを欲する者は、必ず道德に服して厭かざれば、而ち民之を懷い樂しむ。故に曰く、「美人の懷は、定服して厭かざるなり」と。
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『管子』形勢解民の有道に從うや、飢えの食を先とするが如く、寒えの衣を先とするが如く、暑さの隂を先とするが如し。故に道有れば則ち民之に歸し、道無ければ則ち民之を去る。故に曰く、「道往く者は其の人來たる莫く、道來たる者は其の人往く莫し」と。道なる者は、身を變化して正理に之く所以の者なり。故に道身に在れば、則ち言自ら順い、行自ら正しく、君に事えて自ら忠、父に事えて自ら孝、人に遇して自ら理あり。故に曰く、「道の設くる所は、身の化なり」と。天の道は、滿ちて溢れず、盛んにして衰えず。明主は天道を法象す、故に貴くして驕らず、富みて奢らず、理を行いて惰らず、故に能く長く貴富を守り、久しく天下を有ちて失わざるなり。故に曰く、「滿を持する者は天と與にす」と。明主は、天下の禍を救い、天下の危を安んずる者なり。夫れ禍を救い危を安んずる者は、必ず萬民の用を為すを待ちて、而る後に能く之を為す。故に曰く、「危を安んずる者は人と與にす」と。
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『管子』君臣下天下其の道を道とすれば則ち至り、其の道を道とせざれば則ち至らざるなり。夫れ水は、波だちて上るも、其の搖を盡くして復た下る、其の勢固より然る者なり。故に之を德にして以て懷け、之を威にして以て畏れしむれば、則ち天下之に歸す。有道の國は、號を發し令を出だせば、而ち夫婦盡く上に歸親す。法を布き憲を出だせば、而ち賢人列士盡く功能を上に致す。千里の内、束布の罰、一畝の賦、盡く知る可きなり。斧鉞を治むる者は敢えて刑を讓らず、軒冕を治むる者は敢えて賞を讓らず。墳然として一父の子の若く、一家の實の若きは、義理明らかなればなり。夫れ下其の上を戴かず、臣其の君を戴かざれば、則ち賢人來たらず。賢人來たらざれば、則ち百姓用いられず。百姓用いられざれば、則ち天下至らず。故に曰く、德侵さるれば則ち君危うく、論侵さるれば則ち功有る者危うく、令侵さるれば則ち官危うく、刑侵さるれば則ち百姓危うしと。而して明君なる者は、審らかに淫侵を禁ずる者なり。上に淫侵の論無ければ、則ち下に冀幸の心無し。
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『管子』形勢解解惰簡慢にして、之を以て主に事うれば則ち不忠、之を以て父母に事うれば則ち不孝、之を以て事を起こせば則ち成らず。故に曰く、「怠倦なる者は及ばざるなり」と。規矩を以て方圜を為せば則ち成り、尺寸を以て長短を量れば則ち得、法數を以て民を治むれば則ち安し。故に事の理に廣らざる者は、其の成ること神の若し。故に曰く、「廣むる無き者は神に疑う」と。主に事えて力を盡くさざれば則ち刑有り、父母に事えて力を盡くさざれば則ち親しまれず、業を受け學を問いて務を加えざれば則ち成らず。故に朝に勉力して進むに務めざれば、夕に功を見わす無し。故に曰く、「朝に其の事を忘るれば、夕に其の功を失う」と。中情信誠なれば則ち名譽美なり、行を修めて謹敬なれば則ち尊顯附く。中に情實無ければ則ち名聲惡し、行を修むること慢易なれば則ち汚辱生ず。故に曰く、「邪氣内を襲えば、正色乃ち衰う」と。
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『管子』形勢平原の隰、奚ぞ高きこと有らん。大山の隈、奚ぞ深きこと有らん。訾讆の人は、與に大を任ずる勿かれ。譕臣なる者は以て遠く舉ぐ可く、顧憂する者は與に道を致す可し。其の計るや速やかにして、憂え近きに在る者は、往くも召す勿かれ。長を舉ぐる者は、遠く見る可きなり。大を裁つ者は、衆の比る所なり。美人の懷は、服を定めて厭う勿かれ。必得の事は賴むに足らざるなり、必諾の言は信ずるに足らざるなり。小謹なる者は大いに立たず、食を訾る者は體を肥やさず。棄つる無きの言有る者は、必ず天地に參ずるなり。