管子 / 形勢
莫樂之則莫哀之,莫生之則莫死之。往者不至,來者不極。道之所言者一也,而用之者異。有聞道而好為家者,一家之人也。有聞道而好為鄉者,一鄉之人也。有聞道而好為國者,一國之人也。有聞道而好為天下者,天下之人也。有聞道而好定萬物者,天下之配也。道往者其人莫來道來者其人莫往道之所設,身之化也。持滿者與天,安危者與人。失天之度,雖滿必涸;上下不和,雖安必危。欲王天下而失天之道,天下不可得而王也。得天之道,其事若自然;失天之道,雖立不安。其道既得,莫知其為之;其功既成,莫知其釋之。藏之無形,天之道也。
新字:莫楽之則莫哀之,莫生之則莫死之。往者不至,来者不極。道之所言者一也,而用之者異。有聞道而好為家者,一家之人也。有聞道而好為鄉者,一鄉之人也。有聞道而好為国者,一国之人也。有聞道而好為天下者,天下之人也。有聞道而好定万物者,天下之配也。道往者其人莫来道来者其人莫往道之所設,身之化也。持満者与天,安危者与人。失天之度,雖満必涸;上下不和,雖安必危。欲王天下而失天之道,天下不可得而王也。得天之道,其事若自然;失天之道,雖立不安。其道既得,莫知其為之;其功既成,莫知其釈之。蔵之無形,天之道也。
書き下し
之を樂しましむること莫ければ則ち之を哀しむこと莫く、之を生かすこと莫ければ則ち之に死すること莫し。往く者は至らず、來たる者は極まらず。道の言う所の者は一なり、而して之を用うる者は異なり。道を聞きて好みて家を為むる者有り、一家の人なり。道を聞きて好みて鄉を為むる者有り、一鄉の人なり。道を聞きて好みて國を為むる者有り、一國の人なり。道を聞きて好みて天下を為むる者有り、天下の人なり。道を聞きて好みて萬物を定むる者有り、天地の配なり。道の往く者は其の人來たること莫く、道の來たる者は其の人往くこと莫し。道の設くる所は、身の化するなり。滿を持する者は天と與にし、危きを安んずる者は人と與にす。天の度を失えば、滿つと雖も必ず涸れ、上下和せざれば、安しと雖も必ず危うし。天下に王たらんと欲して天の道を失えば、天下は得て王たる可からざるなり。天の道を得れば、其の事自然の若し。天の道を失えば、立つと雖も安からず。其の道既に得れば、其の之を為すを知ること莫く、其の功既に成れば、其の之を釋くを知ること莫し。之を藏して形無きは、天の道なり。
現代語訳
楽しませてやらなければ、その人のために哀しむ者もなく、生かしてやらなければ、その人のために死ぬ者もない。去っていく者は至らず、来る者も行き着かない。道の説くところは一つだが、それを使う者はまちまちである。道を聞いて家を治めることを好む者がいる、一家だけの人である。道を聞いて郷を治めることを好む者がいる、一郷だけの人である。道を聞いて国を治めることを好む者がいる、一国だけの人である。道を聞いて天下を治めることを好む者がいる、天下の人である。道を聞いて万物を定めることを好む者がいる、天地と並ぶ者である。道が去っていく者のところへ人は来ず、道が来る者のところから人は去らない。道が据えるところは、その身が変わるということである。満ちたものを保つ者は天とともにあり、危ういものを安んじる者は人とともにある。天の度を失えば、満ちていても必ず涸れ、上下が和さなければ、安らかでも必ず危うい。天下に王たろうとして天の道を失えば、天下を得て王となることはできない。天の道を得れば、その事は自然のようである。天の道を失えば、立っても安らかでない。その道をすでに得た者については、どうやってそうしたのか誰にもわからず、その功がすでに成った者については、どうやって解いたのか誰にもわからない。形を残さずしまいこむ、これが天の道である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『管子』形勢解民の有道に從うや、飢えの食を先とするが如く、寒えの衣を先とするが如く、暑さの隂を先とするが如し。故に道有れば則ち民之に歸し、道無ければ則ち民之を去る。故に曰く、「道往く者は其の人來たる莫く、道來たる者は其の人往く莫し」と。道なる者は、身を變化して正理に之く所以の者なり。故に道身に在れば、則ち言自ら順い、行自ら正しく、君に事えて自ら忠、父に事えて自ら孝、人に遇して自ら理あり。故に曰く、「道の設くる所は、身の化なり」と。天の道は、滿ちて溢れず、盛んにして衰えず。明主は天道を法象す、故に貴くして驕らず、富みて奢らず、理を行いて惰らず、故に能く長く貴富を守り、久しく天下を有ちて失わざるなり。故に曰く、「滿を持する者は天と與にす」と。明主は、天下の禍を救い、天下の危を安んずる者なり。夫れ禍を救い危を安んずる者は、必ず萬民の用を為すを待ちて、而る後に能く之を為す。故に曰く、「危を安んずる者は人と與にす」と。
