管子 / 禁藏
故聖人之制事也,能節宫室、適車輿以實藏,則國必富,位必尊。能適衣服,去玩好以奉本,而用必贍,身必安矣。能移無益之事,無補之費,通幣行禮,而黨必多,交必親矣。夫衆人多營於物,而苦其力,勞其心,故困而不贍,大者以失其國,小者以危其身。凡人之情,得所欲則樂,逢所惡則憂,此貴賤之所同有也。近之不能勿欲,逺之不能勿忘,人情皆然,而好惡不同。各行所欲,而安危異焉,然後賢不肖之形見也。
新字:故聖人之制事也,能節宫室、適車輿以実蔵,則国必富,位必尊。能適衣服,去玩好以奉本,而用必贍,身必安矣。能移無益之事,無補之費,通幣行礼,而党必多,交必親矣。夫衆人多営於物,而苦其力,労其心,故困而不贍,大者以失其国,小者以危其身。凡人之情,得所欲則楽,逢所悪則憂,此貴賤之所同有也。近之不能勿欲,遠之不能勿忘,人情皆然,而好悪不同。各行所欲,而安危異焉,然後賢不肖之形見也。
書き下し
故に聖人の事を制するや、能く宫室を節し車輿を適にして以て藏を實たせば、則ち國必ず富み、位必ず尊し。能く衣服を適にし、玩好を去りて以て本を奉ずれば、而ち用必ず贍り、身必ず安し。能く無益の事、無補の費を移し、幣を通じ禮を行えば、而ち黨必ず多く、交必ず親しむ。夫れ衆人は多く物に營まれて、其の力を苦しめ、其の心を勞す、故に困しみて贍らず、大なる者は以て其の國を失い、小なる者は以て其の身を危うくす。凡そ人の情、欲する所を得れば則ち樂しみ、惡む所に逢えば則ち憂う、此れ貴賤の同じく有る所なり。之に近づけば欲する勿き能わず、之を逺ざくれば忘るる勿き能わず、人情皆な然り、而して好惡同じからず。各おの欲する所を行いて、安危焉に異なる、然る後に賢不肖の形見るるなり。
現代語訳
聖人が事を制するときは、宮室を節し車を程よくして蔵を満たせば、国は必ず富み位は必ず尊くなる。衣服を程よくし、もてあそぶ物を去って本を支えれば、入り用は必ず足り、身は必ず安らかである。役に立たない事や補いにならない出費を移し、幣を通わせ礼を行えば、味方は必ず多く、交わりは必ず親しくなる。多くの人は物に取り込まれて力を苦しめ心を労するから、行き詰まって足りず、大きくは国を失い、小さくは身を危うくする。人の情として、欲するものを得れば楽しみ、憎むものに出会えば憂える。これは貴い者も賤しい者も同じである。近づければ欲さずにいられず、遠ざければ忘れずにいられない。人の情はみなそうで、それでいて好き嫌いは同じでない。それぞれ欲するところを行って、安らかさと危うさが分かれる。そのうえで賢と不肖のかたちが見えてくる。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
論語・述而篇子は語らず、怪・力・乱・神。
-
論語・郷党篇食は精を厭わず、膾は細きを厭わず。食の饐して餲せると、魚の餒れて肉の敗れたるとは、食らわず。色悪しきは食らわず、臭悪しきは食らわず。飪を失えるは食らわず、時ならざるは食らわず。割正しからざるは食らわず、其の醬を得ざれば食らわず。肉は多しと雖も、食気に勝たしめず。唯だ酒は量無きも、乱に及ばず。沽える酒と市える脯とは食らわず。薑を撤てて食らい、多くは食らわず。公に祭れば、肉を宿さず。祭肉は三日を出ださず。三日を出ずれば、之を食らわず。食らうに語らず、寝ぬるに言わず。疏食菜羹瓜と雖も祭れば、必ず斉如たり。
-
論語・学而篇有子曰く、「礼の用は和を貴しと為す。先王の道も斯を美と為す。小大之に由れども、行われざる所有り。和を知りて和すれども、礼を以て之を節せざれば、亦行う可からざるなり。」
-
葉隠・聞書第一病気(びょうき)などは気持(きも)ちから重(おも)くなるものなり。我(われ)は老後(ろうご)に御用(ごよう)に立(た)つべしとの大願(たいがん)ありしゆえ、親(おや)七十歳(しちじゅっさい)の子(こ)にて、影法師(かげぼうし)のようにありしかども、姪事(いんじ)を慎(つつし)み、灸治(きゅうじ)も間(ま)もなくいたし候(そうろう)なり。これにて慥(たし)かに覚(おぼ)えあり。我(われ)大願(たいがん)あり、七生(しちしょう)までも御家(おいえ)の士(し)に生(う)まれ出(い)で出(い)で、本望(ほんもう)を遂(と)ぐべしと、しかと思(おも)い込(こ)み候(そうろう)なり。
-
荀子・礼論篇故に尊の玄酒を尚ぶや、俎の生魚を尚ぶや、豆の大羹を先にするや、一なり。
-
老子・第12章五色は人の目をして盲ならしめ、五音は人の耳をして聾ならしめ、五味は人の口をして爽なわしむ。馳騁畋猟は人の心をして発狂せしめ、得難きの貨は人の行いをして妨げしむ。是を以て聖人は腹を為して目を為さず。故に彼を去りて此を取る。