格言聯璧 / 接物類・人の窮を濟ふ者は窮する所以を問ふ勿かれ
慕人善者,勿問其所以善;恐擬議之念生,而效法之念微矣! 濟人窮者,勿問其所以窮;恐憎惡之心生,而惻隱之心泯矣! 時窮勢蹙之人,當原其初心。
新字:慕人善者,勿問其所以善;恐擬議之念生,而効法之念微矣! 済人窮者,勿問其所以窮;恐憎悪之心生,而惻隠之心泯矣! 時窮勢蹙之人,当原其初心。
書き下し
人の善を慕ふ者は、其の善なる所以を問ふ勿かれ、恐らくは擬議の念生じて、效法の念微かならん。 人の窮を濟ふ者は、其の窮する所以を問ふ勿かれ、恐らくは憎惡の心生じて、惻隱の心泯びん。 時窮まり勢ひ蹙まるの人は、當に其の初心を原ぬべし。
現代語訳
人の善を慕うときは、その人がなぜ善なのかを詮索してはいけません。あれこれ論じる気持ちが生じて、見習おうとする気持ちが薄れてしまうおそれがあります。 人の困窮を救うときは、その人がなぜ困窮したのかを問いただしてはいけません。憎しみの心が生じて、あわれみの心が消えてしまうおそれがあります。 時運に行き詰まり勢いを失った人については、その初めの志をたずねるべきです。
解説
善を慕うときと、窮を救うときの心得を対にした則です。善い人を見習うとき、その理由をあれこれ分析すると、批評する気持ちが勝って見習う気持ちが薄れます。困っている人を助けるとき、なぜ困ったのかを問いただすと、自業自得だという思いが湧いてあわれみが消えます。どちらも、詮索が素直な心を損なうという指摘です。惻隠の心は、孟子が仁の端緒とした、人の不幸を見過ごせない心のことです。最後の句は菜根譚にもほぼ同じ句があり、落ちぶれた人はその初心を見よと言い、次の単位の、功成った人はその末路を見よと対になります。人を助けるときは理由を問わず、まず手を差し伸べる。その素直さを保ちたいものです。
この章句が説くこと
惻隠善行接物仁愛初心
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