管子 / 形勢
平原之隰,奚有於髙?大山之隈,奚有於深?訾讆之人,勿與任大。譕臣者可以逺舉,顧憂者可與致道。其計也速,而憂在近者,往而勿召也。舉長者,可逺見也。裁大者,衆之所比也。美人之懷,定服而勿厭也。必得之事不足賴也,必諾之言不足信也。小謹者不大立,訾食者不肥體。有無棄之言者,必㕘於天地也。
新字:平原之隰,奚有於高?大山之隈,奚有於深?訾讆之人,勿与任大。譕臣者可以遠舉,顧憂者可与致道。其計也速,而憂在近者,往而勿召也。舉長者,可遠見也。裁大者,衆之所比也。美人之懐,定服而勿厭也。必得之事不足頼也,必諾之言不足信也。小謹者不大立,訾食者不肥体。有無棄之言者,必㕘於天地也。
書き下し
平原の隰、奚ぞ高きこと有らん。大山の隈、奚ぞ深きこと有らん。訾讆の人は、與に大を任ずる勿かれ。譕臣なる者は以て遠く舉ぐ可く、顧憂する者は與に道を致す可し。其の計るや速やかにして、憂え近きに在る者は、往くも召す勿かれ。長を舉ぐる者は、遠く見る可きなり。大を裁つ者は、衆の比る所なり。美人の懷は、服を定めて厭う勿かれ。必得の事は賴むに足らざるなり、必諾の言は信ずるに足らざるなり。小謹なる者は大いに立たず、食を訾る者は體を肥やさず。棄つる無きの言有る者は、必ず天地に參ずるなり。
現代語訳
平原の低地に、どれほどの高さがあろうか。大山のくぼみに、どれほどの深さがあろうか。人をそしり媚びる者には、大事をともに任せてはならない。大きな構えの臣とは遠大な事を挙げることができ、先を憂える者とはともに道を成し遂げられる。はかりごとは速いが、憂いが目先にしかない者は、去っていっても呼び戻すな。長所を挙げる者は遠くまで見通せる。大きなことを裁く者には、人々が寄り従う。美しい人の心をつかむには、身なりを定めて飽きられないようにする。必ず得られるという事は当てにならず、必ず承知するという言葉は信じるに足りない。細かいことばかり慎む者は大きく立たず、食べ物にけちをつける者は体が肥えない。捨てるところのない言葉を持つ者は、必ず天地に並び立つ。
解説
この章句が説くこと
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『管子』形勢解主と為りて賊、父母と為りて暴、臣下と為りて不忠、子婦と為りて不孝、四者は、人の大失なり。大失身に在れば、小善有りと雖も、賢と為るを得ず。所謂平原なる者は、下澤なり、小封有りと雖も、髙しと為るを得ず。故に曰く、「平原の隰、奚ぞ髙きに有らんや」と。主と為りて惠、父母と為りて慈、臣下と為りて忠、子婦と為りて孝、四者は、人の髙行なり。髙行身に在れば、小過有りと雖も、不肖と為らず。所謂大山なる者は、山の髙き者なり、小隈有りと雖も、以て深しと為さず。故に曰く、「大山の隈、奚ぞ深きに有らんや」と。
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『管子』形勢解小人なる者は、道を枉げて容を取り、主意に適いて偷かに説び、利を備えて偷かに得。此くの如き者は、其の之を得ること速やかなりと雖も、禍患の至ること亦た急なり、故に聖人は去りて用いざるなり。故に曰く、「其の計や速やかにして、憂い近きに在る者は、往かしめて召す勿かれ」と。一を舉げて天下の長利と為す者、之を舉長と謂う。長を舉ぐれば則ち其の利を被る者衆くして、德義の見わるる所逺し。故に曰く、「長を舉ぐる者は、逺く見る可きなり」と。天の裁大なり、故に能く兼ねて萬物を覆う。地の裁大なり、故に能く兼ねて萬物を載す。人主の裁大なり、故に物を容るること多くして衆人比するを得。故に曰く、「裁大なる者は、衆の比する所なり」と。貴富尊顯は、民歸して之を樂しむ、人主欲せざるは莫きなり。故に民の己を懷い樂しむを欲する者は、必ず道德に服して厭かざれば、而ち民之を懷い樂しむ。故に曰く、「美人の懷は、定服して厭かざるなり」と。
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『管子』形勢山高くして崩れざれば、則ち祈羊至る。淵深くして涸れざれば、則ち沈玉極まる。天は其の常を變えず、地は其の則を易えず、春秋冬夏は其の節を更めず、古今一なり。蛟龍水を得て神立つ可きなり、虎豹幽を得て威載す可きなり、風雨は鄉無くして怨怒及ばざるなり。貴きには以て令を行う有り、賤しきには以て卑しきを忘るる有り、寿夭貧富は徒らに歸する無きなり。命を銜む者は、君の尊きなり。辭を受くる者は、名の運ばるるなり。
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『管子』形勢解言いて道德忠信孝弟を語る者は、此れ言に弃つる無き者なり。天は公平にして私無し、故に美惡覆わざるは莫し。地は公平にして私無し、故に小大載せざるは莫し。弃つる無きの言は、公平にして私無し、故に賢不肖用いざるは莫し。故に弃つる無きの言なる者は、天地の私無きに參伍するなり。故に曰く、「弃つる無きの言有る者は、必ず之を天地に參す」と。明主の物を官するや、其の長ずる所に任じ、其の短なる所に任ぜず。故に事成らざる無くして、功立たざる無し。亂主は物の各おの長ずる所短なる所有るを知らずして、責むるに必ず備わるを以てす。夫れ事を慮り物を定め、禮義を辯明するは、人の長ずる所にして、蝚蝯の短なる所なり。髙きに緣り險を出づるは、蝚蝯の長ずる所にして、人の短なる所なり。蝚蝯の長ずる所を以て人に責む、故に其の令廢れて責塞がらず。故に曰く、「岸を墜つること三仞、人の大いに難しとする所なり、而して蝚蝯は焉に飲む」と。
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『管子』形勢解日月は、萬物を昭察する者なり。天に雲氣多く、蔽い蓋う者衆ければ、則ち日月明らかならず。人主は猶お日月のごときなり、羣臣に姦多く私を立てて以て其の主を擁蔽すれば、則ち主は其の臣下を昭察するを得ず、臣下の情上に通ずるを得ず、故に姦邪日に多くして人主愈々蔽わる。故に曰く、「日月明らかならざるは、天易わらざるなり」と。山は、物の髙き者なり、地險穢にして平易ならざれば、則ち山見わるるを得ず。人主は猶お山のごときなり、左右に黨比周する多くして以て其の主を壅げば、則ち主見わるるを得ず。故に曰く、「山髙くして見えざるは、地易わらざるなり」と。人主言を出だし、民心に逆らわず、理義に悖らず、其の言う所以て天下を安んずるに足る者は、人唯だ其の復た言わざるを恐るるなり。言を出だして父子の親を離し、君臣の道を疏くし、天下の衆を害するは、此れ言の復た可からざる者なり、故に明主は言わざるなり。故に曰く、「言いて復た可からざる者は、君言わざるなり」と。
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