管子 / 八觀
入國邑,視宫室,觀車馬衣服,而侈儉之國可知也。夫國城大而田野淺狹者,其野不足以養其民;城域大而人民寡者,其民不足以守其城;宫營大而室屋寡者,其室不足以實其宫;室屋衆而人徒寡者,其人不足以處其室;囷倉寡而臺榭繁者,其藏不足以共其費。故曰:主上無積而宫室美,氓家無積而衣服脩,乘車者飾觀望,步行者襍文采,本資少而末用多者,侈國之俗也。國侈則用費,用費則民貧,民貧則姦智生,姦智生則邪巧作。故姦邪之所生,生於匱不足;匱不足之所生,生於侈;侈之所生,生於毋度。故曰:審度量,節衣服,儉財用,禁侈泰,為國之急也。不通於若計者,不可使用國。故曰:入國邑,視宫室,觀車馬衣服,而侈儉之國可知也。
新字:入国邑,視宫室,観車馬衣服,而侈倹之国可知也。夫国城大而田野浅狭者,其野不足以養其民;城域大而人民寡者,其民不足以守其城;宫営大而室屋寡者,其室不足以実其宫;室屋衆而人徒寡者,其人不足以処其室;囷倉寡而台榭繁者,其蔵不足以共其費。故曰:主上無積而宫室美,氓家無積而衣服脩,乗車者飾観望,歩行者襍文采,本資少而末用多者,侈国之俗也。国侈則用費,用費則民貧,民貧則姦智生,姦智生則邪巧作。故姦邪之所生,生於匱不足;匱不足之所生,生於侈;侈之所生,生於毋度。故曰:審度量,節衣服,倹財用,禁侈泰,為国之急也。不通於若計者,不可使用国。故曰:入国邑,視宫室,観車馬衣服,而侈倹之国可知也。
書き下し
國邑に入り、宮室を視、車馬衣服を觀れば、侈儉の國知る可きなり。夫れ國城大にして田野淺狹なる者は、其の野以て其の民を養うに足らず。城域大にして人民寡なき者は、其の民以て其の城を守るに足らず。宮營大にして室屋寡なき者は、其の室以て其の宮を實たすに足らず。室屋衆くして人徒寡なき者は、其の人以て其の室に處るに足らず。囷倉寡なくして臺榭繁き者は、其の藏以て其の費を共するに足らず。故に曰く、主上に積無くして宮室美しく、氓家に積無くして衣服脩まり、車に乘る者は觀望を飾り、步行する者は文采を雜う、本資少なくして末用多き者は、侈國の俗なりと。國侈なれば則ち用費え、用費ゆれば則ち民貧しく、民貧しければ則ち姦智生じ、姦智生ずれば則ち邪巧作る。故に姦邪の生ずる所は、匱不足に生ず。匱不足の生ずる所は、侈に生ず。侈の生ずる所は、度無きに生ず。故に曰く、度量を審らかにし、衣服を節し、財用を儉にし、侈泰を禁ずるは、國を為むるの急なりと。若計に通ぜざる者は、國を用いしむ可からず。故に曰く、國邑に入り、宮室を視、車馬衣服を觀れば、侈儉の國知る可きなりと。
現代語訳
国や邑に入り、宮室を見て、車馬と衣服を見れば、贅沢な国か倹しい国かがわかる。国の城が大きいのに田野が浅く狭ければ、その野では民を養えない。城域が大きいのに人が少なければ、その民では城を守れない。宮の構えが大きいのに部屋が少なければ、その部屋では宮を満たせない。部屋が多いのに人が少なければ、その人では部屋に住みきれない。倉が少ないのに高殿が多ければ、その蓄えでは費えをまかなえない。だから言う、主君に蓄えがないのに宮室は美しく、民の家に蓄えがないのに衣服は整い、車に乗る者は見栄えを飾り、歩く者も色柄を混ぜて着る。もとになる資が少なく末の用が多いのが、贅沢な国の習わしである、と。国が贅沢なら費えがかさみ、費えがかさめば民は貧しく、民が貧しければ悪知恵が生まれ、悪知恵が生まれれば邪な細工が始まる。だからよこしまの生まれるもとは、乏しさにある。乏しさの生まれるもとは、贅沢にある。贅沢の生まれるもとは、限度のなさにある。だから言う、度量をはっきりさせ、衣服を節し、財の使い方を倹しくし、贅沢を禁じるのが、国を治める急務である、と。この計算に通じない者に、国を用いさせてはならない。だから言う、国や邑に入り、宮室を見て、車馬と衣服を見れば、贅沢な国か倹しい国かがわかる、と。
解説
この章句が説くこと
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『管子』八觀州里に入り、習俗を觀、民の其の上を化する所以を聽けば、治亂の國知る可きなり。州里鬲てられず、閭閈設けられず、出入時無く、早晏禁ぜざれば、則ち攘奪・竊盜・攻擊・殘賊の民自ら勝つこと毋し。谷水を食らい、巷に井を鑿ち、場圃接し、樹木茂り、宮牆毀れ壞れ門戶閉ざされず、外内交々通ずれば、則ち男女の別自ら正しきこと毋し。鄉に長游毋く、里に士舍毋く、時に會同無く、喪蒸聚まらず、禁罰嚴ならざれば、則ち齒長輯睦自ら生ずること毋し。故に昏禮謹まざれば則ち民廉を修めず、賢を論じて鄉より舉げざれば則ち士行いに及ばず、貨財國に行わるれば則ち法令官に毀れ、請謁上に得らるれば則ち黨與下に成る。鄉官に法制毋く、百姓羣徒從わざるは、此れ亡國弑君の自ら生ずる所なり。故に曰く、州里に入り、習俗を觀、民の其の上を化する所以を聽けば、治亂の國知る可きなりと。
