管子 / 白心
人言善亦勿聽,人言惡亦勿聽。持而待之,空然勿兩之,淑然自清,無以旁言為事成。察而徵之無聽辨萬物歸之,美惡乃自見。天或維之,地或載之。天莫之維則天以墜矣,地莫之載則地以沈矣。夫天不墜,地不沈,夫或維而載之也夫。又况於人,人有治之,辟之若夫靁鼓之動也。夫不能自搖者,夫或□之。夫或者何?若然者也。視則不見,聽則不聞,灑乎天下滿,不見其塞。集於顔色,知於肌膚,責其往來,莫知其時。薄乎其方也,韕乎其圜也,韕韕乎莫得其門。故口為聲也,耳為聽也,目有視也,手有指也,足有履也,事物有所比也。當生者生,當死者死,言有西有東,各死其鄉。
新字:人言善亦勿聴,人言悪亦勿聴。持而待之,空然勿両之,淑然自清,無以旁言為事成。察而徴之無聴弁万物帰之,美悪乃自見。天或維之,地或載之。天莫之維則天以墜矣,地莫之載則地以沈矣。夫天不墜,地不沈,夫或維而載之也夫。又況於人,人有治之,辟之若夫靁鼓之動也。夫不能自揺者,夫或□之。夫或者何?若然者也。視則不見,聴則不聞,灑乎天下満,不見其塞。集於顔色,知於肌膚,責其往来,莫知其時。薄乎其方也,韕乎其圜也,韕韕乎莫得其門。故口為声也,耳為聴也,目有視也,手有指也,足有履也,事物有所比也。当生者生,当死者死,言有西有東,各死其鄉。
書き下し
人善しと言うも亦た聽く勿かれ、人惡しと言うも亦た聽く勿かれ。持して之を待ち、空然として之を兩つにする勿かれ。淑然として自ら清く、旁言を以て事の成ると為す無かれ。察して之を徵し、聽く無くして萬物を辨ずれば之に歸し、美惡乃ち自ら見る。天或いは之を維ぎ、地或いは之を載す。天之を維ぐ莫くんば則ち天以て墜ちん、地之を載する莫くんば則ち地以て沈まん。夫れ天墜ちず、地沈まざるは、夫れ或いは維ぎて之を載すればなり。又た况んや人に於いてをや。人之を治むる有り、之を辟うれば夫の靁鼓の動くが若きなり。夫れ自ら搖ぐ能わざる者は、夫れ或いは之を□す。夫の或なる者は何ぞや。然る者の若きなり。視れども則ち見えず、聽けども則ち聞こえず、灑乎として天下に滿ち、其の塞がるを見ず。顔色に集まり、肌膚に知られ、其の往來を責むるも、其の時を知る莫し。薄乎として其れ方なり、韕乎として其れ圜なり、韕韕乎として其の門を得る莫し。故に口は聲を為し、耳は聽を為し、目は視ること有り、手は指すこと有り、足は履むこと有り、事物は比する所有り。生に當たる者は生き、死に當たる者は死す、西有り東有りと言い、各おの其の鄉に死す。
現代語訳
人が善いと言っても聴くな、人が悪いと言っても聴くな。手に持って待ち、空のままにして二つに分けるな。清らかにして自分から澄み、傍らの言葉で事が決まったとしてはならない。よく見て確かめ、あれこれ聴かずに万物を見分ければ、物のほうから帰ってきて、善し悪しはおのずと現れる。天は何かがそれをつなぎ、地は何かがそれを載せている。天をつなぐものがなければ天は落ち、地を載せるものがなければ地は沈む。天が落ちず地が沈まないのは、何かがつないで載せているからである。まして人においてはなおさらである。人にはそれを治めるものがあって、たとえるなら雷や太鼓が鳴り響くようなものである。自分では揺れることのできないものは、何かがそれを動かしている。その何かとは何か。そうであるもの、としか言えない。見ても見えず、聴いても聞こえず、あまねく天下に満ちていて、塞がっているところがない。顔色に集まり、肌に感じられ、その行き来を問いただしても、その時を知る者はない。薄くひろがってそれは方形であり、丸くまとまってそれは円である。丸くまとまって、その門を見つけられない。だから口は声を出し、耳は聴き、目は見るところがあり、手は指すところがあり、足は踏むところがあり、事物には並ぶところがある。生きるべき者は生き、死ぬべき者は死ぬ。西があり東があると言い、それぞれその郷で死ぬ。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『管子』白心左なる者は、出づる者なり。右なる者は、入る者なり。出づる者にして人を傷つけざれば、入る者自ら傷つくなり。日ならず月ならずして事以て從い、卜せず筮せずして謹みて吉凶を知る。是を寛乎たる形と謂い、徒だ居て名を致す。善を去るの言、善を為すの事、事成りて顧みて反りて名無し。能なる者は名無く、事に從いて事無し。出入を審量して、物の載する所を觀る。孰か能く法として法無からんや。始めて始め無からんや。終わりて終わり無からんや。弱くして弱き無からんや。故に曰く、美なるかな岪岪たりと。故に曰く、中有り中有り、孰か能く夫の中の衷を得んやと。故に曰く、功成る者は隳れ、名成る者は虧くと。故に曰く、孰か能く名と功とを弃てて、還りて衆人と同じからんやと。孰か能く功と名とを弃てて、還り反りて成る無からんや。成る無きは其の成るを貴ぶ有り、成る有るは其の成る無きを貴ぶなり。日極まれば則ち仄き、月滿つれば則ち虧く。極の徒は仄き、滿の徒は虧け、巨の徒は滅ぶ。孰か能く已みて己無からんや。夫の天地の紀に效え。
