管子 / 七主七臣
夫倉庫非虚空也,商宦非虚壞也,法令非虚亂也,國家非虚亡也。彼時有春秋,嵗有敗凶,政有急緩。政有急緩,故物有輕重;嵗有敗凶,故民有義不足;時有春秋,故榖有貴賤,而上不調淫,故游商得以什伯其本也。百姓之不田,貧富之不訾,皆用此作。城郭不守,兵士不用,皆道此始。夫亡國踣家者,非無壤土也,其所事者非其功也。夫凶嵗雷旱,非無雨露也,其燥濕非其時也。亂世煩政,非無法令也,其所誅賞者非其人也。暴主迷君,非無心腹也,其所取舍非其術也。
新字:夫倉庫非虚空也,商宦非虚壊也,法令非虚乱也,国家非虚亡也。彼時有春秋,歳有敗凶,政有急緩。政有急緩,故物有軽重;歳有敗凶,故民有義不足;時有春秋,故榖有貴賤,而上不調淫,故游商得以什伯其本也。百姓之不田,貧富之不訾,皆用此作。城郭不守,兵士不用,皆道此始。夫亡国踣家者,非無壤土也,其所事者非其功也。夫凶歳雷旱,非無雨露也,其燥湿非其時也。乱世煩政,非無法令也,其所誅賞者非其人也。暴主迷君,非無心腹也,其所取舎非其術也。
書き下し
夫れ倉庫は虚空なるに非ざるなり。商宦は虚しく壞るるに非ざるなり。法令は虚しく亂るるに非ざるなり。國家は虚しく亡ぶるに非ざるなり。彼の時に春秋有り、歲に敗凶有り、政に急緩有り。政に急緩有り、故に物に輕重有り。歲に敗凶有り、故に民に義足らざる有り。時に春秋有り、故に榖に貴賤有り。而るに上調えて淫せざれば、故に游商は以て其の本を什伯するを得るなり。百姓の田せざる、貧富の訾らざる、皆な此を用て作る。城郭守られず、兵士用いられざる、皆な此に道りて始まる。夫れ國を亡ぼし家を踣す者は、壤土無きに非ざるなり、其の事とする所の者其の功に非ざればなり。夫れ凶歲雷旱は、雨露無きに非ざるなり、其の燥濕其の時に非ざればなり。亂世の煩政は、法令無きに非ざるなり、其の誅賞する所の者其の人に非ざればなり。暴主迷君は、心腹無きに非ざるなり、其の取舍する所其の術に非ざればなり。
現代語訳
倉が空になるのは、理由なしにではない。商いや官が壊れるのも、法令が乱れるのも、国が滅びるのも、理由なしにではない。時には春と秋があり、年には不作と凶作があり、政には急ぐときとゆるめるときがある。政に急緩があるから物に軽重があり、年に不作と凶作があるから民に足りないことがあり、時に春と秋があるから穀物に高い安いがある。それなのに上が調えずみだれるままにしておくから、渡り歩く商人は元手を十倍百倍にできるのである。民が田を耕さなくなるのも、貧富が計れなくなるのも、みなここから起こる。城が守られず、兵が使えなくなるのも、みなここから始まる。国を滅ぼし家を倒す者は、土地がないのではない。手がけていることが功にならないからである。凶作の年の雷と旱は、雨や露がないのではない。乾きと湿りが時に合っていないからである。乱れた世の煩わしい政は、法令がないのではない。誅し賞する相手が、その人でないからである。乱暴な主も迷った君も、腹心がいないのではない。取り捨てのやり方が、その術でないからである。
解説
この章句が説くこと
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『管子』七主七臣故に春の政禁ぜざれば、則ち百長生ぜず。夏の政禁ぜざれば、則ち五榖成らず。秋の政禁ぜざれば、則ち姦邪勝たれず。冬の政禁ぜざれば、則ち地氣藏まらず。四者俱に犯さば、則ち隂陽和せず、風雨時ならず、大水州を漂わし邑を流し、大風屋を漂わし樹を折り、火暴かに焚き、地草を燋き、天冬に雷し、地冬に霆す。草木夏に落ちて秋に榮え、蟄蟲藏まらず、死すべき者生き、蟄すべき者鳴き、苴に螣蟇多く、山に蟲多く、六畜蕃らず、民多く夭死し、國貧しく法亂れ、逆氣下に生ず。故に曰く、臺榭相望む者は、亡國の廡なり。馳車國に充つる者は、寇を追うの馬なり。羽劒珠飾なる者は、生を斬るの斧なり。文采纂組なる者は、功を燔くの窑なりと。明王は其の然るを知る、故に逺ざけて近づけざるなり。能く此を去りて彼を取れば、則ち人主の道備わる。
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『管子』權脩故に上本事を好まざれば則ち末產禁ぜられず、末產禁ぜられざれば則ち民時事に緩くして地利を輕んず、地利を輕んじて田野の辟け、倉廩の實つるを求むるは、得可からざるなり。商賈朝に在れば則ち貨財上に流れ、婦人事を言えば則ち賞罰信ならず、男女別無ければ則ち民に廉恥無し。貨財上に流れ、賞罰信ならず、民に廉恥無くして、百姓の難に安んじ、兵士の節に死するを求むるは、得可からざるなり。朝廷肅まらず、貴賤明らかならず、長幼分かれず、度量審らかならず、衣服等無く、上下節を淩ぎて、百姓の主の政令を尊ぶを求むるは、得可からざるなり。上詐謀閒欺を好み、臣下賦斂して競い得、民をして偷壹ならしむれば、則ち百姓疾み怨み、而して下の上に親しむを求むるは、得可からざるなり。地有りて本事に務めず、國に君として民を壹にする能わずして、宗廟社稷の危うき無きを求むるは、得可からざるなり。
