韓非子 / 詭使第四十五
四封之内所以聽從者,信與德也,而陂知傾覆者使。令之所以行,威之所以立者,恭儉聽上也,而巖居非世者顯。倉廪之所以實者,耕農之本務也,而綦組、錦繡、刻畫爲末作者富。名之所以成,城池之所以廣者,戰士也,今死士之孤飢餓乞於道,而優笑酒徒之屬乘車衣絲。賞禄,
新字:四封之内所以聴従者,信与徳也,而陂知傾覆者使。令之所以行,威之所以立者,恭倹聴上也,而巖居非世者顕。倉廪之所以実者,耕農之本務也,而綦組、錦繍、刻画為末作者富。名之所以成,城池之所以広者,戦士也,今死士之孤飢餓乞於道,而優笑酒徒之属乗車衣糸。賞禄,
書き下し
四封の内の聴従する所以の者は、信と徳となり、而るに陂知傾覆する者使はる。令の行はるる所以、威の立つ所以の者は、恭倹にして上に聴くなり、而るに巌居して世を非る者顕はる。倉廪の実つる所以の者は、耕農の本務なり、而るに綦組・錦繍・刻画の末作を為す者富む。名の成る所以、城池の広まる所以の者は、戦士なり、今死士の孤は飢餓して道に乞ひ、而して優笑酒徒の属は車に乗り絲を衣る。賞禄は、
現代語訳
国境の内の民が聞き従うもとは信義と恩徳であるのに、偏って策を弄し人を陥れる者が使われる。命令が行われ、威光が立つもとは、恭しく慎ましく上の言うことを聞くことであるのに、岩穴に住んで世を非難する者が名を顕わす。倉が満ちるもとは農耕という根本の務めであるのに、組紐や錦の刺繍、彫刻や絵画といった末端の仕事をする者が富む。名が成り、城や領土が広がるもとは戦士であるのに、今、戦死した兵士の遺児は飢えて道端で物乞いをし、役者や道化、酒飲みの類は車に乗り絹を着ている。賞や禄は、
解説
詭使篇で、国を支えるものと実際に報われる者とが食い違っている様を並べる一節です。民を従わせるのは信と徳なのに策士が用いられ、命令を行き渡らせるのは上に従う慎ましさなのに世を非難する隠者が名を挙げる。国の倉を満たすのは農業なのに贅沢品の職人が富み、国を広げるのは戦士なのに戦死者の遺児が道で物乞いをし、役者や酒飲みが車に乗り絹を着る。韓非が五蠹篇などで繰り返し説く、農と戦こそ国の本であり、それ以外の末業や遊民を優遇すれば国は弱るという主張がここにも表れています。組織の土台を支える人が報われず、目立つ仕事や取り入る人ばかりが得をしていないかを問う一節です。
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『韓非子』五蠹第四十九今人主の言に於けるや、其の辯を說びて其の當を求めず。其の行に用ふるや、其の聲を美として其の功を責めず。是を以て天下の衆、其の談言する者は辨を爲すを務めて用に周からず、故に先王を舉げて仁義を言ふ者廷に盈ちて、政乱を免れず。身を行ふ者は高きを爲すに競ひて功に合はず、故に智士巖穴に退處し、禄を歸して受けず、而して兵弱きを免れず。兵弱きを免れず、政乱を免れざるは、此れ其の故何ぞや。民の譽むる所、上の礼する所は、乱國の術なればなり。今境内の民皆治を言ひ、商・管の法を藏する者家ごとに之有り、而して國愈々貧しきは、耕を言ふ者衆くして、耒を執る者寡なければなり。境内皆兵を言ひ、孫・吳の書を藏する者家ごとに之有り、而して兵愈々弱きは、戰を言ふ者多くして、甲を被る者少なければなり。故に明主は其の力を用ひて、其の言を聽かず。其の功を賞して、必ず無用を禁ず。故に民死力を盡くして以て其の上に從ふ。夫れ耕の力を用ふるや勞なり、而るに民之を爲すは、曰く以て富むを得べければなり。戰の事爲るや危ふし、而るに民之を爲すは、曰く以て貴きを得べければなり。今文學を修め、言談を習へば、則ち耕の勞無くして富の實有り、戰の危無くして貴の尊有り、則ち人孰か爲さざらんや。是を以て百人智を事として一人力を用ふ。智を事とする者衆ければ則ち法敗れ、力を用ふる者寡なければ則ち國貧し、此れ世の乱るる所以なり。
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『韓非子』初見秦第一賞を言ひて則ち与へず、罰を言ひて則ち行はず、賞罰信ならず、故に士民死せざるなり。