管子 / 小匡
初,桓公郊迎管子而問焉。管仲辭讓,然後對以參國伍鄙,立五鄉以崇化,建五屬以厲武,寄兵於政,因罰備器械,加兵無道諸侯,以事周室。桓公大説,於是齊戒十日,將相管仲。管仲曰:「斧鉞之人也,幸以獲生,以屬其領,臣之祿也。若知國政,非臣之任也。」公曰:「子大夫受政,寡人勝任。子大夫不受政,寡人恐崩。」管仲許諾,再拜而受相。
新字:初,桓公郊迎管子而問焉。管仲辞譲,然後対以参国伍鄙,立五鄉以崇化,建五属以厲武,寄兵於政,因罰備器械,加兵無道諸侯,以事周室。桓公大説,於是斉戒十日,将相管仲。管仲曰:「斧鉞之人也,幸以獲生,以属其領,臣之禄也。若知国政,非臣之任也。」公曰:「子大夫受政,寡人勝任。子大夫不受政,寡人恐崩。」管仲許諾,再拝而受相。
書き下し
初め、桓公郊に管子を迎えて焉に問う。管仲辭讓し、然る後に對うるに國を參にし鄙を伍にし、五鄉を立てて以て化を崇くし、五屬を建てて以て武を厲まし、兵を政に寄せ、罰に因りて器械を備え、無道の諸侯に兵を加え、以て周室に事うるを以てす。桓公大いに說び、是に於いて齊戒すること十日、將に管仲を相たらしめんとす。管仲曰く、「斧鉞の人なり、幸いに以て生を獲て、以て其の領を屬す、臣の祿なり。國政を知るが若きは、臣の任に非ざるなり」と。公曰く、「子大夫政を受けば、寡人任に勝う。子大夫政を受けずんば、寡人崩れんことを恐る」と。管仲許諾し、再拜して相を受く。
現代語訳
はじめ、桓公は郊外に管子を迎えて問うた。管仲は辞退したあと、こう答えた。国を三つに、地方を五つに分け、五つの郷を立てて教化を高め、五つの属を建てて武を励まし、兵を政に寄せ、罰によって器械を備え、道に外れた諸侯に兵を加え、それによって周の王室に仕える、と。桓公は大いに喜び、十日斎戒して管仲を宰相にしようとした。管仲が言った、私は斧鉞にかけられるはずの者です。幸いに生を得て首がつながっている。それが私の禄です。国政をあずかることは、私の任ではありません。公が言った、あなたが政を受けてくれれば、私は任に堪えられる。受けてくれなければ、私は崩れることを恐れる。管仲は承知し、再拝して宰相の位を受けた。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『管子』小匡堂阜の上に至り、鮑叔祓いて之を浴すること三たび、桓公親ら之を郊に迎う。管仲纓を詘め衽を揷み、人をして斧を操りて其の後に立たしむ。公斧を辭すること三たび、然る後に之を退く。公曰く、「纓を垂れ衽を下せ、寡人將に見えんとす」と。管仲再拜稽首して曰く、「公の賜に應じ、之を黄泉に殺すも、死して且つ朽ちず」と。公遂に與に歸り、之を廟に禮し、三たび酌して政を為すを問う。
-
『管子』小匡相たること三月、百官を論ぜんことを請う。公曰く、「諾」と。管仲曰く、「升降揖讓、進退閑習、辭を辨ずるの剛柔、臣は隰朋に如かず、請う立てて大行と為さん。草を墾き邑に入れ、土を辟き粟を聚め、衆を多くし、地の利を盡くす、臣は戚に如かず、請う立てて大司田と為さん。平原廣牧、車轍を結ばず、士踵を旋らさず、之を鼓して三軍の士死を視ること歸するが如し、臣は王子城父に如かず、請う立てて大司馬と為さん。獄を決し中を折り、不辜を殺さず、無罪を誣いず、臣は賓胥無に如かず、請う立てて大司理と為さん。君の顔色を犯し、諫を進めて必ず忠、死亡を辟けず、富貴に撓まず、臣は東郭牙に如かず、請う立てて以て大諫の官と為さん。此の五子なる者は、夷吾一つも如かず、然り而して以て夷吾に易うるは、夷吾は為さざるなり。君若し國を治め兵を彊くせんと欲せば、則ち五子なる者存す。若し霸王たらんと欲せば、夷吾此に在り」と。桓公曰く、「善し」と。
-
