管子 / 禁藏
故凡治亂之情,皆道上始。故善者圉之以害,牽之以利,能利害者,財多而過寡矣。夫凡人之情,見利莫能勿就,見害莫能勿避。其商人通賈,倍道兼行,夜以續日,千里而不逺者,利在前也。漁人之入海,海深萬仞,就彼逆流,乘危百里,宿夜不出者,利在水也。故利之所在,雖千仞之山,無所不上;深源之下,無所不入焉。故善者,勢利之在,而民自美安,不推而往,不引而來,不煩不擾,而民自富。如鳥之覆卵,無形無聲,而唯見其成。
新字:故凡治乱之情,皆道上始。故善者圉之以害,牽之以利,能利害者,財多而過寡矣。夫凡人之情,見利莫能勿就,見害莫能勿避。其商人通賈,倍道兼行,夜以続日,千里而不遠者,利在前也。漁人之入海,海深万仞,就彼逆流,乗危百里,宿夜不出者,利在水也。故利之所在,雖千仞之山,無所不上;深源之下,無所不入焉。故善者,勢利之在,而民自美安,不推而往,不引而来,不煩不擾,而民自富。如鳥之覆卵,無形無声,而唯見其成。
書き下し
故に凡そ治亂の情は、皆な上に道りて始まる。故に善き者は之を圉ぐに害を以てし、之を牽くに利を以てす。能く利害する者は、財多くして過ち寡なし。夫れ凡そ人の情、利を見て就く勿き能わず、害を見て避くる勿き能わず。其の商人通賈、道を倍し行を兼ね、夜を以て日に續ぎ、千里にして逺しとせざるは、利前に在ればなり。漁人の海に入るや、海の深きこと萬仞、彼の逆流に就き、危うきに乘ずること百里、宿夜出でざるは、利水に在ればなり。故に利の在る所、千仞の山と雖も、上らざる所無し。深源の下も、入らざる所無し。故に善き者は、勢利の在れば、而ち民自ら美安し、推さずして往き、引かずして來たり、煩わさず擾さずして、民自ら富む。鳥の卵を覆うが如く、無形無聲にして、唯だ其の成るを見るのみ。
現代語訳
治まりと乱れの実情は、みな上から始まる。だからうまくやる者は、害によって防ぎ、利によって引く。利と害を使える者は、財が多く過ちが少ない。人の情として、利を見れば近づかずにいられず、害を見れば避けずにいられない。商人が道を倍にし行程を重ね、夜を昼に継いで、千里を遠いとしないのは、利が前にあるからである。漁師が海に入り、海は万仞の深さがあり、逆らう流れに向かい、危ういところを百里も進み、夜も出てこないのは、利が水にあるからである。だから利のあるところなら、千仞の山でも登らないところはなく、深い源の底でも入らないところはない。だからうまくやる者は、勢いと利がそこにあるようにするだけで、民はおのずと安らかになり、押さなくても行き、引かなくても来て、煩わせず騒がせずに民はおのずと富む。鳥が卵を覆うように、形もなく声もなく、ただそれが成るのを見るだけである。
解説
この章句が説くこと
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『君子訓』巻之下一君子は国土の利を取り尽さずして民に与へ、運上課役をかけて民を苦めず。然れども民の利を恣にする事を禁ず。且仕へて君の禄を得る者は、商をなし利を求むべからず。故に古語にも、大を受くる者は小を取らずといへり。天道の物を生ずる、二ながら全き事なし、牙ある獣には角なし、角ある獣には上歯なし、翼あるものには手なし、花よきものは実あしし、実よきものは花あしし。士として君の禄を得る者、民と利を争ひ、民の財を奪ふは、天道に背けり。
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『都鄙問答』卷之二・或學者、商人ノ學問ヲ譏ノ段天下万民産業なくして、何を以て立つべきや。商人の買利も、天下御免しの禄なり。夫を汝独り、売買の利ばかりを、欲心にて道なしと云ひ、商人を悪んで断絶せんとす。何を以て商人ばかりを賤しめ嫌ふことぞや。汝今にても、売買の利は渡さずと云ひて、利を引きて渡さば、天下の法破りとなるべし。上より御用仰せ付けらるるにも、利を下さるるなり。然れば商人の利は、御免し有る禄の如し。然れども田地の作得と、細工人の作料と、商人の利とは士の如くに定めて、幾百石幾十石とは云ふべからず。日本唐土にても、売買に利を得ることは定まりなり。定まりの利を得て、職分を勉むれば、自ら天下の用をなす。商人の利を受けずしては家業勉まらず。吾が禄は売買の利なるゆゑに、
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孫子・九地篇利に合いて動き、利に合わずして止まる。
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『大和俗訓』巻之四・心術下一利は天地より生じて、天下の人にあたへ養ひ給ふ理なれば、天下の公物なり。われ一人の私ものにすべからず。人とともに同じく利を得れば、人々各其所を得て害なし。身に私して、我一人利を得んとすれば、争出来て、かへつて我が身の害となる。義を行ひて自ら来る利は、真の利なり。わが益となる。むさぼり求むる利は、真の利にあらず。必身の禍となる。是利を求むるには非ず、害を求むるなり。
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『墨子』經說上平。惔然たり。利。是を得て喜べば、則ち是れ利なり。其の害は、是に非ざるなり。害。是を得て惡めば、則ち是れ害なり。其の利は、是に非ざるなり。治。吾が事、治まれり。人に南北を治むる有り。譽む。必ず其の行いなり、其の言の忻ぶなり。人をして之を督せしむ。誹る。必ず其の行いなり、其の言の忻ぶなり。譽むるに文名を以て告ぐるは、彼の實を舉ぐるなり。故。言なる者は、諸れ口能く之を出だして民するものなり。民は畫俿の若きなり。言や言と謂う、猶お名の致すがごときなり。且。前よりするを且と曰い、後よりするを己と曰う。方に然らんとするも亦た且なり。名の若き者は、君なり、若の名を以てする者なり。功は時を待たず、衣裘の若し。功は時を待たず、衣裘の若し。賞。罪は禁に在らず、惟だ害あれば罪無きも殆く姑し。上、下の功に報ゆるなり。
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『呻吟語』内篇・修身・利に處して利を讓り、名に處して名を讓る利に處すれば則ち人をして君子を做さしめ、我は小人を做す。名に處すれば則ち人をして小人を做さしめ、我は君子を做す。斯れ惑ひの甚だしきなり。聖賢は利に處して利を讓り、名に處して名を讓る。故に淡然恬然として、世と忤らず。

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