管子 / 大匡
魯人請盟,曰:「魯,小國也,固不帶劔。今而帶劔,是交兵聞於諸侯。君不如己請去兵。」桓公曰:「諾。」乃令從者毋以兵。管仲曰:「不可。諸侯加忌於君,君如是以退,可。君果弱魯君,諸侯又加貪於君,後有事,小國彌堅,大國設備,非齊國之利也。」桓公不聴。管仲又諌曰:「君必不去魯,胡不用兵?曺劌之為人也,堅强以忌,不可以約取也。」桓公不聴,果與之遇。莊公自懐劔,曹劌亦懐劍踐壇,莊公抽劔其懐,曰:「魯之境,去國五十里,亦無不死而已。」左揕桓公,右自承,曰:「均之死也,戮死於君前。」管仲走君,曺劌抽劍當兩階之間,曰:「二君將改圖,無有進者。」管仲曰:「君與地,以汶為竟。」桓公許諾,以汶為竟而歸。桓公歸而修於政,不修於兵革,自圉辟人,以過弭師。
新字:魯人請盟,曰:「魯,小国也,固不帯劔。今而帯劔,是交兵聞於諸侯。君不如己請去兵。」桓公曰:「諾。」乃令従者毋以兵。管仲曰:「不可。諸侯加忌於君,君如是以退,可。君果弱魯君,諸侯又加貪於君,後有事,小国弥堅,大国設備,非斉国之利也。」桓公不聴。管仲又諌曰:「君必不去魯,胡不用兵?曺劌之為人也,堅强以忌,不可以約取也。」桓公不聴,果与之遇。荘公自懐劔,曹劌亦懐剣践壇,荘公抽劔其懐,曰:「魯之境,去国五十里,亦無不死而已。」左揕桓公,右自承,曰:「均之死也,戮死於君前。」管仲走君,曺劌抽剣当両階之間,曰:「二君将改図,無有進者。」管仲曰:「君与地,以汶為竟。」桓公許諾,以汶為竟而帰。桓公帰而修於政,不修於兵革,自圉辟人,以過弭師。
書き下し
魯人盟を請いて曰く、「魯は小國なり、固より劔を帶びず。今にして劔を帶ぶるは、是れ兵を交うること諸侯に聞こゆ。君己に兵を去らんことを請うに如かず」と。桓公曰く、「諾」と。乃ち從者に令して兵を以てする毋からしむ。管仲曰く、「不可なり。諸侯忌みを君に加う、君是くの如くにして以て退くは、可なり。君果たして魯君を弱くせば、諸侯又た貪を君に加え、後に事有らば、小國彌々堅く、大國備えを設く、齊國の利に非ざるなり」と。桓公聽かず。管仲又た諫めて曰く、「君必ず魯を去らずんば、胡ぞ兵を用いざる。曹劌の人と為りや、堅強にして忌む、約を以て取る可からざるなり」と。桓公聽かず、果たして之と遇う。莊公自ら劔を懷にし、曹劌も亦た劔を懷にして壇に踐む、莊公劔を其の懷より抽きて曰く、「魯の境、國を去ること五十里、亦た死せざる無きのみ」と。左に桓公を揕し、右に自ら承けて曰く、「之を均しく死せば、君前に戮死せん」と。管仲君に走る、曹劌劍を抽きて兩階の間に當たりて曰く、「二君將に圖を改めんとす、進む者有る無かれ」と。管仲曰く、「君地を與え、汶を以て竟と為せ」と。桓公許諾し、汶を以て竟と為して歸る。桓公歸りて政を修め、兵革を修めず、自ら圉して人を辟け、過を以て師を弭む。
現代語訳
魯の人が盟を請うて言った、魯は小国です。もともと剣を帯びません。いま剣を帯びれば、兵を交えたことが諸侯に聞こえます。君のほうから武器を置くよう願い出るのがよいでしょう。桓公は承知し、従者に武器を持たせなかった。管仲が言った、いけません。諸侯は君を警戒しています。君がこうして退くのはよい。しかし君がほんとうに魯君を弱くすれば、諸侯は君への貪りを加え、のちに事が起これば、小国はいよいよ固く結び、大国は備えを設ける。斉国の利にはなりません。桓公は聞かなかった。管仲がまた諫めて言った、君がどうしても魯を去らないなら、なぜ兵を用いないのですか。曹劌の人となりは、堅く強くて執念深い。約束で取れる相手ではありません。桓公は聞かず、そのまま会見した。荘公は自分で剣を懐にし、曹劌も剣を懐にして壇に上った。荘公は剣を懐から抜いて言った、魯の境は国から五十里、もはや死ぬしかない。