格言聯璧 / 悖凶類・色に死する者は何ぞ傾國を須ゐん
攜傾國以待殂,淫者不敢,然死色者何須傾國! 病危烏獲,雖童子制梃可撻。 臭腐王嬙,惟狐貍鉆穴相窺。 聖人悲時憫俗,賢人痛世疾俗。
新字:攜傾国以待殂,淫者不敢,然死色者何須傾国! 病危烏獲,雖童子制梃可撻。 臭腐王嬙,惟狐貍鉆穴相窺。 聖人悲時憫俗,賢人痛世疾俗。
書き下し
傾國を攜へて以て殂を待つは、淫する者も敢へてせず、然れども色に死する者は何ぞ傾國を須ゐん。 病みて危ふき烏獲は、童子と雖も梃を制して撻つべし。 臭腐せる王嬙は、惟だ狐貍のみ穴を鉆りて相窺ふ。 聖人は時を悲しみ俗を憫れむ、賢人は世を痛み俗を疾む。
現代語訳
国を傾けるほどの美女を連れて死を待てと言われれば、色好みの者でもあえてそうはしません。しかし、色のために死ぬ者に、どうして国を傾けるほどの美女が要るでしょうか(ありふれた色で身を滅ぼしているのです)。 病んで危うくなった烏獲(戦国時代の秦の力士)は、子どもでも棒を手にして打ちすえることができます。 腐って臭くなった王嬙(王昭君、漢の美女)には、狐や狸が穴を掘ってのぞくだけです。 聖人は時世を悲しみ、世俗を哀れみます。賢人は世を憂え、世俗を憎みます。
解説
最初の句は前の単位の連城の璧の句と対になり、利に死ぬ者と色に死ぬ者を並べます。傾国は国を傾けるほどの美女のことで、どれほどの美女でも死と引き換えにはしないのに、実際には身近な色欲で身を滅ぼすと説きます。次の対句は、烏獲のような大力の者も病めば子どもに打たれ、王嬙のような絶世の美女も死んで腐れば狐狸しか寄りつかないと、力も美も移ろうことを示します。王嬙は王昭君の名です。命と引き換えにしているものの正体を見よという、前の句への裏付けになっています。最後の句は次の単位へ続き、世俗に対する聖人、賢人、衆人、小人の態度を四段階で描く句の前半です。欲に振り回されそうなとき、その対象の行く末まで思い描く冷静さを与えてくれます。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
色欲無常節制処世戒め
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集豪・金を見て人を見ず金を市に攫む者は、金を見て人を見ず。身を剖きて珠を藏する者は、珠を愛して自ら愛するを忘る。夫の性命を決して以て富貴を饕り、嗜欲を縱にして以て生を損ふ者と何ぞ異ならん。
-
李衛公問対・卷下然り而して田単燕の囲む所と為る。単一人に命じて神と為し、拝して之を祠る。神言ふ、『燕破るべし』と。単是に於いて火牛を以て出でて燕を撃ち、大いに之を破る。此れ是れ兵家の詭道なり。天官・時日も亦猶ほ此のごとし。」太宗曰く、「田単は神怪に託して燕を破り、太公は蓍亀を焚きて紂を滅ぼす。二事相反す、何ぞや。」靖曰く、「其の機は一なり。或いは逆らひて之を取り、或いは順ひて之を行ふ是れなり。昔太公武王を佐け、牧野に至り、雷雨に遇ひ、旗鼓毀折す。散宜生卜して吉にして後に行かんと欲す。此れ則ち軍中の疑懼に因りて、必ず卜を仮りて以て神に問ふなり。太公以為(おもへ)らく腐草枯骨問ふに足る無しと。且つ臣を以て君を伐つ、豈に再びすべけんや。然れども散宜生の機を前に発し、太公の機を後に成すを観るに、逆順異なると雖も、其の理致は則ち同じ。臣前に所謂術数廃すべからずとは、蓋し其の機を未だ萌さざるに存するなり。其の成功に及んでは、人事に在るのみ。」太宗曰く、「当今の将帥は、唯だ李勣・道宗・薛万徹のみ。道宗の親属を以てするを除くの外、孰か大用に堪へん。」靖曰く、「陛下嘗て言ふ、勣・道宗の兵を用ふるは、大いに勝たず亦大いに敗れず、万徹は若し大いに勝たずんば即ち須(すべから)く大いに敗るべしと。臣愚かにも聖言を思ふに、大勝を求めず亦大敗せざる者は、節制の兵なり。或いは大いに勝ち或いは大いに敗るる者は、幸ひにして功を成す者なり。故に孫武云ふ、
-
『格言聯璧』悖凶類・多事は讀書の第一の病自家の病痛は自家醫せよ、死亡の時を待ちては、醫すこと已に晚し。 多事は讀書の第一の病と為す。多欲は養生の第一の病と為す。 多言は涉世の第一の病と為す。多智は立心の第一の病と為す。 多費は作家の第一の病と為す。
-
『酔古堂剣掃』集法・惡は人の非を言ふより大なるは莫し禍は己の欲を縱にするより大なるは莫く、惡は人の非を言ふより大なるは莫し。
-
『酔古堂剣掃』集綺・花は半開を看る木香盛んに開けば、杯を把りて獨り其の下に坐し、遙かに青奴をして笛を吹かしめ、止だ一小奚を留めて酒に侍せしむ。才かに少しく斟酌すれば便ち退きて、迎春の架の後に立つ。 花は半開を看、酒は微醉に飲む。
-
『酔古堂剣掃』集醒・舞衣は暗に動くの兵戈明らかに紅樓の塚無きの邱壟為るを識るも、迷ひ來りては認めて捨生の岩と作す。直ちに舞衣の暗に動くの兵戈為るを知らば、快く去りて暫く試劍石に同じうせよ。