管子 / 任法
故貴不能威,富不能祿,賤不能事,近不能親,美不能淫也。植固而不動,竒邪乃恐,竒革而邪化,令往而民移。故聖君失度量,置儀法,如天地之堅,如列星之固,如日月之明,如四時之信,然故令往而民從之,而失君則不然,法立而還廢之,令出而後反之,枉法而從私,毁令而不全,是貴能威之,富能祿之,賤能事之,近能親之,美能淫之也。此五者不禁於身,是以羣臣百姓人挾其私而幸其主。彼幸而得之,則主日侵。彼幸而不得,則怨日產。夫日侵而產怨,此失君之所慎也。
新字:故貴不能威,富不能禄,賤不能事,近不能親,美不能淫也。植固而不動,奇邪乃恐,奇革而邪化,令往而民移。故聖君失度量,置儀法,如天地之堅,如列星之固,如日月之明,如四時之信,然故令往而民従之,而失君則不然,法立而還廃之,令出而後反之,枉法而従私,毁令而不全,是貴能威之,富能禄之,賤能事之,近能親之,美能淫之也。此五者不禁於身,是以羣臣百姓人挟其私而幸其主。彼幸而得之,則主日侵。彼幸而不得,則怨日産。夫日侵而産怨,此失君之所慎也。
書き下し
故に貴も威す能わず、富も祿す能わず、賤も事う能わず、近も親しむ能わず、美も淫する能わざるなり。植固くして動かざれば、竒邪乃ち恐れ、竒革まりて邪化し、令往きて民移る。故に聖君は度量を失せしめ、儀法を置くこと、天地の堅きが如く、列星の固きが如く、日月の明らかなるが如く、四時の信なるが如し。然る故に令往きて民之に從う。而して失君は則ち然らず、法立ちて還た之を廢し、令出でて後に之に反し、法を枉げて私に從い、令を毁ちて全からず。是れ貴は能く之を威し、富は能く之に祿し、賤は能く之に事え、近は能く之に親しみ、美は能く之を淫するなり。此の五つの者身に禁ぜざれば、是を以て羣臣百姓は人ごとに其の私を挾みて其の主に幸う。彼幸いにして之を得れば、則ち主は日に侵さる。彼幸いにして得ざれば、則ち怨み日に產まる。夫れ日に侵されて怨みを產むは、此れ失君の慎む所なり。
現代語訳
だから貴い者も威圧できず、富む者も禄で釣れず、賤しい者も取り入れず、近しい者も親しみで動かせず、美しい者もみだらに引き込めない。立てたものが固くて動かなければ、奇をてらう者もよこしまな者も恐れ、奇は改まり邪は変わり、令が行けば民が動く。だから聖君は度量を示し、基準と法を置くこと、天地の堅さのように、並ぶ星の固さのように、日月の明るさのように、四季の確かさのようにする。だから令が行けば民が従う。失われた君はそうではない。法を立ててすぐ廃し、令を出してあとで取り消し、法を曲げて私に従い、令を壊して全うしない。これでは貴い者が威圧でき、富む者が禄で釣れ、賤しい者が取り入り、近しい者が親しみで動かし、美しい者がみだらに引き込める。この五つを自分に禁じなければ、群臣も民も、それぞれ私を抱えて主に取り入ろうとする。うまく取り入れれば主は日ごとに侵され、取り入れなければ恨みが日ごとに生まれる。日ごとに侵され恨みを生むのは、失われた君が慎むべきところである。
解説
この章句が説くこと
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『管子』任法聖君は法に任じて智に任ぜず、數に任じて説に任ぜず、公に任じて私に任ぜず、大道に任じて小物に任ぜず、然る後に身佚にして天下治まる。失君は則ち然らず、法を舍てて智に任ず、故に民は事を舍てて譽を好む。數を舍てて説に任ず、故に民は實を舍てて言を好む。公を舍てて私を好む、故に民は法を離れて妄りに行う。大道を舍てて小物に任ず、故に上は勞煩し、百姓は迷惑して、國家治まらず。聖君は則ち然らず、道の要を守り、佚樂に處り、馳騁弋獵、鐘鼓竽瑟、宫中の樂、禁圉する無きなり。思わず慮らず、憂えず圖らず、身體を利し、形軀を便にし、壽命を養い、垂拱して天下治まる。是の故に人主に能く其の道を用うる者有れば、心を事とせず、意を勞せず、力を動かさずして、土地自ら辟け、囷倉自ら實ち、蓄積自ら多く、甲兵自ら强く、羣臣に詐偽無く、百官に姦邪無く、奇術技藝の人も、敢えて高言孟行して、以て其の情に過ぎ、以て其の主に遇する莫し。