左手で桓公を刺そうとし、右手で自分に向けて言った、同じく死ぬなら、君の前で死のう。管仲が君のもとへ走った。曹劌が剣を抜いて両階のあいだに立ちはだかって言った、二君はこれから計らいを改める。進む者があってはならない。管仲が言った、君よ、土地を与え、汶水を境としなさい。桓公は承知し、汶水を境として帰った。桓公は帰ってから政を整え、軍備は整えず、自ら守って人を遠ざけ、自分の過ちを認めて軍を収めた。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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呂氏春秋・貴信③齊の桓公、魯を伐つ。魯人敢て輕々しく戰わず。魯國を去ること五十里にして、之を封ず。魯、關內侯に比して以て聽かんことを請う。桓公之を許す。曹翽、魯の莊公に謂いて曰く、「君寧ろ死して又死すか。其れ寧ろ生きて又生きんか。」莊公曰く、「何の謂ぞや。」曹翽曰く、「臣の言を聽けば、國必ず廣大にして、身必ず安樂ならん。是れ生きて又生くるなり。臣の言を聽かずんば、國必ず滅亡して、身必ず危辱せられん。是れ死して又死すなり。」莊公曰く、「請う、從わん。」是に於て、明日、將に盟わんとす。莊公、曹翽と皆劍を懷にして壇上に至る。莊公左に桓公を搏え、右に劍を抽きて以て自ら承く。曰く、「魯國、境を去ること數百里なるも、今、境を去ること五十里なり。亦た生くる無し。鈞しく其れ死せば、君前に戮せられん。」管仲・鮑叔進む。曹翽、劍を按じて、兩陛の間に當りて曰く、「且に二君將に圖を改めんとす。進む者或る毋かれ。」莊公曰く、「汶に封ずれば則ち可なり、不らずんば則ち請う、死せん。」管仲曰く、「地を以て君を衛る、君を以て地を衛るに非ず。君其れ之を許せ。」乃ち遂に汶の南に封じ、之と盟う。歸りて予うること勿らんと欲す。管仲曰く、「不可なり。人特に君を劫やかして盟わざらんとして、君知らざるは、智と謂う可からず。難に臨みて聽くこと勿き能わざるは、勇と謂う可からず。之を許して予えざるは、信と謂う可からず。不智不勇不信、此の三者有れば、以て功名を立つ可からず。之を予うれば、地を亡うと雖も亦た信を得ん。四百里の地を以て信を天下に見さば、君猶ほ得るがごときなり。」莊公は仇なり。曹翽は賊なり。仇賊にも信なり。又況んや仇賊に非ざる者に於いてをや。夫れ之を九合して合し、之を壹匡して聽かるること、此れ從り生ず。管仲は能く物に因ると謂う可し。辱を以て榮と為し、窮を以て通と為す。前に失うと雖も、後に之を得たりと謂う可し。物固より全かる可からざるなり。
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史記 刺客列伝曹沫は、魯人なり、勇力を以て魯の荘公に事ふ。魯斉と戦ひ、三たび敗北す。斉の桓公魯と柯に会して盟するを許す。桓公荘公と既に壇上に盟ふや、曹沫匕首を執りて斉の桓公を劫かす。桓公の左右敢て動く莫くして、問ひて曰く、「子将に何をか欲せんとす」と。曹沫曰く、「斉彊く魯弱く、而して大国の魯を侵すこと亦た甚だし。君其れ之を図れ」と。桓公乃ち尽く魯の侵地を帰さんことを許す。既に言ひ已はり、曹沫其の匕首を投じ、壇を下り、北面して群臣の位に就く。顔色変ぜず、辞令故の如し。桓公怒り、其の約に倍かんと欲す。管仲曰く、「不可なり。夫れ小利を貪りて以て自ら快くし、信を諸侯に棄つれば、天下の援を失ふ、之に与ふるに如かず」と。是に於いて桓公乃ち遂に魯の侵地を割き、曹沫の三戦亡ふ所の地尽く復た魯に予ふ。
