管子 / 侈靡
「用貧與富,何如而可?」曰:「甚富不可使,甚貧不知恥,水平而不流,無源則遫竭。雲平而雨不甚,無委雲,雨則遫已。政平而無威則不行,愛而無親則流。親左有用,無用則辟之。若相為,有兆怨。上短下長,無度而用,則危本。不稱而祀譚次祖,犯詛渝盟傷言。敬祖禰,尊始也。齊約之信,論行也。尊天地之理,所以論威也。薄德之君之府囊也,必因成形而論於人,此政行也,可以王乎?」
新字:「用貧与富,何如而可?」曰:「甚富不可使,甚貧不知恥,水平而不流,無源則遫竭。雲平而雨不甚,無委雲,雨則遫已。政平而無威則不行,愛而無親則流。親左有用,無用則辟之。若相為,有兆怨。上短下長,無度而用,則危本。不称而祀譚次祖,犯詛渝盟傷言。敬祖祢,尊始也。斉約之信,論行也。尊天地之理,所以論威也。薄徳之君之府囊也,必因成形而論於人,此政行也,可以王乎?」
書き下し
「貧と富とを用うるは、何如にして可ならん」と。曰く、「甚だ富めば使う可からず、甚だ貧しければ恥を知らず。水平らかにして流れず、源無ければ則ち遫やかに竭く。雲平らかにして雨甚だしからず、委雲無ければ、雨則ち遫やかに已む。政平らかにして威無ければ則ち行われず、愛して親しむ無ければ則ち流る。左に親しみて用有り、用無ければ則ち之を辟く。若し相為さば、怨を兆す有り。上短く下長く、度無くして用うれば、則ち本を危うくす。稱わずして祀り、譚りて祖を次でば、詛を犯し盟を渝えて言を傷る。祖禰を敬うは、始めを尊ぶなり。齊約の信は、行を論ずるなり。天地の理を尊ぶは、威を論ずる所以なり。薄德の君の府囊なり、必ず形を成すに因りて人に論ず、此れ政の行わるるなり、以て王たる可けんや」と。
現代語訳
貧しさと富をどう使えばよいか。答えた。あまりに富めば使えず、あまりに貧しければ恥を知らない。水は平らかなら流れず、源がなければすぐに尽きる。雲も平らかなら雨は激しくならず、たまった雲がなければ雨はすぐにやむ。政も平らかなだけで威がなければ行われず、愛しても親しみがなければ流れてしまう。そばに親しめば用があり、用がなければ遠ざける。互いにそうし合えば、恨みの兆しが生まれる。上が短く下が長く、度なしに用いれば、本を危うくする。釣り合わないのに祭り、勝手に語って祖先の順を並べれば、呪いを犯し盟いを変えて言葉を損なう。祖先を敬うのは、はじまりを尊ぶことである。取り決めの信は、行いを論じることである。天地の理を尊ぶのは、威を論じるためである。徳の薄い君にとっては倉と袋にすぎない。必ず形になったところに沿って人を論じる。これが政の行われるということであり、それで王となれるだろうか。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『管子』侈靡「請う問う、之を用うるは若何」と。「必ず天地の道に辨じ、然る後に功名以て殖す可し。地利に辯じて、民富ます可し。侈靡に通じて、士戚しむ可し。君親ら事を好み、强くして以て斷を立て、仁にして以て人に任ずるを好む。君壽くして以て年を政め、百姓夭厲せず、六畜遮く育ち、五榖遮く熟し、然る後に民力用うるを得可し。鄰國の君俱に賢ならず、然る後に王たるを得」と。「俱に賢ならば若何」と。曰く、「忽然として卿を易えて移り、忽然として亊を易えて化し、變じて以て名を成すに足り、弊を承けて民之を勸め、種を慈しみて民富む。言に應じ感を待ち、物と俱に長ず。故に日月の明、風雨に應じて種う。天の覆う所、地の載する所、斯の民の良なり。有たずして天地を醜とするは、天子の事に非ざるなり。民變ずるに變ずる能わざる、是れ梲の革を傅すなり。革有りて革むる能わざれば、服す可からず。民は信に死し、諸侯は化に死す」と。
-
