管子 / 大匡
桓公曰:「然則奚若?」管仲對曰:「以臣則不,而令人以重幣使之。使之而不可,君受而封之。」桓公問鮑叔曰:「奚若?」鮑叔曰:「公行夷吾之言。」公乃命曹孫宿使於宋,宋不聴,果伐杞。桓公築縁陵以封之,予車百乘,甲一千。明年,狄人伐邢,邢君出致於齊。桓公築夷儀以封之,予車百乘,卒千人。明年,狄人伐衛,衛君出致於虚桓公且封之。隰朋、賔胥無諌曰:「不可。三國所以亡者,絶以小。今君蘄封亡國,國盡若何?」桓公問管仲曰:「奚若?」管仲曰:「君有行之名,安得有其實。君其行也。」公又問鮑叔,鮑叔曰:「君行夷吾之言。」桓公築楚丘以封之,與車三百乘,甲五千。
新字:桓公曰:「然則奚若?」管仲対曰:「以臣則不,而令人以重幣使之。使之而不可,君受而封之。」桓公問鮑叔曰:「奚若?」鮑叔曰:「公行夷吾之言。」公乃命曹孫宿使於宋,宋不聴,果伐杞。桓公築縁陵以封之,予車百乗,甲一千。明年,狄人伐邢,邢君出致於斉。桓公築夷儀以封之,予車百乗,卒千人。明年,狄人伐衛,衛君出致於虚桓公且封之。隰朋、賔胥無諌曰:「不可。三国所以亡者,絶以小。今君蘄封亡国,国尽若何?」桓公問管仲曰:「奚若?」管仲曰:「君有行之名,安得有其実。君其行也。」公又問鮑叔,鮑叔曰:「君行夷吾之言。」桓公築楚丘以封之,与車三百乗,甲五千。
書き下し
桓公曰く、「然らば則ち奚若」と。管仲對えて曰く、「臣を以てせば則ち不可なり、而して人をして重幣を以て之に使いせしめよ。之に使いして不可ならば、君受けて之を封ぜよ」と。桓公鮑叔に問いて曰く、「奚若」と。鮑叔曰く、「公夷吾の言を行え」と。公乃ち曹孫宿に命じて宋に使いせしむ、宋聽かず、果たして杞を伐つ。桓公縁陵を築きて以て之を封じ、車百乘、甲一千を予う。明年、狄人邢を伐つ、邢君出でて齊に致す。桓公夷儀を築きて以て之を封じ、車百乘、卒千人を予う。明年、狄人衛を伐つ、衛君出でて虛に致す、桓公且に之を封ぜんとす。隰朋・賓胥無諫めて曰く、「不可なり。三國の亡ぶる所以の者は、絕ゆるに小を以てす。今君亡國を封ぜんことを蘄う、國盡きなば若何」と。桓公管仲に問いて曰く、「奚若」と。管仲曰く、「君に行うの名有り、安んぞ其の實を有つを得んや。君其れ行え」と。公又た鮑叔に問う、鮑叔曰く、「君夷吾の言を行え」と。桓公楚丘を築きて以て之を封じ、車三百乘、甲五千を與う。
現代語訳
桓公が言った、それではどうするか。管仲が答えた、私が行くのはよくありません。人に重い礼物を持たせて使いに出しなさい。使いに出してもだめなら、君が受け入れて封じてやりなさい。桓公が鮑叔に問うた、どうか。鮑叔が言った、公は夷吾の言葉を行いなさい。公は曹孫宿に命じて宋へ使いさせたが、宋は聞かず、結局杞を討った。桓公は縁陵に城を築いて杞を封じ、車百乗と甲千を与えた。翌年、狄人が邢を討ち、邢君は国を出て斉に身を寄せた。桓公は夷儀に城を築いて封じ、車百乗と兵千人を与えた。翌年、狄人が衛を討ち、衛君は国を出て虚に身を寄せた。桓公はこれも封じようとした。隰朋と賓胥無が諫めて言った、いけません。三国が亡んだのは、小さいままで絶えたからです。いま君は亡んだ国を次々に封じようとしておられる。