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『管子』形勢解民の守戰して死に至りて衰えざる所以の者は、上の民に加え施す所の者厚ければなり。故に上の施すこと厚ければ、則ち民の上に報ゆるも亦た厚し。上の施すこと薄ければ、則ち民の上に報ゆるも亦た薄し。故に薄く施して厚く責むれば、君も之を臣に得る能わず、父も之を子に得る能わず。故に曰く、「往く者至らざれば、來たる者極まらず」と。道なる者は、衆物を扶持して、生育するを得て各おの其の性命を終えしむる者なり。故に或いは以て鄉を治め、或いは以て國を治め、或いは以て天下を治む。故に曰く、「道の言う所の者は一なり、而して之を用うる者は異なり」と。道を聞きて以て一鄉を治め、其の父子を親しましめ、其の兄弟を順わしめ、其の習俗を正し、民をして其の上を樂しみ、其の土に安んぜしめ、一鄉の主幹と為る者は、鄉の人なり。故に曰く、「道を聞きて好んで鄉を為むる者有るは、一鄉の人なり」と。
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『管子』形勢解地大にして國富み、民衆くして兵强し、此れ盛滿の國なり。已に盛滿なりと雖も、德厚以て之を安んずる無く、度數以て之を治むる無ければ、則ち國は其の國に非ずして、民は其の民無きなり。故に曰く、「天の度を失えば、滿つと雖も必ず涸る」と。臣其の主に親しまず、百姓其の吏を信ぜず、上下離れて和せざれば、故に自ら安しと雖も、必ず且に之を危うくせんとす。故に曰く、「上下和せざれば、安しと雖も必ず危うし」と。主に天道有りて以て其の民を禦すれば、則ち民心を一にして其の上を奉ず、故に能く貴富にして久しく天下に王たり。天の道を失えば、則ち民離叛して聽き從わず、故に主危うくして久しく天下に王たるを得ず。故に曰く、「天下に王たらんと欲して天の道を失えば、天下得て王たる可からざるなり」と。
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『管子』勢逆節萌生し、天地未だ形せざるに先んじて之が政を為さば、其の事乃ち成らず、繆りて其の刑を受く。天は人に因り、聖人は天に因る。天時作らざれば、客と為る勿かれ。人事起こらざれば、始と為る勿かれ。其の衆を慕和して、以て天地の從を脩む。人先ず之を生じ、天地之を刑し、聖人之を成せば、則ち天と極を同じくす。正静にして爭わず、動作貳ならず、素質留まらざれば、地と極を同じくす。未だ天極を得ざれば、則ち德に隱る。已に天極を得れば、則ち其の力を致す。既に其の功を成さば、順いて其の從を守り、人代わる能わず。功を成すの道は、贏縮を寶と為す。天極を亡う毋かれ、數を究めて止まる。事若し未だ成らずんば、其の形を改むる毋かれ、其の始を失う毋かれ。民を静かにして時を觀、令を待ちて起こる。故に曰く、隂陽の從を脩めて、天地の常を道とすと。贏贏縮縮、因りて當と為す。死死生生、天地の形に因る。天地の形は、聖人之を成す。小しく取る者は小しく利あり、大いに取る者は大いに利あり、盡く之を行う者は天下を有つ。
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『管子』君臣下天下其の道を道とすれば則ち至り、其の道を道とせざれば則ち至らざるなり。夫れ水は、波だちて上るも、其の搖を盡くして復た下る、其の勢固より然る者なり。故に之を德にして以て懷け、之を威にして以て畏れしむれば、則ち天下之に歸す。有道の國は、號を發し令を出だせば、而ち夫婦盡く上に歸親す。法を布き憲を出だせば、而ち賢人列士盡く功能を上に致す。千里の内、束布の罰、一畝の賦、盡く知る可きなり。斧鉞を治むる者は敢えて刑を讓らず、軒冕を治むる者は敢えて賞を讓らず。墳然として一父の子の若く、一家の實の若きは、義理明らかなればなり。夫れ下其の上を戴かず、臣其の君を戴かざれば、則ち賢人來たらず。賢人來たらざれば、則ち百姓用いられず。百姓用いられざれば、則ち天下至らず。故に曰く、德侵さるれば則ち君危うく、論侵さるれば則ち功有る者危うく、令侵さるれば則ち官危うく、刑侵さるれば則ち百姓危うしと。而して明君なる者は、審らかに淫侵を禁ずる者なり。上に淫侵の論無ければ、則ち下に冀幸の心無し。
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『管子』形勢今を疑う者は之を古に察し、來を知らざる者は之を往に視る。萬事の生ずるや、趣を異にして歸を同じくす、古今一なり。生棟屋を覆すも、怨怒及ばず。弱子瓦を下ろせば、慈母箠を操る。天道の極まりは、遠き者も自ら親しみ、人事の起こりは、近く親しきが怨みを造る。萬物の人に於けるや、私に近づくこと無く、私に遠ざかること無し、巧なる者は餘り有り、而して拙なる者は足らず。其の功天に順う者は天之を助け、其の功天に逆らう者は天之に違う。天の助くる所は、小なりと雖も必ず大に、天の違う所は成ると雖も必ず敗る。天に順う者は其の功を有ち、天に逆らう者は其の凶を懷き、復た振う可からざるなり。