管子 / 大匡
桓公乃告諸侯,必足三年之食安,以其餘修兵革。兵革不足以引其事,告齊,齊助之發。既行之,公又問管仲曰:「何行?」管仲對曰:「君㑹其君臣父子,則可以加政矣。」公曰:「㑹之道奈何?」曰:「諸侯毋専立妾以為妻,毋専殺大臣,無國勞,毋専予禄。士庶人毋専棄妻,毋曲隄,毋貯粟,毋禁材。行此卒嵗,則始可以罰矣。」君乃布之於諸侯,諸侯許諾,受而行之。
新字:桓公乃告諸侯,必足三年之食安,以其余修兵革。兵革不足以引其事,告斉,斉助之発。既行之,公又問管仲曰:「何行?」管仲対曰:「君会其君臣父子,則可以加政矣。」公曰:「会之道奈何?」曰:「諸侯毋専立妾以為妻,毋専殺大臣,無国労,毋専予禄。士庶人毋専棄妻,毋曲隄,毋貯粟,毋禁材。行此卒歳,則始可以罰矣。」君乃布之於諸侯,諸侯許諾,受而行之。
書き下し
桓公乃ち諸侯に告げ、必ず三年の食を足して安んじ、其の餘を以て兵革を修めしむ。兵革以て其の事を引くに足らざれば、齊に告げ、齊之が發を助く。既に之を行い、公又た管仲に問いて曰く、「何をか行わん」と。管仲對えて曰く、「君其の君臣父子を會せば、則ち以て政を加う可し」と。公曰く、「會の道は奈何」と。曰く、「諸侯は專ら妾を立てて以て妻と為す毋かれ、專ら大臣を殺す毋かれ、國勞無かれ、專ら禄を予う毋かれ。士庶人は專ら妻を棄つる毋かれ、隄を曲ぐる毋かれ、粟を貯う毋かれ、材を禁ずる毋かれ。此を行うこと歳を卒うれば、則ち始めて以て罰す可し」と。君乃ち之を諸侯に布く、諸侯許諾し、受けて之を行う。
現代語訳
桓公は諸侯に告げ、必ず三年分の食を蓄えて安んじ、その余りで軍備を整えさせた。軍備がその事を進めるに足りなければ、斉に告げれば斉が調達を助ける。それを行ってから、公はまた管仲に問うた、何をするか。管仲が答えた、君が諸侯の君臣父子を会わせれば、政を加えられます。公が言った、会わせるやり方はどうする。管仲が言った、諸侯は勝手に側室を立てて妻としてはならない、勝手に大臣を殺してはならない、国に無用の労役をかけてはならない、勝手に禄を与えてはならない。士や庶人は勝手に妻を棄ててはならない、堤を曲げてはならない、粟を溜め込んではならない、材木を禁じてはならない。これを一年行えば、そのうえではじめて罰することができる。君はこれを諸侯に布き、諸侯は承知して受け入れ、行った。
解説
この章句が説くこと
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『管子』大匡歳を卒えて、呉人穀を伐つ。桓公諸侯に告ぐること未だ徧からずして、諸侯の師竭く至り、以て桓公を待つ。桓公車千乘を以て諸侯と竟に會す、都師未だ至らずして、呉人逃げ、諸侯皆罷む。桓公歸り、管仲に問いて曰く、「將に何をか行わん」と。管仲曰く、「以て政を加う可し」と。曰く、「今より以往二年、適子孝を聞かず、其の弟を愛するを聞かず、老を敬い國良なるを聞かず、三つの者一つも焉れ無くんば、誅す可きなり。諸侯の臣國事に及びて、三年善を聞かずんば、罰す可きなり。君に過ち有りて大夫諫めず、士庶人に善有りて大夫進めざれば、罰す可きなり。士庶人之を吏に聞き、賢孝悌なれば賞す可きなり」と。桓公受けて之を行う、近侯事を請わざる莫し。兵車の會六たび、乘車の會三たび、國を饗くること四十有二年。
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『管子』戒桓公蹵然として逡遁す。管仲曰く、「昔先王の人を理むるや、蓋し人に勞を患うる有れども、上之を使うに時を以てすれば、則ち人勞を患えざるなり。人飢えを患うれども、上薄く斂むれば、則ち人飢えを患えず。人死を患うれども、上刑を寛くすれば、則ち人死を患えず。此くの如くして德有るに近づきて色有るに遠ざかれば、則ち四封の内君を視ること其れ猶お父母のごとくならんか、四方の外君に歸すること其れ猶お流水のごとくならんか」と。公射を輟め、綏を援きて乘り、自ら御し、管仲を左と為し、隰朋參乘す。朔月三日、二子を里官に進め、再拜頓首して曰く、「孤の二子の言を聞くや、耳聰を加え視明を加う、孤に於いて敢えて獨り之を聽かず、之を先祖に薦む」と。管仲・隰朋再拜頓首して曰く、「君の王たるが如きは、此れ臣の言に非ざるなり、君の教なり」と。是に於いて管仲と桓公と盟誓して令を為して曰く、「老弱は刑する勿かれ、參たび宥して而る後に弊し、關は幾して正せず、市は正して布せず、山林梁澤は時を以て禁發して、正せざるなり」と。草を封じ澤鹽する者の之に歸するや、譬えば市人の若し。三年人を教え、四年賢を選びて以て長と為し、五年始めて車を興し乘を踐む。遂に南のかた楚を伐ち、城に門施す。北のかた山戎を伐ち、冬蔥と戎菽とを出だして之を天下に布く。果たして三たび天子を匡し、而して九たび諸侯を合わす。