国が尽きたらどうなさいますか。桓公が管仲に問うた、どうか。管仲が言った、君には行った名があります。どうしてその実まで持てましょう。君はおやりなさい。公はまた鮑叔に問うた。鮑叔が言った、公は夷吾の言葉を行いなさい。桓公は楚丘に城を築いて衛を封じ、車三百乗と甲五千を与えた。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『管子』小匡桓公天下の諸侯を憂う。魯に夫人慶父の亂有りて、二君弑死し、國絕えて後無し。桓公之を聞き、高子をして之を存せしむ。男女淫せず、馬牛選び具え、玉を執りて以て見え、關内の侯と為らんことを請う、而して桓公使いせざるなり。狄人邢を攻む、桓公夷儀を築きて以て之を封ず。男女淫せず、馬牛選び具え、玉を執りて以て見え、關内の侯と為らんことを請う、而して桓公使いせざるなり。狄人衛を攻む、衛人曹に出旅す、桓公楚丘に城きて之を封ず、其の畜以て散亡す、故に桓公之に繫馬三百匹を予う、天下の諸侯仁と稱す。
-
『管子』霸形桓公曰く、「善し」と。是に於いて鍾磬の縣を伐り、歌舞の樂を併せ、宮中虛しくして人無し。桓公曰く、「寡人以て鍾磬の縣を伐り、歌舞の樂を併せたり、請う問う始むる所、國に於いて將に何をか行わんとす」と。管子對えて曰く、「宋杞を伐ち、狄邢・衛を伐ちて、君の救わざるや、臣請う以て慶せん。臣之を聞く、諸侯彊きを爭う者には、與に彊きを分かつ勿かれと。今君何ぞ三君の處を定めざるや」と。是に於いて桓公曰く、「諾」と。因りて命ずるに車百乘、卒千人を以てし、縁陵を以て杞を封ず。車百乘、卒千人、夷儀を以て邢を封ず。車五百乘、卒五千人、楚丘を以て衛を封ず。桓公曰く、「寡人以て三君の居處を定めたり、今又た將に何をか行わんとす」と。管子對えて曰く、「臣聞く諸侯利を貪る者には、與に利を分かつ勿かれと。君何ぞ虎豹の皮、文錦を發して以て諸侯に使いせしめ、諸侯をして縵帛・鹿皮を以て報ぜしめざる」と。桓公曰く、「諾」と。是に於いて虎豹皮・文錦を以て諸侯に使いせしめ、諸侯縵帛・鹿皮を以て報ず、則ち令固より始めて天下に行わる。
-
『管子』大匡五年、宋杞を伐つ。桓公管仲と鮑叔とに謂いて曰く、「夫れ宋は、寡人固より之を伐たんと欲す、諸侯を若何ともする無し。夫れ杞は、明王の後なり。今宋之を伐つ、予之を救わんと欲す、其れ可なるか」と。管仲對えて曰く、「不可なり。臣聞く内政の修まらざれば、外義を舉ぐるも信ぜられずと。君將に外義を舉げんとせば、行を以て之に先んぜば、則ち諸侯附かしむ可し」と。桓公曰く、「此に於いて救わずんば、後宋を伐つに以てする無し」と。管仲曰く、「諸侯の君は、土を貪らず。土を貪れば必ず兵に勤む、兵に勤むれば必ず民を病ましむ、民病めば則ち詐多し。夫れ詐は、密にして而る後に動く者勝つ、詐れば則ち民に信ぜられず。夫れ民に信ぜられざれば則ち亂内に動く、則ち身に危うし。是を以て古の人の先王の道を聞く者は、兵を競わず」と。
-
