格言聯璧 / 持躬類・常に人命の脆薄なるを思へ
常思終天抱恨,自不得不盡孝心。 常思度日艱難,自不得不節費用。 常思人命脆薄,自不得不惜精神。 常思世態炎涼,自不得不奮志氣。 常思法網難漏,自不得不戒非為。 常思身命易傾,自不得不忍氣性。
新字:常思終天抱恨,自不得不尽孝心。 常思度日艱難,自不得不節費用。 常思人命脆薄,自不得不惜精神。 常思世態炎涼,自不得不奮志気。 常思法網難漏,自不得不戒非為。 常思身命易傾,自不得不忍気性。
書き下し
常に終天の抱恨を思へば、自ら孝心を盡さざるを得ず。 常に度日の艱難を思へば、自ら費用を節せざるを得ず。 常に人命の脆薄なるを思へば、自ら精神を惜しまざるを得ず。 常に世態の炎涼を思へば、自ら志氣を奮はざるを得ず。 常に法網の漏れ難きを思へば、自ら非爲を戒めざるを得ず。 常に身命の傾き易きを思へば、自ら氣性を忍ばざるを得ず。
現代語訳
親を失って一生悔やみ続けることをいつも思えば、おのずと孝行を尽くさずにはいられません。 日々の暮らしの苦しさをいつも思えば、おのずと出費を節約せずにはいられません。 人の命のもろくはかないことをいつも思えば、おのずと心身の力を大切にせずにはいられません。 世間の人情が、栄えれば寄り衰えれば去る冷たさをいつも思えば、おのずと志と気力を奮い起こさずにはいられません。 法の網から逃れがたいことをいつも思えば、おのずと悪い行いを戒めずにはいられません。 身も命もたやすく傾くことをいつも思えば、おのずと気性の激しさを抑えずにはいられません。
解説
「常に〜を思へば、自ら〜せざるを得ず」という形を六回重ね、心がけの動機を示す聯です。終天の抱恨は、親を亡くしたのちに一生続く悔いで、それを思えば今のうちに孝行せずにはいられません。暮らしの苦しさを思えば節約し、命のはかなさを思えば心身を惜しみ、世の人情の冷暖を思えば奮起し、法の網を思えば悪を慎み、身の危うさを思えば短気を抑えるというわけです。どれも、先の結果を思い描くことで今の行いを正す工夫です。やるべきと分かっていてもできないとき、その行いを怠った先にある姿をはっきり想像すると、自然に体が動くものです。
この章句が説くこと
孝行倹約忍耐持躬無常
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