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『新序』雜事第四昔者、齊の桓公魯の莊公と柯の盟を爲す。魯の大夫曹劌莊公に謂いて曰く、齊の魯を侵すこと、城下に至る。城壞れ境を壓す。君圖らざるか、と。莊公曰く、嘻、寡人の生は死に若かず、と。曹劌曰く、然らば、則ち君は請う其の君に當たれ。臣は請う其の臣に當たらん、と。會するに及び、兩君壇に就き、兩相相い揖す。曹劌手ずから劍を拔きて進み、桓公を壇上に迫りて曰く、城壞れ境を壓す。君圖らざるか、と。管仲曰く、然らば、則ち君何をか求むる、と。曹劌曰く、願わくは汶陽の田を請わん、と。管仲桓公に謂いて曰く、君其れ之を許せ、と。桓公之を許す。曹劌盟を請う。桓公遂に之と盟う。已に盟いて、劍を摽てて去る。左右曰く、要盟は倍く可し。曹劌は讐とす可し。請う、盟に倍きて曹劌を討たん、と。管仲曰く、要盟は負く可くして、君は負かず。曹劌は讐とす可くして、君は讐とせず。信を天下に著さん、と。遂に倍かず。天下の諸侯、翕然として之に歸す。鄄の會、幽の盟を爲すに、諸侯至らざる莫し。陽穀の會、貫澤の盟を爲すに、遠國皆な來たる。南のかた強楚を伐ち、以て菁茅の貢を致す。北のかた山戎を伐ち、燕の爲に路を開く。三たび亡國を存し、一たび絶世を繼ぐ。周室を尊び事え、九たび諸侯を合わせ、一たび天下を匡す。功は三王に次ぎ、五伯の長と爲る。本と信は柯の盟に起こるなり。
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『管子』大匡四年、兵を修め、同甲十萬、車五十乘。管仲に謂いて曰く、「吾が士既に練れ、吾が兵既に多し、寡人魯を服せんと欲す」と。管仲喟然として嘆じて曰く、「齊國危うし、君德を競わずして、兵を競う。天下の國、帶甲十萬なる者鮮なからず。吾小兵を發して以て大兵を服せんと欲す、内には吾が衆を失う。諸侯備えを設け、吾が人詐を設く、國危うき無からんと欲するも、得已めんや」と。公聽かず、果たして魯を伐つ。魯敢えて戰わず、國を去ること五十里にして之が關を為す。魯關内に比するを請い、以て齊に從い、齊も亦た復た魯を侵す毋し。桓公許諾す。
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『管子』大匡三年、桓公將に魯を伐たんとして曰く、「魯は寡人に近し、是に於いて其の宋を救うや疾し、寡人且に焉を誅せんとす」と。管仲曰く、「不可なり。臣聞く土を有つの君、兵に勤めず、辱に忌まず、其の過を輔けざれば、則ち社稷安し。兵に勤め、辱に忌み、其の過を輔くれば、則ち社稷危うしと」。公聽かず、師を興して魯を伐つ。長勺に造る、魯の莊公師を興して之を逆え、大いに之を敗る。桓公曰く、「吾が兵猶お尚お少なし、吾參たび之を圍まば、安んぞ能く我を圉がん」と。
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『管子』大匡乃ち車駕を命ず、鮑叔御し、小白乘りて莒を出づ。小白曰く、「夫れ二人の者は君令を奉ず、吾以て試む可からず」と。乃ち將に下らんとす。鮑叔其の足を履みて曰く、「事の濟るは此の時に在り、事若し濟らずんば、老臣之に死せん、公子は猶お之れ免れん」と。乃ち行き、邑郊に至る、鮑叔車二十乘を先にし、十乘を後にせしむ。鮑叔乃ち小白に告げて曰く、「夫れ國の二三子を疑うは、老臣に忍ぶ莫し、事の未だ濟らざるや、老臣是を以て道を塞ぐ」と。鮑叔乃ち誓いて曰く、「事の濟るや、我が令を聽け。事の濟らざるや、公子を免るる者を上と為し、死する者を下と為す。吾五乘の實を以て路に距らん」と。鮑叔乃ち前驅と為り、遂に國に入り、公子糺を逐う。管仲小白を射て鈎に中つ。管仲と公子糺・召忽と遂に魯に走る。桓公位に踐み、魯齊を伐ち、公子糺を納れんとして能わず。