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『管子』大匡既に以て衛を封じ、明年、桓公管仲に問う、「將に何をか行わん」と。管仲對えて曰く、「公内に政を修めて民を勸めば、以て諸侯に信ぜらる可し」と。君許諾す。乃ち稅を輕くし、關市の征を弛め、賦禄の制を為す。既に已みて、管仲又た請いて曰く、「病臣を問い、願わくは賞して罰する無からん、五年にして諸侯傅かしむ可し」と。公曰く、「諾」と。既に之を行い、管仲又た請いて曰く、「諸侯の禮、齊をして豹皮を以て往かしめ、小侯は鹿皮を以て報ぜしめよ。齊は馬を以て往き、小侯は犬を以て報ぜよ」と。桓公許諾し、之を行う。管仲又た國に賞して、以て諸侯に及ばんことを請う。君曰く、「諾」と。之を行う。管仲國中に賞し、君諸侯に賞す。諸侯の君に行事の善なる者有らば、重幣を以て之を賀す。列士より以下善有る者は、衣裳もて之を賀す。凡そ諸侯の臣に其の君を諫めて善なる者有らば、璽を以て之を問い、以て其の言を信にす。
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『管子』小匡桓公曰く、「民の居定まれり、事已に成れり、吾天下の諸侯に事を從えんと欲す、其れ可なるか」と。管子對えて曰く、「未だ可ならず。民心未だ吾に安んぜず」と。公曰く、「之を安んずるは奈何」と。管子對えて曰く、「舊法を修め、其の善き者を擇び、舉げて嚴に之を用う。民に慈しみ、財無きに予え、政役を寛くし、百姓を敬えば、則ち國富みて民安し」と。公曰く、「民安し、其れ可なるか」と。管仲對えて曰く、「未だ可ならず。君若し卒伍を正し、甲兵を修めんと欲せば、則ち大國も亦た將に卒伍を正し、甲兵を修めんとす。君に征戰の事有らば、則ち小國の諸侯の臣に守圉の備え有らん。然らば則ち以て速やかに天下に意を得難し。公速やかに天下の諸侯に意を得んと欲せば、則ち事に隱す所有りて、政に寓する所有らん」と。公曰く、「之を為すこと奈何」と。管子對えて曰く、「内政を作して軍令を焉に寓せよ。高子の里を為り、國子の里を為り、公里を為る。齊國を三分して、以て三軍と為す。其の賢民を擇びて、里君と為さしむ。鄉に行伍卒長有らば、則ち其れ令を制す。且つ田獵を以てし、因りて以て賞罰すれば、則ち百姓軍事に通ず」と。
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『管子』大匡北州の侯來たる莫し、桓公南州の侯に召陵に遇いて曰く、「狄無道を為し、天子の令を犯し、以て小國を伐つ。天子の故を以て、天の命を敬い、令して以て伐たるるを救う。北州の侯至る莫し、上は天子の令を聽かず、下は諸侯に禮無し、寡人請う北州の侯を誅せん」と。諸侯許諾す。桓公乃ち北のかた令支を伐ち、鳬の山を下し、孤竹を斬り、山戎に遇う。顧みて管仲に問いて曰く、「將に何をか行わん」と。管仲對えて曰く、「君諸侯に教えて民の為に食を聚めしめ、諸侯の兵足らざる者は、君之が發を助けよ、此くの如くんば則ち始めて以て政を加う可し」と。
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『管子』中匡管仲國用を會するに、三分の二は賓客に在り、其の一は國に在り、管仲懼れて之を復す。公曰く、「吾子猶お是くの如きか。四鄰の賓客、入る者說び、出づる者譽むれば、光名天下に滿つ。入る者說ばず、出づる者譽めざれば、汚名天下に滿つ。壤は以て粟と為す可く、木は以て貨と為す可し。粟盡くれば則ち生ずる有り、貨散ずれば則ち聚まる有り。人に君たる者は、名之を貴しと為す、財安んぞ有つ可けんや」と。管仲曰く、「此れ君の明なり」と。公曰く、「民軍事を辦ず、則ち可なるか」と。對えて曰く、「不可なり。甲兵未だ足らざるなり、請う刑罰を薄くして以て甲兵を厚くせん」と。是に於いて死罪も殺さず、刑罪も罰せず、甲兵を以て贖わしむ。死罪は犀甲一・戟を以てし、刑罰は脅盾一・戟を以てし、過罰は金を以てす。軍に計る所無くして訟うる者は、成すに束矢を以てす。公曰く、「甲兵既に足れり、吾大國の不道なる者を誅せんと欲す、可なるか」と。對えて曰く、「四封の内を愛して、而る後に以て竟外の不善なる者を惡む可し。卿大夫の家を安んじて、而る後に以て敵に救するの國を危うくす可し。小國に地を賜いて、而る後に以て大國の不道なる者を誅す可し。賢良を舉げて、而る後に以て法を慢り鄙賤なる民を廢す可し。是の故に先王は必ず置く有りて、而る後に必ず廢する有り。必ず利する有りて、而る後に必ず害する有り」と。