格言聯璧 / 悖凶類・學術を以て天下後世を殺す毋かれ
人欲是渣滓之物,渣滓則蠢,蠢則死。 毋以嗜欲殺身,毋以貨財殺子孫,毋以政事殺百姓,毋以學術殺天下後世。 毋執去來之勢而救權,毋固得喪之位而為寵。
新字:人欲是渣滓之物,渣滓則蠢,蠢則死。 毋以嗜欲殺身,毋以貨財殺子孫,毋以政事殺百姓,毋以学術殺天下後世。 毋執去来之勢而救権,毋固得喪之位而為寵。
書き下し
人欲は是れ渣滓の物なり、渣滓なれば則ち蠢なり、蠢なれば則ち死す。 嗜欲を以て身を殺すこと毋かれ、貨財を以て子孫を殺すこと毋かれ、政事を以て百姓を殺すこと毋かれ、學術を以て天下後世を殺すこと毋かれ。 去來の勢を執りて權を救ふこと毋かれ、得喪の位を固くして寵と為すこと毋かれ。
現代語訳
人欲はかすのようなものです。かすであれば鈍く、鈍ければ死んでしまいます。 欲望によって自分の身を殺してはなりません。財産によって子孫を殺してはなりません。政治によって民を殺してはなりません。学術によって天下と後の世を殺してはなりません。 来ては去る勢いにしがみついて権力を守ろうとしてはなりません。得たり失ったりする地位に固執して、それを栄誉としてはなりません。
解説
最初の句は前の単位の天理の句と対になり、天理の清虛、靈、活に対して、人欲の渣滓、蠢、死を並べます。渣滓はかす、蠢は愚かで鈍いことです。続く句は、殺すという強い言葉を四度重ね、身、子孫、百姓、天下後世と、害の及ぶ範囲を広げていきます。財産を残すことが子孫を損ない、誤った学説が後の世まで人を損なうという指摘は、とくに鋭いものです。最後の対句は次の単位へ続き、勢いも地位も去来し得喪するもので、しがみつく値打ちはないと説きます。自分の知識や発信が後の人にどんな影響を残すかまで考えることは、情報があふれる今こそ大切な心がけです。
この章句が説くこと
人欲戒め治政学問子孫
関連する章句
-
人物志・體別夫れ學は材を成す所以なり、疏は情を推す所以なり。偏材の性は、移轉すべからず。
-
言志四録・南洲手抄学之を古訓に稽へ、問之を師友に質すは、人皆之を知る。学必ず之を躬に学び、問必ず諸を心に問ふは、其れ幾人有らんか。
-
言志四録・南洲手抄朝にして食はずば、昼にして饑う。少うして学ばずば、壮にして惑ふ。饑うるは猶忍ぶ可し、惑ふは奈何ともす可からず。
-
歎異抄・第十二条経釈を読み学せざる輩、往生不定の由のこと。この条、すこぶる不足言の義と言いつべし。 他力真実の旨を明かせる諸の聖教は、本願を信じ念仏を申さば仏に成る、そのほか何の学問かは往生の要なるべきや。 まことにこの理に迷えらん人は、いかにもいかにも学問して、本願の旨を知るべきなり。 経釈を読み学すといえども、聖教の本意を心得ざる条、もっとも不便のことなり。
-
論語・為政篇子曰く、異端を攻むるは、斯れ害のみ。
-
説苑・建本子思曰わく、学は才を益す所以なり、礪は刃を致す所以なり。吾嘗て幽処して深く思うも、学の速やかなるに若かず。吾嘗て跂ちて望むも、高きに登りて博く見るに若かず。故に風に順いて呼べば、声疾しきを加えざれども聞く者衆し。丘に登りて招けば、臂長きを加えざれども見る者遠し。故に魚は水に乗り、鳥は風に乗り、草木は時に乗る。