『管子』大匡桓公二年、位に踐みて管仲を召す。管仲至り、公問いて曰く、「社稷定む可きか」と。管仲對えて曰く、「君霸王たらば、社稷定まる。君霸王たらずんば、社稷定まらず」と。公曰く、「吾敢えて此の其の大なるに至らず、社稷を定むるのみ」と。管仲又た請う、君曰く、「能わず」と。管仲君に辭して曰く、「君臣を死より免るるは、臣の幸いなり。然れども臣の糺に死せざるは、社稷を定めんと欲するが為なり。社稷定まらずして、臣齊國の政に禄して糺に死せざるは、臣敢えてせず」と。乃ち走り出づ。門に至り、公管仲を召す。管仲反る、公汗出でて曰く、「已む勿かれ、其れ霸を勉めんか」と。管仲再拜稽首して起ち、曰く、「今日君霸を成す、臣貪りて命を承く」と。趨りて相位に立ち、乃ち五官に令して事を行わしむ。
-
『管子』小匡桓公曰く、「民の居定まれり、事已に成れり、吾天下の諸侯に事を從えんと欲す、其れ可なるか」と。管子對えて曰く、「未だ可ならず。民心未だ吾に安んぜず」と。公曰く、「之を安んずるは奈何」と。管子對えて曰く、「舊法を修め、其の善き者を擇び、舉げて嚴に之を用う。民に慈しみ、財無きに予え、政役を寛くし、百姓を敬えば、則ち國富みて民安し」と。公曰く、「民安し、其れ可なるか」と。管仲對えて曰く、「未だ可ならず。君若し卒伍を正し、甲兵を修めんと欲せば、則ち大國も亦た將に卒伍を正し、甲兵を修めんとす。君に征戰の事有らば、則ち小國の諸侯の臣に守圉の備え有らん。然らば則ち以て速やかに天下に意を得難し。公速やかに天下の諸侯に意を得んと欲せば、則ち事に隱す所有りて、政に寓する所有らん」と。公曰く、「之を為すこと奈何」と。管子對えて曰く、「内政を作して軍令を焉に寓せよ。高子の里を為り、國子の里を為り、公里を為る。齊國を三分して、以て三軍と為す。其の賢民を擇びて、里君と為さしむ。鄉に行伍卒長有らば、則ち其れ令を制す。且つ田獵を以てし、因りて以て賞罰すれば、則ち百姓軍事に通ず」と。
-
『管子』大匡既に以て衛を封じ、明年、桓公管仲に問う、「將に何をか行わん」と。管仲對えて曰く、「公内に政を修めて民を勸めば、以て諸侯に信ぜらる可し」と。君許諾す。乃ち稅を輕くし、關市の征を弛め、賦禄の制を為す。既に已みて、管仲又た請いて曰く、「病臣を問い、願わくは賞して罰する無からん、五年にして諸侯傅かしむ可し」と。公曰く、「諾」と。既に之を行い、管仲又た請いて曰く、「諸侯の禮、齊をして豹皮を以て往かしめ、小侯は鹿皮を以て報ぜしめよ。齊は馬を以て往き、小侯は犬を以て報ぜよ」と。桓公許諾し、之を行う。管仲又た國に賞して、以て諸侯に及ばんことを請う。君曰く、「諾」と。之を行う。管仲國中に賞し、君諸侯に賞す。諸侯の君に行事の善なる者有らば、重幣を以て之を賀す。列士より以下善有る者は、衣裳もて之を賀す。凡そ諸侯の臣に其の君を諫めて善なる者有らば、璽を以て之を問い、以て其の言を信にす。
-
『管子』小匡是の故に天下の桓公に於けるや、遠國の民は望むこと父母の如く、近國の民は從うこと流水の如し。故に地を行くこと滋々遠くして、人を得ること彌々衆し、是れ何ぞや。其の文を懷いて其の武を畏るればなり。故に無道を殺し、周室を定む、天下之を能く圉ぐもの莫きは、武事立てばなり。三革を定め、五兵を偃せ、朝服して以て河を濟り、而して怵惕する無きは、文事勝てばなり。是の故に大國の君は慙媿し、小國の諸侯は附比す。是の故に大國の君は事うること臣僕の如く、小國の諸侯は驩ぶこと父母の如し。夫れ然り、故に大國の君は尊からず、小國の諸侯は卑しからず。是の故に大國の君は驕らず、小國の諸侯は懾れず。是に於いて廣地を列ねて以て狹地を益し、有財を損じて以て無財に與う。其の君子を周くして、成功を失わず。其の小人を周くして、成命を失わず。夫れ是くの如くんば、居處すれば則ち順、出づれば則ち成功有り、甲兵を動かすの事を稱えずして、以て文・武の迹を天下に遂ぐ。桓公能く其の羣臣の謀を假りて以て其の智を益すなり、其の相は夷吾と曰い、大夫は戚・隰朋・賓胥無・鮑叔牙と曰う。此の五子を用うる者は何ぞや、功義を度り、德を光らかにし法を繼ぎ、終わりを紹ぎて以て後嗣に遺す。孝を昭穆に貽し、大いに天下に霸たり、名聲廣裕にして、掩う可からざるなり。則ち唯だ明君上に在り、察相下に在ればなり。