管子 / 五輔
故曰:五經既布,然後逐姦民,詰詐偽,屏讒慝,而毋聽淫辭,毋作淫巧。若民有淫行邪性,樹為淫辭,作為淫巧,以上謟君上,而下惑百姓,移國動衆,以害民務者,其刑死流。故曰:凡人君之所以内失百姓,外失諸侯,兵挫而地削,名卑而國虧,社稷滅覆,身體危殆,非生於謟淫者,未之嘗聞也。何以知其然也?曰:淫聲謟耳,淫觀謟目,耳目之所好謟心,心之所好傷民,民傷而身不危者,未之嘗聞也。
新字:故曰:五経既布,然後逐姦民,詰詐偽,屏讒慝,而毋聴淫辞,毋作淫巧。若民有淫行邪性,樹為淫辞,作為淫巧,以上謟君上,而下惑百姓,移国動衆,以害民務者,其刑死流。故曰:凡人君之所以内失百姓,外失諸侯,兵挫而地削,名卑而国虧,社稷滅覆,身体危殆,非生於謟淫者,未之嘗聞也。何以知其然也?曰:淫声謟耳,淫観謟目,耳目之所好謟心,心之所好傷民,民傷而身不危者,未之嘗聞也。
書き下し
故に曰く、五經既に布かれて、然る後に姦民を逐い、詐偽を詰り、讒慝を屏け、而して淫辭を聽く毋く、淫巧を作す毋し。若し民に淫行邪性有りて、樹てて淫辭と為し、作して淫巧と為し、以て上は君上に諂い、而して下は百姓を惑わし、國を移し衆を動かし、以て民の務を害する者は、其の刑は死流なり。故に曰く、凡そ人君の内は百姓を失い、外は諸侯を失い、兵挫けて地削られ、名卑くして國虧け、社稷滅覆し、身體危殆なる所以は、諂淫より生ぜざる者は、未だ之れ嘗て聞かざるなり。何を以て其の然るを知るや。曰く、淫聲は耳に諂い、淫觀は目に諂う。耳目の好む所は心に諂い、心の好む所は民を傷る。民傷れて身危うからざる者は、未だ之れ嘗て聞かざるなり。
現代語訳
だから言う、五つの経が行き渡って、そのうえでよこしまな民を追い、偽りをただし、そしり隠す者を退け、みだりな言葉を聞かず、みだりな細工を作らせない。もし民にみだりな行いや邪な性があり、それを立ててみだりな言葉とし、作ってみだりな細工とし、上には君主にへつらい、下には民を惑わし、国を動かし人々を揺らして、民の務めを害する者があれば、その刑は死か流罪である。だから言う、君主が内に民を失い、外に諸侯を失い、兵が挫けて土地を削られ、名は低く国は欠け、社稷が滅び、身が危うくなる。その原因が、へつらいとみだりごとから生じなかった例は聞いたことがない。なぜそうとわかるのか。みだりな音は耳にへつらい、みだりな見世物は目にへつらう。耳と目が好むものは心にへつらい、心が好むものは民を傷つける。民が傷ついて身が危うくならなかった例は聞いたことがない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『管子』君臣下宫中の亂を妬紛と曰い、兄弟の亂を黨偏と曰い、大臣の亂を稱述と曰い、中民の亂を讋諄と曰い、小民の亂を財匱と曰う。財匱は薄を生じ、讋諄は慢を生じ、稱述・黨偏・妬紛は變を生ず。故に名を正し疑を稽え、刑殺亟やかに近ければ、則ち内定まる。大臣に順うに功を以てし、中民に順うに行を以てし、小民に順うに務を以てすれば、則ち國豐かなり。天の時を審らかにし、地の生を物して、以て民力を輯む。淫務を禁じ、農功を勸め、以て其の無事を職とすれば、則ち小民治まる。上は之を稽うるに數を以てし、下は什伍もて以て徵し、其の罪伏を近くして、以て其の意を固くす。鄉に之が師を樹てて、以て其の學を遂げしめ、之に官するに其の能を以てし、年に及びて舉ぐれば、則ち士行に反る。德を稱し功を度り、其の能くする所を勸め、若しくは之を稽うるに衆風を以てし、若しくは任ずるに社稷の任を以てす。此くの若くんば、則ち士情に反る。
-