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『管子』七主七臣夫れ男田せず、女緇せず、工技無用に力めて、而も土地の毛あり、倉庫滿實せんことを欲するは、得可からざるなり。土地毛あらざれば、則ち人足らず。人足らざれば、則ち逆氣生ず。逆氣生ずれば、則ち令行われず。然らば彊敵發して起こらば、善き者と雖も存する能わず。何を以て其の然るを効かさんや。曰く、昔者桀・紂是れなり。賢忠を誅し、讒賊の士に近づきて、婦人を貴び、殺すを好みて勇ならず、富を好みて貧を忘れ、馳獵窮まり無く、鼓樂厭くこと無し。瑶臺玉餔も處るに足らず、馳車千駟も乘材とするに足らず。女樂三千人、鐘石絲竹の音絶えず、百姓罷乏し、君子死する無く、卒に人有る莫く、人に反心有り。周の武王に遇い、遂に周氏の禽と為る。此れ物に營まれて其の情を失う者なり、淫樂に愉しみて後患を忘るる者なり。故に用を設くるに度無ければ、國家踣る。事を舉ぐるに時ならざれば、必ず其の菑を受く。
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『管子』國蓄凡そ將に國を為めんとするに、輕重に通ぜざれば、籠を為して以て民を守るべからず。民の利を調え通ずる能わざれば、以て制を語りて大治を為すべからず。是の故に萬乗の國には、萬金の賈有り。千乗の國には、千金の賈有り。然る者は何ぞや。國多く利を失えば、則ち臣は其の忠を盡くさず、士は其の死を盡くさざればなり。歳に凶穰有り、故に榖に貴賤有り。令に緩急有り、故に物に輕重有り。然り而して人君治むる能わず、故に蓄賈をして市に游ばしめ、民の給せざるに乗じて、其の本を百倍せしむ。地を分かつこと一の若きも、彊き者は能く守る。財を分かつこと一の若きも、智なる者は能く收む。智なる者は人に什倍するの功有り、愚なる者は本に賡わざるの事有り。然り而して人君調うる能わず、故に民に相い百倍するの生有るなり。夫れ民は富めば則ち祿を以て使うべからず、貧しければ則ち罰を以て威すべからず。法令の行われず、萬民の治まらざるは、貧富の齊しからざればなり。
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『管子』七主七臣侵主は好惡もて法に反して以て自ら傷り、決し難きを知るを喜びて以て明を塞ぎ、狙に從いて小察を好み、事に常無くして法令申ぬ。然らずんば國勢を失う。芒主は目に五色を伸べ、耳に常に五聲あり、四鄰を計らず、聲を司るも聽かず、則ち臣下恣に行いて、國權大いに傾く。然らずんば惡む所身に及ぶ。勞主は分職を明らかにせず、上下相干し、臣主則を同じくし、刑振うに豐を以てし、豐振うに刻を以てす。之を去れば亂れ、之に臨めば殆うし、則ち後世何をか得ん。振主は喜怒度無く、嚴誅赦す無く、臣下振怒して、錯く所を知らざれば、則ち人其の故に反る。然らずんば法數日に衰えて、國固を失う。芒主は人情に通じて以て疑を質す、故に臣下に信無し。盡く自ら其の事を治むれば則ち事多く、多ければ則ち昬く、昬ければ則ち緩急俱に植つ。然らずんば善からざる所を見て、餘力自ら失いて罰す。故に主は虞れて安く、吏は肅にして嚴に、民は樸にして親しみ、官に邪吏無く、朝に姦臣無く、下に侵爭無く、世に刑民無し。
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『管子』五輔政を為す能わざる者は、田疇荒れて國邑虛しく、朝廷兇にして官府亂れ、公法廢れて私曲行われ、倉廩虛しくして囹圄實ち、賢人退きて姦民進む。其の君子は諂諛を上びて中正を下し、其の士民は利を得るを貴びて武勇を賤しみ、其の庶人は飲食を好みて耕農を惡む。是に於いて財用匱しくして食飲薪菜乏し。上は彌々殘苟にして解舍無く、下は愈々覆鷙にして聽從せず、上下交々引きて和同せず。故に處りて安からず動きて威あらず、戰いて勝たず守りて固からず、是を以て小なる者は兵挫けて地削られ、大なる者は身死して國亡ぶ。故に此を以て之を觀れば、則ち政は慎まざる可からざるなり。