管子 / 君臣上
是故天子有善,讓徳於天。諸侯有善,慶之於天子。大夫有善,納之於君。民有善,本於父,慶之於長老。此道法之所從來,是治本也。是故歲一言者,君也。時省者,相也。月稽者,官也。務四支之力,修耕農之業以待令者,庶人也。是故百姓量其力於父兄之間,聴其言於君臣之義,而官論其徳能而待之。大夫比官中之事,不言其外,而相為常具以給之。相總要者,官謀士,量實義美,匡請所疑。而君發其明府之法瑞以稽之,立三階之上,南面而受要。是以上有餘日,而官勝其任,時令不淫,而百姓肅給,唯此上有法制,下有分職也。
新字:是故天子有善,譲徳於天。諸侯有善,慶之於天子。大夫有善,納之於君。民有善,本於父,慶之於長老。此道法之所従来,是治本也。是故歳一言者,君也。時省者,相也。月稽者,官也。務四支之力,修耕農之業以待令者,庶人也。是故百姓量其力於父兄之間,聴其言於君臣之義,而官論其徳能而待之。大夫比官中之事,不言其外,而相為常具以給之。相総要者,官謀士,量実義美,匡請所疑。而君発其明府之法瑞以稽之,立三階之上,南面而受要。是以上有余日,而官勝其任,時令不淫,而百姓粛給,唯此上有法制,下有分職也。
書き下し
是の故に天子善有れば、徳を天に讓る。諸侯善有れば、之を天子に慶す。大夫善有れば、之を君に納る。民善有れば、父に本づき、之を長老に慶す。此れ道法の從りて來たる所、是れ治の本なり。是の故に歲ごとに一たび言う者は、君なり。時ごとに省みる者は、相なり。月ごとに稽うる者は、官なり。四支の力に務め、耕農の業を修めて以て令を待つ者は、庶人なり。是の故に百姓は其の力を父兄の間に量り、其の言を君臣の義に聴きて、官は其の徳能を論じて之を待つ。大夫は官中の事を比べて、其の外を言わず、而して相與に常具を為して以て之に給す。相は要を總ぶる者にして、官は士を謀り、實義の美を量り、疑う所を匡し請う。而して君は其の明府の法瑞を發して以て之を稽え、三階の上に立ち、南面して要を受く。是を以て上に餘日有りて、官は其の任に勝え、時令淫せずして、百姓肅給す。唯だ此れ上に法制有り、下に分職有ればなり。
現代語訳
だから天子に善があれば、その徳を天に譲る。諸侯に善があれば、それを天子のよろこびとする。大夫に善があれば、それを君に納める。民に善があれば、それを父に本づけ、長老のよろこびとする。これが道と法の出てくるところであり、治めるもとである。だから年に一度言うのが君である。季節ごとに省みるのが宰相である。月ごとに調べるのが官である。手足の力に務め、耕作の業を修めて令を待つのが庶人である。だから民は自分の力を父兄のあいだで量り、その言葉を君臣の義に照らして聴き、官はその徳と能を論じて遇する。大夫は官の中の事をそろえてその外に口を出さず、互いに常の備えを整えて供する。宰相はかなめを総べ、官は士をはかり、実と義の善さを量り、疑わしいところを正して指示を請う。君はその明府の法の割り符を出して照らし合わせ、三段の階の上に立ち、南を向いてかなめだけを受け取る。だから上には余った日があり、官はその任に堪え、時の令は乱れず、民は引き締まって間に合う。これはひとえに上に法と制があり、下に分けられた職があるからである。
解説
この章句が説くこと
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『管子』君臣上天に常象有り、地に常形有り、人に常禮有り、一たび設けて更めず、此れを三常と謂う。兼ねて之を一にするは、人君の道なり。分ちて之を職とするは、人臣の事なり。君其の道を失えば、以て其の國を有つ無し。臣其の事を失えば、以て其の位を有つ無し。然らば則ち上の下を畜うこと妄ならずして、下の上に事うること虚しからず。上の下を畜うこと妄ならざれば、則ち出だす所の法制度なる者明らかなり。下の上に事うること虚しからざれば、則ち義に循い令に從う者審らかなり。上明らかに下審らかにして、上下徳を同じくし、代る代る相序するなり。君其の威を失わず、下其の産を曠しくせずして、相徳とする莫し。是を以て上の人は徳に務め、下の人は節を守る。義禮上に形を成して、善下は民に通ずれば、則ち百姓上は主に歸親して、下は力を農に盡くす。故に曰く、君明・相信・五官肅・士廉・農愚・商工愿なれば、則ち上下體して外内別かると。民性因りて三族制せらるるなり。