-
『管子』心術上天は虛と曰い、地は静と曰う、乃ち伐らず。其の宫を潔くし、其の門を開き、私を去りて言う毋くんば、神明存するが若し。紛乎として其れ亂るるが若きも、之を静かにすれば自ら治まる。强は徧く立つ能わず、智は盡く謀る能わず。物は固より形有り、形は固より名有り、名當たる、之を聖人と謂う。故に必ず不言無為の事を知り、然る後に道の紀を知る。形を殊にし埶を異にするも萬物と理を異にせず、故に以て天下の始と為す可し。人の殺す可きは、其の死を惡むを以てなり。其の利とせざる可きは、其の利を好むを以てなり。是を以て君子は好に怵れず、惡に迫られず。恬愉無為にして、智と故とを去る。其の應ずるや、設くる所に非ざるなり。其の動くや、取る所に非ざるなり。過ちは自ら用うるに在り、罪は變化に在り。是の故に有道の君は、其の處るや知る無きが若く、其の物に應ずるや之に偶するが若し、静因の道なり。
-
『管子』內業之を得て舍つる勿かれ、耳目淫せず、心に他圖無し。正心中に在れば、萬物度を得。道は天下に滿ち、普く民の所に在り、民知る能わざるなり。一言の解、上は天に察かに、下は地を極め、九州に蟠り滿つ。何をか之を解すと謂う。心の安きに在り。我が心治まれば、官乃ち治まる。我が心安んずれば、官乃ち安んず。之を治むる者は心なり、之を安んずる者は心なり。心以て心を藏し、心の中に又た心有り。彼の心の心は、音以て言に先んず。音ありて然る後に形あり、形ありて然る後に言あり、言ありて然る後に使あり、使ありて然る後に治まる。治まらざれば必ず亂れ、亂るれば乃ち死す。
-
『管子』白心事は、適く有りて適く無し、適く有るが若し。觽は解く可からざるを解きて、而る後に解く。故に善く事を舉ぐる者は、國人其の解を知る莫し。善を為すか、提提とする毋かれ。不善を為すか、將に刑に陷らんとす。善不善、信を取りて止むのみ。左の若く右の若く、正中のみ。日月に縣かりて、已む無きなり。愕愕たる者は天下を以て憂いと為さず、刺刺たる者は萬物を以て筴と為さず。孰か能く刺刺を弃てて愕愕と為らんや。
-
『管子』白心憲術を言い難きは、同を須ちて出づ。益す言無く、損ずる言無くんば、近ごろ以て免る可し。故に曰く、何をか知ると知らんや、何をか謀ると謀らんや。審らかにして出づる者は彼自ら來たる。自ら知る、稽と曰う。人を知る、濟と曰う。知苟しくも適えば、天下の周と為す可し。内固まりて之を一にすれば、長久と為す可し。論じて之を用うれば、以て天下の王と為す可し。天は視て精なり、四璧にして請を知る。壤土にして與に生ず、能く夫の風と波との若きか。唯だ其の適かんと欲する所なり。故に子にして其の父に代わる、義と曰うなり。臣にして其の君に代わる、簒と曰うなり。簒何ぞ能く歌わん。武王是れなり。故に曰く、孰か能く辯と巧とを去りて、還りて衆人と道を同じくせんやと。故に曰く、思索精なる者は明益々衰え、德行脩まる者は王道狹く、名利に臥す者は生を寫して危うしと。周く六合の内を知る者は、吾生の為に阻まるる有るを知るなり。持して之を滿たすは、乃ち其れ殆うきなり。名の天下に滿つるは、其の已むに若かざるなり。名進みて身退くは、天の道なり。滿盛の國は、以て仕任す可からず。滿盛の家は、以て子を嫁がしむ可からず。驕倨傲㬥の人は、與に交わる可からず。
-
『管子』白心當を建て有を立て、靖を以て宗と為し、時を以て寶と為し、政を以て儀と為す、和すれば則ち能く久し。吾が儀に非ざれば、利すと雖も為さず。吾が當に非ざれば、利すと雖も行わず。吾が道に非ざれば、利すと雖も取らず。上は天に隨い、其の次は人に隨う。人は倡えざれば和せず、天は始めざれば隨わず、故に其の言や廢れず、其の事や隨わず。始を原ね實を計り、其の生ずる所に本づく。其の象を知れば則ち其の形を索め、其の理に緣れば則ち其の情を知り、其の端を索むれば則ち其の名を知る。故に物を苞むこと衆き者は天地より大なるは莫く、物を化すること多き者は日月より多きは莫く、民の急とする所は水火より急なるは莫し。然り而して天は一物の為に其の時を枉げず、明君聖人も亦た一人の為に其の法を枉げず。天は其の行う所を行いて萬物其の利を被り、聖人も亦た其の行う所を行いて百姓其の利を被る。是の故に萬物均しく既に誇衆せり。是を以て聖人の治むるや、身を静かにして以て之を待ち、物至りて名自ら之を治む。名を正して自ら之を治め、身を竒にすれば名廢る。名正しく法備われば、則ち聖人事無し。常に居る可からざるなり、廢舍す可からざるなり、變に隨いて事を斷ずるなり、時を知りて以て度と為す。大なる者は寛く、小なる者は局し、物に餘る所有り、足らざる所有り。