『管子』侈靡「强と短とを齊しく立つるは、國の若何」と。「高く之に名を予えて之を舉げ、重く之に官を予えて之を危うくし、因りて其の能を責めて以て之に隨う。猶お傶ければ則ち之を疎んじ、人をして之を圖らしむる毋かれ。猶お疎ければ則ち之を數え、人をして之を曲げしむる毋かれ。此れ之を為す所以なり」と。「大いに臣有りて甚だ大なれば、將に反りて害を為さんとす。吾患いを優にし害を除き、將に小にして能く大を察せんとするは、之を為すこと奈何」と。「之を潭根して、伐る毋かれ。之を固く事として、入る毋かれ。之を深くして、涸らす毋かれ。之を儀とせずして、助くる毋かれ。之を章明にして、滅する毋かれ。之を生榮せしめて、失う毋かれ。十言なる者も此の一に勝らず、凶なりと雖も必ず吉なり。故に平らかにして以て滿つ」と。「事無くして總べ、以て事有るを待ちて之を為すは、若何」と。「積む者は餘日を立てて侈り、車馬を美にして馳せ、酒醴を多くして靡やし、千歳食を出だす毋き、此れを本事と謂う」と。
-
『管子』君臣上是の故に將に之に與えんとするに、惠厚も供する能わず。將に之を殺さんとするに、嚴威も振るう能わず。嚴威振るう能わず、惠厚供する能わざるは、聲と實と間有ればなり。善有る者は其の賞を留めず、故に民其の利を私せず。過有る者は其の罰を宿さず、故に民其の威を疾まず。威罰の制、民に踰ゆる無くんば、則ち人上に歸親す。天の雨るが如く然り、澤下ること尺なれば、生ずること上ること尺なり。是を以て人を官して官せず、人に事とせしめて事とせず、獨立して稽うる無き者は、人主の位なり。先王の天下に在るや、民之を神明の徳に比す、先王善く之を民に牧する者なればなり。
-
『管子』侈靡「請う問う、先ず天下に合して私怨無く、强を犯して私害無きは、之を為すこと若何」と。對えて曰く、「國强しと雖も、令は必ず忠にして義を以てす。國弱しと雖も、令は必ず敬にして哀を以てす。强弱犯さざれば、則ち人聽かんと欲す。人を先にして自ら後にして、以て仁と為す無きなり。功を人に加えて得る勿くんば、槖する所の者逺く、爭う所の者外なり。明らかに私交無くんば、則ち内怨無し。大と與にすれば則ち勝ち、私交衆ければ則ち怨殺す。夷吾や、人に財を予うる者の如きは、時を奪う無きに如かず。人に食を予うる者の如きは、其の事を奪う毋きに如かず。此れを外内の患い無しと謂う」と。
-
『管子』侈靡王者は事を上び、霸者は功を生ず、本を重んずるを言うなり。是れ十禺と為す、分かちて免れて爭わざるは、人を先にして自ら後にするを言うなり。官禮の司、昭穆の離、先後功器事の治、鬼を尊びて故を守り、戰事の任、功を髙くして死を下し本事とし、功を食ましめて利を省き臣を勸む。義を上びて小利を與うる能わず。五官なる者は、人其の職を爭い、然る後に君聞く。祭の時は、賢者を上ぶなり、故に君臣掌る。君臣掌れば、則ち上下均し。此れ以て賢を上ぶの益無きを知るなり、其れ亡ぶること兹に適う。賢を上ぶ者は亡び、賢を役する者は昌う。義を上びて以て暴を禁じ、祖を尊びて以て祖を敬し、宗を聚めて以て朝殺し、輕々しく主と為らざるを示すなり」と。
-
『管子』侈靡「能く故を摩して新を道び、道國家を定め、然る後に時を化するか」と。「國貧しくして鄙富めば、苴朝に美なり、國を市す。國富みて鄙貧しければ、盡く市に如くは莫し。市なる者は、勸なり、勸なる者は起こす所以なり。本善くして末事起こる、侈らざれば、本事立つを得ず。賢を選び能を舉ぐるを得可からずんば、惡んぞ服せざるを伐ちて用うるを得んや。百夫に長無ければ、臨む可からざるなり。千乘に道有れば、脩む可からざるなり。夫れ紂上に在らば、惡んぞ伐ちて得ざらんや。鈞しければ則ち戰い、守れば則ち攻む。百葢に築く無く、千聚に社無き、之を陋と謂う、一舉して取る。天下に一有るは、事の時なり。萬諸侯鈞しければ、萬民に聽く無し。上位功を為して制を更むる能わずんば、其れ能く王たらんや。故に縁りて法を脩め、政を以て道を治むれば、則ち約して子を殺す、吾が君故に夷吾を取りて替と謂う」と。