『管子』大匡公怒り、歸りて管仲に告げて曰く、「請う兵革を修めん。吾が士練らず、吾が兵實たず、諸侯故に敢えて吾が讎を救う。内に兵革を修めん」と。管仲曰く、「不可なり。齊國危うし。内には民用を奪い、士は勇に勸みて外にす、亂の本なり。外には諸侯を犯す、民怨み多し。義を為すの士、齊國に入らず、安んぞ危うき無きを得んや」と。鮑叔曰く、「公必ず夷吾の言を用いよ」と。公聽かず、乃ち四封の内に令して兵を修め、關市の征之を侈にす。公乃ち遂に用いて勇を以て禄を授く。鮑叔管仲に謂いて曰く、「異日者、公子に霸を許す、今國彌々亂る、子將に何如せんとす」と。管仲曰く、「吾が君は惕なり、其の智誨多し。姑く少しく胥て、其れ自ら及ばん」と。鮑叔曰く、「其の自ら及ぶに比べば、國闕亡無からんや」と。管仲曰く、「未だし。國中の政、夷吾尚お微かに為す、焉んぞ亂れんや。尚お以て待つ可し。外諸侯の佐、既に吾二人の者有る無し、未だ敢えて我を犯す者有らず」と。明年、朝に禄を爭いて相刺し、領を裚ちて頸を刎ぬる者絕えず。鮑叔管仲に謂いて曰く、「國に死者衆し、乃ち害無からんや」と。管仲曰く、「安んぞ已むを得んや。此れ皆な其の貪民なり。夷吾の患うる所の者は、諸侯の義を為す者肯えて齊に入る莫く、齊の義を為す者肯えて仕えざるなり。此れ夷吾の患うる所なり。若し夫れ死者は、吾安んぞ用いて之を愛しまんや」と。公又た内に兵を修む。
-
『管子』小匡公曰く、「外内定まれり、可なるか」と。管子對えて曰く、「未だ可ならず、鄰國未だ吾に親しまざるなり」と。公曰く、「之に親しむは奈何」と。管子對えて曰く、「吾が疆場を審らかにし、其の侵地を反し、其の封界を正し、其の貨財を受くる毋くして、美しく皮幣を為り、以て極めて諸侯に聘頫し、以て四鄰を安んぜば、則ち鄰國我に親しまん」と。桓公曰く、「甲兵大いに足れり、吾南伐せんと欲す、何をか主とせん」と。管子對えて曰く、「魯を以て主と為せ。其の侵地常・潛を反し、海に於いて渠彌有らしめ、河陼に於いてし、山を綱するに牢有らしめよ」と。桓公曰く、「吾西伐せんと欲す、何をか主とせん」と。管子對えて曰く、「衛を以て主と為せ。其の侵地吉臺・原姑と桼里とを反し、海に於いて弊有らしめ、渠彌は陼有るに於いてし、山を綱するに牢有らしめよ」と。桓公曰く、「吾北伐せんと欲す、何をか主とせん」と。管子對えて曰く、「燕を以て主と為せ。其の侵地柴夫・吠狗を反し、海に於いて弊有らしめ、渠彌は陼有るに於いてし、山を綱するに牢有らしめよ」と。
-
『管子』小匡桓公曰く、「甲兵大いに足れり、吾諸侯に事を從えんと欲す、可なるか」と。管仲對えて曰く、「未だ可ならず。内を治むる者未だ具わらざるなり、外を為す者未だ備わらざるなり」と。故に鮑叔牙をして大諫為らしめ、王子城父を將と為し、子旗を理と為し、戚を田と為し、隰朋を行と為し、曹宿は楚に處り、商容は宋に處り、季勞は魯に處り、徐開封は衛に處り、匽尚は燕に處り、審友は晉に處る。又た游士八千人、之を奉ずるに車馬衣裘を以てし、其の資糧を多くし、財幣之を足し、出でて四方に周游せしめ、以て天下の賢士を號召し收求す。玩好を飾り、出でて四方に周游し、之を諸侯に鬻がしめ、以て其の上下の貴び好む所を觀る。其の沈亂なる者を擇びて先ず之を政む。