『管子』宙合「佞に訪う毋かれ」とは、佞人を用うる毋かれと言うなり、佞人を用うれば則ち私多く行わる。「諂を蓄う毋かれ」とは、諂を聽く毋かれと言うなり、諂を聽けば則ち上を欺く。「凶を育う毋かれ」とは、暴を使う毋かれと言うなり、暴を使えば則ち民を傷る。「讒を監る毋かれ」とは、讒を聽く毋かれと言うなり、讒を聽けば則ち士を失う。夫れ私を行い、上を欺き、民を傷り、士を失う、此の四つの者用いらるるは、君の義を害し正を失う所以なり。夫れ君上為る者既に其の義正を失いて、倚りて以て名譽と為し、臣為る者忠ならずして邪、以て爵禄に趨り、俗を亂し世を敗り、以て偷安懷樂すれば、其の威を廣くすと雖も損ず可きなり。故に曰く「正しからざれば其の荒を廣む」と。是を以て古の人は其の路を阻み、其の遂を塞ぎ、守りて物修まる。故に之を簡筴に著し、傳えて以て後世の人に告げて曰く、「其の怨みを為すこと深し、是を以て威盡くるなり」と。
-
『管子』立政九敗解人君唯だ觀樂玩好を聽く毋くんば則ち敗る。凡そ觀樂なる者は、宫室臺池、珠玉聲樂なり。此れ皆な財を費やし力を盡くし、國を傷るの道なり。而して此を以て君に事うる者は、皆な姦人なり。而して人君之を聽けば、焉んぞ敗る毋きを得んや。然らば則ち府倉虚しく蓄積竭き、且つ姦人上に在れば、則ち賢者を壅遏して進めざるなり。然らば則ち國に患い有れば、則ち優倡侏儒起ちて國事を議す。是れ國を敺りて之を捐つるなり。故に曰く、「觀樂玩好の説勝てば、則ち姦人上位に在り」と。人君唯だ請謁任譽を聽く毋くんば、則ち羣臣皆な相為に請う。然らば則ち請謁上に得られ、黨與鄉に成る。是くの如くんば則ち貨財國に行われ、法制官に毁れ、羣臣は佼を務めて用いらるるを求む。然らば則ち爵無くして貴く、祿無くして富む。故に曰く、「請謁任譽の説勝てば、則ち繩墨正しからず」と。人君惟だ諂諛飾過の言を聽く無くんば則ち敗る。奚を以て其の然るを知るや。夫れ諂臣なる者は、常に其の主をして其の過ちを悔いず、其の失を更めざらしむる者なり、故に主は惑いて自ら知らざるなり。是くの如くんば則ち謀臣死して、諂臣尊し。故に曰く、「諂讒飾過の説勝てば、則ち巧佞者用いらる」と。
-
『管子』君臣下人君たる者、道に倍き法を棄てて私を行うを好む、之を亂と謂う。人臣たる者、故を變じ常を易えて官を巧みにして以て上に謟う、之を騰と謂う。亂至れば則ち虐、騰至れば則ち北ぐ。四者一つの至る有れば、敗れて、敵人之を謀る。則ち故に施舍優猶して以て亂を濟えば、則ち百姓悅ぶ。賢を選び材を遂げて孝弟を禮すれば、則ち姦偽止む。淫佚を要し、男女を別てば、則ち通亂隔たる。貴賤に義有り、倫等踰えざれば、則ち功有る者勸む。國に常式有り、故に法隱れざれば、則ち下に怨心無し。此の五つの者は、德を興し過ちを匡し、國を存し民を定むるの道なり。
-
『管子』君臣下古者二言有り、牆に耳有り、伏寇側に在りと。牆に耳有りとは、微謀の外に泄るるの謂いなり。伏寇側に在りとは、沈疑の民を得るの道なり。微謀の泄るるや、狡婦主の請を襲いて游慝に資するなり。沈疑の民を得るや、前に貴くして後に賤しき者、之が為に驅くるなり。明君上に在れば、便僻其の意を食む能わず、刑罰亟やかに近ければなり。大臣其の勢を侵す能わず、比黨する者誅せらるること、明らかなればなり。人君たる者、能く讒諂を逺ざけ、比黨を廢し、淫悖行食の徒、朝に爵列する者無ければ、此れ詐を止め姦を拘え、國を厚くし身を存するの道なり。
-
『管子』君臣下國の亂るる所以の者四つ、其の亡ぶる所以の者二つ。内に妻に疑わしき妾有り、此れ宫の亂なり。庶に嫡に疑わしき子有り、此れ家の亂なり。朝に相に疑わしき臣有り、此れ國の亂なり。官に任ずるに能無し、此れ衆の亂なり。四者別無く、主其の體を失い、羣官朋黨して以て其の私を懷けば、則ち族を失う。國の幾臣、隂かに約し謀を閉じて以て相待たば、則ち援を失う。族を内に失い、援を外に失う、此れ二亡なり。故に妻は必ず定まり、子は必ず正しく、相は必ず直立して以て聽き、官は必ず中信にして以て敬す。故に曰く、宫中の亂有り、兄弟の亂有り、大臣の亂有り、中民の亂有り、小人の亂有り、五者一たび作れば、則ち人上たる者危うしと。