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『管子』八觀敵與を計り、上意を量り、國本を察し、民產の餘り有ると足らざるとを觀れば、存亡の國知る可きなり。敵國強くして與國弱く、諫臣死して諛臣尊く、私情行われて公法毀るれば、然らば則ち與國は其の親を恃まず、而して敵國は其の彊を畏れず、豪傑は其の位に安んぜず、而して積勞の人は其の禄を懷わず。商販を悅びて本貨に務めざれば、則ち民偷處して積聚を事とせず。豪傑其の位に安んぜざれば、則ち良臣出づ。積勞の人其の禄を懷わざれば、則ち兵士用いられず。民偷處して積聚を事とせざれば、則ち囷倉空虛なり。是くの如くにして君變を為さざれば、然らば則ち攘奪・竊盜・殘賊・進取の人起こる。内は廷に良臣無く、兵士用いられず、囷倉空虛にして、外に彊敵の憂え有らば、則ち國は居ながらにして自ら毀るるなり。故に曰く、敵與を計り、上意を量り、國本を察し、民產の餘り有ると足らざるとを觀れば、存亡の國知る可きなりと。故に此の八つの者を以て人主の國を觀れば、而して人主は其の情を匿す所無し。
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『管子』八觀朝廷に入り、左右を觀、朝の臣を本求し、上下の貴賤する所を論ずれば、強弱の國知る可きなり。功多きを上と為し、禄賞を下と為さば、則ち積勞の臣力を盡くすに務めず。治行を上と為し、爵列を下と為さば、則ち豪傑材臣能を竭くすに務めず。便辟左右功能を論ぜずして爵禄有らば、則ち百姓疾み怨みて上を非り、爵を賤しみ禄を輕んず。金玉貨財、商賈の人志行を論ぜずして爵禄有らば、則ち上令輕く、法制毀る。權重の人才能を論ぜずして尊位を得れば、則ち民は本行に倍きて外勢を求む。彼の積勞の人力を盡くすに務めざれば、則ち兵士戰わず。豪傑材人能を竭くすに務めざれば、則ち内治別たれず。百姓疾み怨みて上を非り、爵を賤しみ禄を輕んずれば、則ち上以て衆を勸むる無し。上令輕く、法制毀るれば、則ち君以て臣を使う無く、臣以て君に事うる無し。民本行に倍きて外勢を求むれば、則ち國の情偽竭く敵國に在り。故に曰く、朝廷に入り、左右を觀、朝の臣を本求し、上下の貴賤する所を論ずれば、彊弱の國知る可きなりと。
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『管子』八觀彼の民は穀に非ざれば食らわず、穀は地に非ざれば生ぜず、地は民に非ざれば動かず、民は力を作すに非ざれば以て財を致す無し。天下の生ずる所は、力を用うるに生ず。力を用うるの生ずる所は、身を勞するに生ず。是の故に主上財を用うること已む毋きは、是れ民力を用うること休む毋きなり。故に曰く、臺榭相望む者は、其の上下相怨むなり。民に餘積無き者は、其の禁必ずしも止まらず。衆に遺苞有る者は、其の戰必ずしも勝たず。道に損瘠有る者は、其の守り必ずしも固からず。故に令必ずしも行われず、禁必ずしも止まらず、戰必ずしも勝たず、守り必ずしも固からざれば、則ち危亡其の後に隨う。故に曰く、凶飢を課し、師役を計り、臺榭を觀、國費を量れば、實虛の國知る可きなりと。
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『管子』禁藏故に聖人の事を制するや、能く宫室を節し車輿を適にして以て藏を實たせば、則ち國必ず富み、位必ず尊し。能く衣服を適にし、玩好を去りて以て本を奉ずれば、而ち用必ず贍り、身必ず安し。能く無益の事、無補の費を移し、幣を通じ禮を行えば、而ち黨必ず多く、交必ず親しむ。夫れ衆人は多く物に營まれて、其の力を苦しめ、其の心を勞す、故に困しみて贍らず、大なる者は以て其の國を失い、小なる者は以て其の身を危うくす。凡そ人の情、欲する所を得れば則ち樂しみ、惡む所に逢えば則ち憂う、此れ貴賤の同じく有る所なり。之に近づけば欲する勿き能わず、之を逺ざくれば忘るる勿き能わず、人情皆な然り、而して好惡同じからず。各おの欲する所を行いて、安危焉に異なる、然る後に賢不肖の形見るるなり。
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『管子』八觀凶饑を課し、師役を計り、臺榭を觀、國費を量れば、實虛の國知る可きなり。凡そ田野、萬家の衆食らう可きの地は方五十里、以て足れりと為す可し。萬家以下なれば、則ち山澤に就くも可なり。萬家以上なれば、則ち山澤を去るも可なり。彼の野悉く辟けて、民に積無き者は、國地小にして食地淺ければなり。田半ば墾かれて、民に餘食有り、而して粟米多き者は、國地大にして食地博ければなり。國地大にして野辟けざる者は、君貨を好みて臣利を好む者なり。地を辟くこと廣くして民足らざる者は、上の賦重く、其の藏を流す者なり。故に曰く、粟三百里に行れば、則ち國に一年の積無し。粟四百里に行れば、則ち國に二年の積無し。粟五百里に行れば、則ち衆に飢色有りと。其の稼三の一を亡う者は、命じて小凶と曰う、小凶三年にして大凶、大凶なれば則ち衆に大いに遺苞有り。什一の師、什三事無ければ、則ち稼三の一を亡う、稼三の一を亡いて而も故蓋積有るに非ざれば、則ち道に損瘠有り。什一の師、三年解けず、餘食有るに非ざれば、則ち民に子を鬻ぐ有り。