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『管子』君臣上是の故に善を知るは、人君なり。身ら善するは、人役なり。君身ら善すれば則ち公ならず。人君公ならざれば、常に賞に惠にして刑に忍びず、是れ國に法無きなり。國を治むるに法無ければ、則ち民朋黨して下比し、巧を飾りて以て其の私を成す。法制常有れば、則ち民散ぜずして上合し、情を竭くして以て其の忠を納る。是を以て智能を言わずして、事順に治まり、國患解くるは、大臣の任なり。聰明を言わずして、善人舉げられ、姦偽誅せらるるは、視聴する者衆ければなり。
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『管子』君臣上夫れ人君たる者は、徳を人に廕う者なり。人臣たる者は、生を上に仰ぐ者なり。人上たる者は、功を量りて之を食ましむるに足るを以てす。人臣たる者は、任を受けて之に處るに敎を以てす。政を布くに均しき有りて、民産に足れば、則ち國家豐かなり。勞を以て祿を受くれば、則ち民生を幸わず。刑罰頗らざれば、則ち下に怨心無し。名正しく分明らかなれば、則ち民道に惑わず。道なる者は、上の以て民を導く所なり。是の故に道徳は君より出で、制令は相よりし、事業は官に程せらる。百姓の力や、令を胥ちて動く者なり。
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『管子』君臣下神聖なる者は王たり、仁智なる者は君たり、武勇なる者は長たり、此れ天の道、人の情なり。天道人情、通ずる者は質にして、寵する者は從う、此れ數の因なり。是の故に患いに始まる者は、其の事に與らず。其の事に親しむ者は、其の道を規らず。是を以て人上たる者は患いて勞せず、百姓は勞して患えざるなり。君臣上下の分素なれば、則ち禮制立つ。是の故に人を以て上に役し、力を以て明に役し、刑を以て心に役す、此れ物の理なり。心道は進退し、而して刑道は滔赶す。進退する者は制を主り、滔赶する者は勞を主る。勞を主る者は方に、制を主る者は圓なり。圓なる者は運り、運る者は通じ、通ずれば則ち和す。方なる者は執り、執る者は固く、固ければ則ち信あり。君は利を以て和し、臣は節を以て信あれば、則ち上下に邪無し。故に曰く、人に君たる者は仁を制し、人に臣たる者は信を守る、此れ上下の禮を言うなりと。
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『管子』君臣上吏嗇夫は事を任じ、人嗇夫は敎を任ず。敎は百姓に在り、論は撓めざるに在り、賞は信誠に在り。之を體するに君臣を以てし、其の誠なるや守戰を以てす。此くの如くんば則ち人嗇夫の事究まれり。吏嗇夫は盡く訾程・事律有り、法辟・衡權・斗斛を論じ、文劾は私を以て論ぜずして、事を以て正と為す。此くの如くんば則ち吏嗇夫の事究まれり。人嗇夫敎を成し、吏嗇夫律を成すの後は、則ち敦慤忠信なる者有りと雖も善を得ざるなり、而して戲豫怠傲なる者も敗を得ざるなり。此くの如くんば則ち人君の事究まれり。是の故に人君たる者は、其の業に因り、其の事に乘じて、之を稽うるに度を以てす。善有る者は、之に賞するに列爵の尊、田地の厚きを以てして、民慕わざるなり。過有る者は、之を罰するに廢亡の辱、僇死の刑を以てして、民疾まざるなり。殺生違わずして、民其の親を遺つる莫き者は、此れ唯だ上に明法有りて、下に常事有ればなり。
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『管子』君臣上是の故に有道の君は、上に五官有りて以て其の民を牧すれば、則ち衆敢えて軌を踰えて行かず。下に五橫有りて以て其の官を揆れば、則ち有司敢えて法を離れて使わず。朝に定度・衡儀有りて以て主位を尊び、衣服・緷絻盡く法度有れば、則ち君法に體して立つ。君法に據りて令を出だし、有司命を奉じて事を行い、百姓上に順いて俗を成し、著くこと久しくして常と為る。俗を犯し敎を離るる者は、衆共に之を姦とすれば、則ち上たる者佚なり。天子は令を天下に出だし、諸侯は令を天子に受け、大夫は令を君に受け、子は令を父母に受け、下は其の上を聴き、弟は其の兄を聴く、此れ至順なり。衡石は一稱、斗斛は一量、丈尺は一綧制、戈兵は一度、書は名を同じくし、車は軌を同じくす、此れ至正なり。順に從いて獨り逆らい、正に從いて獨り辟なるは、此れ猶お夜に求むる有りて火を得るがごときなり。姦偽の人、伏する所無し、此れ先王の民心を一にする所以なり。