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『管子』任法凡そ主と為りて其の法を用うるを得ず、其の意に適わず、臣を顧みて行い、法を離れて貴臣に聽く、此れ所謂貴くして之を威すなり。富人は金玉を用いて主に事えて來たり、主法を離れて之に聽く、此れ所謂富みて之に祿するなり。賤人は服約卑敬悲色を以て其の主に告愬し、主因りて法を離れて之に聽く、所謂賤しくして之に事うるなり。近き者は偪近親愛を以て其の主に求むる有り、主因りて法を離れて之に聽く、此れ所謂近くして之に親しむなり。美なる者は巧言令色を以て其の主に請い、主因りて法を離れて之に聽く、此れ所謂美にして之を淫するなり。
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『管子』任法故に明王の恒とする所の者は二つ。一に曰く法を明らかにして固く之を守る。二に曰く民の私を禁じて之を收め使う。此の二つの者は、主の恒とする所なり。夫れ法なる者は、上の民を一にし下を使う所以なり。私なる者は、下の法を侵し主を亂す所以なり。故に聖君は儀を置き法を設けて固く之を守る。然る故に諶杵習士聞識博學の人も亂す可からざるなり。衆彊富貴私勇の者も侵す能わざるなり。信近親愛の者も離す能わざるなり。珍怪奇物も惑わす能わざるなり。萬物百事、法の中に在るに非ざる者は動かす能わざるなり。故に法なる者は、天下の至道なり、聖君の實用なり。
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『管子』任法今天下は則ち然らず、皆な善法有れども守る能わざるなり。然る故に諶杵習士聞識博學の士は能く其の智を以て法を亂し上を惑わし、衆彊富貴私勇の者は能く其の威を以て法を犯し侵陵し、鄰國の諸侯は能く其の權を以て子を置き相を立て、大臣は能く其の私を以て百姓を附け、公財を翦りて以て私士に祿す。凡そ是くの如くして、法の行われ、國の治まるを求むるは、得可からざるなり。聖君は則ち然らず、卿相も其の私を翦るを得ず、羣臣も其の親愛する所を辟くを得ず。聖君も亦た其の法を明らかにして固く之を守り、羣臣は脩め通じ輻湊して、以て其の主に事え、百姓は輯睦して令を聽き、法に道りて以て其の事に從う。故に曰く、法を生ずる有り、法を守る有り、法に法る有りと。夫れ法を生ずる者は君なり、法を守る者は臣なり、法に法る者は民なり。君臣上下貴賤皆な法に從う、此れを大治を為すと謂う。
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『管子』法法猛毅の君は外難を免れず、懦弱の君は内亂を免れず。猛毅の君なる者は誅を輕んず、誅を輕んずるの流れは、道正しき者安んぜず、道正しき者安んぜざれば則ち材能の臣去り亡ぶ。彼の智者は吾が情偽を知り、敵の為に我を謀れば、則ち外難是より至る。故に曰く、猛毅の君は外難を免れずと。懦弱の君なる者は誅を重んず、誅を重んずるの過ちは、邪を行う者革まらず、邪を行う者久しくして革まらざれば則ち羣臣比周す、羣臣比周すれば則ち美惡を蔽う、美惡を蔽えば則ち内亂是より起こる。故に曰く、懦弱の君は内亂を免れずと。明君は親戚の為に其の社稷を危うくせず、社稷は親より戚し。君の欲の為に其の令を變ぜず、令は君より尊し。重寶の為に其の威を分かたず、威は寶より貴し。愛民の為に其の法を虧かず、法は民より愛し。
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