格言聯璧 / 從政類・強ひて其の閉づる所を開くこと毋かれ
善啟迪人心者,當因其所明而漸通之,毋強開其所閉。善移易風俗者。 當困其所易而漸反之,毋強矯其所難。 非甚不便於民,且莫妄更。
新字:善啓迪人心者,当因其所明而漸通之,毋強開其所閉。善移易風俗者。 当困其所易而漸反之,毋強矯其所難。 非甚不便於民,且莫妄更。
書き下し
善く人心を啟迪する者は、當に其の明らかなる所に因りて漸く之を通ずべく、強ひて其の閉づる所を開くこと毋かれ。善く風俗を移易する者は、 當に其の易き所に困りて漸く之を反すべく、強ひて其の難き所を矯むること毋かれ。 甚だ民に便ならざるに非ずんば、且く妄りに更むること莫かれ。
現代語訳
人の心を上手に導く人は、その人がすでに分かっている所から少しずつ通じさせるべきで、閉ざしている所を無理にこじ開けてはいけません。風俗を上手に改める人は、 改めやすい所から少しずつ正していくべきで、改めにくい所を無理に矯めてはいけません。 民にとってよほど不便でないかぎり、みだりに改めてはいけません。
解説
前の二行は人心の導き方と風俗の改め方を対にした句で、どちらも「漸く」、少しずつが要です。人は分かっている所を足がかりにすれば理解を広げられますが、閉じている所を無理に開こうとすると反発します。二行目の「困」は字形の似た「因」の誤りと見られ、よる、の意で読みました。三行目は次の単位の「非大有益於民」と対になり、よほど不便でなければ制度を軽々しく変えるなと説きます。新しいやり方を組織に入れるとき、相手の分かる所から始め、改めやすい所から手をつけるのは、今も変わらない変革の定石です。
この章句が説くこと
教化治政漸進改革風俗
関連する章句
-
『韓非子』孤憤第十一是れ智法の士と當塗の人とは、兩つながら存す可からざるの仇なり。
-
『韓非子』孤憤第十一智術の士は明察にして、聴用せらるれば、且に重人の陰情を燭さんとす。能法の士は勁直にして、聽用せらるれば、且に重人の姦行を矯めんとす。
-
『韓非子』問田第四十二亂主闇上の患禍を憚らずして、必ず以て民萌の資利を齊えんと思うは、仁智の行なり。...亂主闇上の患禍を憚りて、死亡の害を避け、...は、貪鄙の為なり。
-
『韓非子』六反第四十六政を為すは、猶ほ沐するがごとし。髪を棄つる有りと雖も、必ず之を為す。髪を棄つるの費を愛しみて、髪を長ずるの利を忘るるは、權を知らざる者なり。
-
史記 孫子呉起列伝楚の悼王、素より起の賢なるを聞き、至れば則ち楚に相とす。法を明らかにし令を審らかにし、不急の官を捐て、公族の疏遠なる者を廃し、以て戦闘の士を撫養す。要は兵を彊くし、馳説の従横を言ふ者を破るに在り。是に於いて南は百越を平らげ、北は陳・蔡を并せ、三晋を卻け、西は秦を伐つ。諸侯、楚の彊きを患ふ。故に楚の貴戚尽く呉起を害せんと欲す。悼王死するに及び、宗室大臣、乱を作して呉起を攻む。呉起、走りて王の尸に之きて之に伏す。起を撃つの徒、因りて呉起を射刺し、并せて悼王に中つ。悼王既に葬られ、太子立ち、乃ち令尹をして尽く呉起を射て并せて王の尸に中つる者を誅せしむ。起を射るに坐して宗を夷げられて死せし者七十余家。
-
『呻吟語』内篇・應務・徐徐として手を下す大を撼かし堅を摧くは、徐徐として手を下し、久久にして功を見、默默として意を留むるを要す。臂を攘げ力を極むれば、一たび手を犯して自家先づ敗る。