鬼谷子 / 符言篇
一曰天之、二曰地之、三曰人之。四方上下、左右前後、熒惑之處安在?右主問。心爲九竅之治、君爲五官之長。爲善者、君與之賞、爲非者、君與之罰。君因其所以求因與之、則不勞。聖人用之、故能賞之、因之循理、固能久長。右主因。
新字:一曰天之、二曰地之、三曰人之。四方上下、左右前後、熒惑之処安在?右主問。心為九竅之治、君為五官之長。為善者、君与之賞、為非者、君与之罰。君因其所以求因与之、則不労。聖人用之、故能賞之、因之循理、固能久長。右主因。
書き下し
一に曰く天の、二に曰く地の、三に曰く人の。四方上下、左右前後、熒惑の處る所は安くにか在る。右は問を主どる。心は九竅の治を爲し、君は五官の長と爲る。善を爲す者には、君之に賞を與え、非を爲す者には、君之に罰を與う。君其の求むる所以に因りて與に之を與うれば、則ち勞せず。聖人之を用う、故に能く之を賞す。之に因り理に循えば、固より能く久しく長し。右は因を主どる。
現代語訳
一に天のこと、二に地のこと、三に人のこと。四方上下、左右前後、惑わし乱れるものはどこにあるのか。以上は問うことについてである。心は九つの穴を治めるものであり、君は五官の長である。善をなす者には、君が賞を与え、非をなす者には、君が罰を与える。君が、その者が求めているところに応じて与えれば、労することがない。聖人はこれを用いる、だから賞することができる。これに拠り道理に従えば、もとより長く続けられる。以上は因ることについてである。
解説
「君其の求むる所以に因りて與に之を與うれば、則ち勞せず」。相手が求めているものに応じて与えれば、こちらは苦労しない。賞の設計の話です。一律の賞与は、与える側の労力ばかりかかって効きません。人によって求めているものが違うからです。金銭を求める人、地位を求める人、認められることを求める人、時間を求める人。求めているものに合わせて与えれば、同じ原資でも効きが違う。「因る」というのは、相手の中にあるものに乗るということです。
この章句が説くこと
君は五官の長と為る其の求むる所以に因りて之を与う賞罰動機づけ適材適所報酬
関連する章句
-
説苑・說叢明君の制は、賞は重きに從い、罰は輕きに從う。人に食せしむるに壯を以て量と為し、人に事えしむるに老を以て程と為す。
-
『韓非子』難一第三十六今赫は僅かに驕侮せざるのみにして、襄子之を賞するは、是れ賞を失うなり。明主は賞を無功に加えず、罰を無罪に加えず。
-
孫子・行軍篇數々賞する者は、窘するなり。數々罰する者は、困しむなり。先に暴にして後に其の衆を畏るる者は、不精の至りなり。来たりて委謝する者は、休息を欲するなり。
-
『韓非子』二柄第七明主の其の民を導制する所の者は、二柄のみ。二柄とは、刑・徳なり。
-
『韓非子』外儲説右下第三十五賞罰共にすれば則ち禁令行われず。何を以て之を明らかにせん。之を明らかにするに造父・於期を以てす。
-
呂氏春秋・義賞①春氣至れば則ち草木産し、秋氣至れば則ち草木落つ。産と落とは之を使しむるもの或り。自ら然るに非ざるなり。故に之を使しむる者至れば、物為さざる無く、之を使しむる者至らざれば、物為す可き無し。古の人、其の使しむる所以を審らかにす、故に物、用を為さざる莫し。賞罰の柄、此れ上の使しむる所以なり。其の以て加うる所の者義なれば、則ち忠信親愛の道彰わる。久しく彰われて愈々長ずれば、民の之に安んずること性の若し。此を之れ教成ると謂う。教成れば則ち厚賞嚴威有りと雖も禁ずること能わず。故に善く教うる者は、義以て賞罰して教成り、教成りて賞罰禁ずること能わず。賞罰を用いて當らざるも亦た然り。姦偽賊亂貪戻の道興り、久しく興りて息まざれば、民の之を讎うること性の若し。戎夷胡貉巴越の民は、是を以て厚賞嚴罰有りと雖も、禁ずること能わず。郢人の兩版を以て垣するや、吳起之を變じて惡まる。賞罰易れば民安くんぞ樂しまん。氐羌の民、其れ虜となるや、其の係纍を憂えずして、其の死するに焚かれざるを憂うるは、皆、邪に成り、且つ成りて民を賊う。故に賞罰の加うる所は、慎まざる可からず。