管子 / 七法
故事無備,兵無主,則不蚤知。野不辟,地無吏,則無蓄積。官無常,下怨上,而器械不功。朝無政,則賞罰不明。賞罰不明,則民幸生。故蚤知敵人如獨行,有蓄積,則久而不匱。器械功,則伐而不費。賞罰明,則人不幸。人不幸,則勇士勸之。故兵也者,審於地圖,謀十官。日量蓄積,齊勇士,徧知天下,審御機數,兵主之事也。
新字:故事無備,兵無主,則不蚤知。野不辟,地無吏,則無蓄積。官無常,下怨上,而器械不功。朝無政,則賞罰不明。賞罰不明,則民幸生。故蚤知敵人如独行,有蓄積,則久而不匱。器械功,則伐而不費。賞罰明,則人不幸。人不幸,則勇士勧之。故兵也者,審於地図,謀十官。日量蓄積,斉勇士,遍知天下,審御機数,兵主之事也。
書き下し
故に事に備え無く、兵に主無ければ、則ち蚤く知らず。野辟けず、地に吏無ければ、則ち蓄積無し。官に常無く、下上を怨めば、而して器械功ならず。朝に政無ければ、則ち賞罰明らかならず。賞罰明らかならざれば、則ち民生を幸う。故に蚤く敵人を知ること獨行の如く、蓄積有れば、則ち久しくして匱しからず。器械功なれば、則ち伐ちて費えず。賞罰明らかなれば、則ち人幸わず。人幸わざれば、則ち勇士之を勸む。故に兵なる者は、地圖に審らかにし、十官を謀り、日々蓄積を量り、勇士を齊え、徧く天下を知り、審らかに機數を御す、兵主の事なり。
現代語訳
だから事に備えがなく兵に主がいなければ、早くは知れない。野が開かれず土地に役人がいなければ、蓄えがない。官に定まりがなく下が上を怨めば、器械はよくできない。朝廷に政がなければ賞罰は明らかでない。賞罰が明らかでなければ、民はまぐれで生きようとする。だから敵のことを一人で歩くように早く知り、蓄えがあれば、長引いても窮しない。器械がよくできていれば、討っても費えがない。賞罰が明らかなら人はまぐれを頼まない。まぐれを頼まなければ、勇士がそれを励ます。だから兵とは、地図に明るくなり、十官をはかり、日々蓄えを量り、勇士をそろえ、あまねく天下を知り、機と数をはっきり御することである。これが兵を主る者の仕事である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
孫子・虚実篇故に前に備うれば則ち後寡なく、後に備うれば則ち前寡なし。左に備うれば則ち右寡なく、右に備うれば則ち左寡なし。備えざる所無ければ、則ち寡なからざる所無し。寡なき者は人に備うる者なり、衆き者は人をして己に備えしむる者なり。
-
葉隠・聞書第一覺りの士というのは、事に逢って仕(し)たるように、前方に、それぞれの仕様(しよう)を吟味し置いて、その時に出合い、仕果(しはた)す者である。不覺の士というのは、その時に至って前方に穿鑿せぬのは、不覺の士と申す。
-
尚書・說命中惟れ事を事とするに、乃ち其れ備え有り、備え有れば患い無し。
-
孟子・公孫丑章句上孟子曰く、「仁なれば則ち榮え、不仁なれば則ち辱めらる。今辱めらるるを惡んで不仁に居るは、是れ猶ほ濕を惡んで下きに居るがごときなり。如し之を惡まば、徳を貴びて士を尊ぶに如くは莫し。賢者位に在り、能者職に在り、國家閒暇なりとせん。是の時に及びて其の政刑を明らかにせば、大國と雖も、必ず之を畏れん。詩に云う、『天の未だ陰雨せざるに迨(およぶ)んで、彼の桑土を徹(とる)り、牖(ユウ)戶を綢繆す。今此の下民、敢て予を侮どること或らんや。』孔子曰く、『此の詩を為りし者は、其れ道を知れるか。』能く其の國家を治めば、誰か敢て之を侮らん。今國家閒暇なりとせん。是の時に及んで般樂怠敖せば、是れ自ら禍を求むるなり。禍ᐻは己自り之を求めざる者無し。詩に云う『永く言、命を配し、自ら多ᐻを求む。』太甲に曰く、『天の作せる孼は猶ほ違く可し。自ら作せる孼は活く可からず。』此を之れ謂うなり。」
-
『宋名臣言行録』前集巻二・錢若水詔して邉に備うるの䇿を訪う。若水、五事を條上す。一に郡守を擇ぶ、二に鄉兵を募る、三に芻粟を積む、四に將帥を重んず、五に賞罰を明らかにす。
-
『管子』兵法衆を治むるに數有り、敵に勝つに理有り。數を察して理を知り、器を審らかにして勝を識り、理を明らかにして敵に勝つ。宗廟を定め、男女を遂げ、官を四分すれば、則ち以て威德を定め、法儀を制し、號令を出だす可し、然る後に以て衆を一にし民を治む可し。兵に主無ければ則ち蚤く敵を知らず、野に吏無ければ則ち蓄積無く、官に常無ければ則ち下上を怨み、器械巧ならざれば則ち朝に定まる無く、賞罰明らかならざれば則ち民其の產を輕んず。故に曰く、早く敵を知れば則ち獨行し、蓄積有れば則ち久しくして匱しからず、器械巧なれば則ち伐ちて費えず、賞罰明らかなれば則ち勇士勸むと。